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番外編
可愛い人✦side蓮✦3
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「そうだ秋さん、昨日のドラマ観ない? 一緒に観たかったから俺まだなんだ」
昨日は俺が今撮影している刑事ドラマの、第一話放送日だった。
秋さんの帰宅が深夜だったから、今日一緒に観ようと思って観ないでいた。
「…………悪いけど俺……明日早ぇんだ。……もう寝るわ」
「あ、そうなんだ……残念。じゃあ先に寝て。俺は今日はさすがに観てチェックしないと」
「…………ごめん」
「いいよ、気にしないで寝てね」
「……ん。……おやすみ」
「おやすみ、秋さん」
残念だけど仕方がない。
明日になったら少しは元気になってるといいなと思いながら、寝室に行く秋さんを見送った。
もう一つの家に帰らずにいてくれただけでも、良かったと胸をなで下ろす。
録画してあるドラマを再生しようとして、視聴済みになっていることに気がついた。
不思議に思って再生を押すと、エンディング後のCM部分から再生された。
秋さんが観たんだ。今日俺が帰ってくる前に一人でこれを観たということだ。
まさか……これを観て嫉妬した?
でも誰に?
本当に分からなくて困惑する。
恋愛ドラマではなく刑事ドラマだし、嫉妬するような絡みは誰ともしていない。
でもきっと秋さんの嫉妬の原因はこれだ。
俺は確信を持つと、原因を見つけなければといつも以上に真剣にドラマを観た。
何一つ見落とさないようにと思って観たつもりだったけど、やっぱり分からなかった。秋さんはいったい誰に嫉妬したんだろう?
今回俺は、主役をつとめる大先輩である堤さんのバディ役だ。
常に一緒に行動する役だから、堤さんとの絡みが一番多い。
でもどこにも嫉妬するような絡みはない。あるわけがない。ただの刑事ドラマなんだから。
俺は新人刑事役で、コンビを組まされた先輩刑事に罵倒されながらも食らいつき、徐々にバディと認められていくというドラマだ。
どこに嫉妬する要素があったんだろう。バディは俺だろ……とかだろうか?
よく分からないけどそうだとしたら可愛すぎる。いや多分どんな理由でも可愛い、と口元がゆるむ。
テレビを消してリビングの照明を落とし寝室に向かう。静かにドアを開けて中に入り、秋さんの眠るベッドにもぐり込んだ。
いつものように腕枕をしようとそっと頭の下に腕を差し込むと、秋さんの身体がビクッと反応する。
「あ、ごめん起こしちゃった……?」
「…………起きてねぇ……」
まるでドラマに出てきそうなその返しに、思わず笑ってしまった。
もしかして、ずっと眠れずに起きてたんだろうか。秋さんの頭を撫でながら、俺は優しく話しかけた。
「ねえ秋さん。もしかして、堤さんに嫉妬したの?」
秋さんの身体が強張ったのが伝わってきた。
やっぱり堤さんだったんだ。
「でも俺、どこに嫉妬したのか分かんなくって。ごめん」
「…………俺が……おかしいんだ……。お前が謝んな」
「バディは俺だろ、とかかな?」
「…………そんなんじゃねぇし」
「じゃあどこに嫉妬したの? ……教えてほしい」
そう問いかけると、秋さんは布団を頭までかぶり、もぐってしまった。
「…………待ってて……」
布団の中から秋さんのささやきが聞こえた。
「…………頭冷やすから……も少し待ってて」
「うーん。すごい可愛くて嬉しいから、冷やさなくてもいいんだけど」
「…………バカじゃねぇの。ドラマに嫉妬するとかねぇだろ……うぜぇだろ……」
「全然。俺はすごい嬉しい」
すると、ガバッと秋さんが起き上がって声を上げた。
「ドラマだぞ……っ。男相手に嫉妬してんだぞっ。恋人役でもねぇのにおかしいだろっ」
秋さんの叫びを聞いてやっと分かった。ああなんだそうだったんだ。秋さんは、嫉妬してる自分に驚いて戸惑ってどうしたらいいのか分からないんだ。
秋さんの手をぎゅっと握って俺は言った。
「大好きな秋さんが、俺のこと本当に大好きなんだなぁって分かってすごい嬉しいよ。誰が相手でもどんな理由でも、嫉妬する秋さんが可愛すぎてもう顔がニヨニヨしちゃう」
嬉しさでゆるむ顔を隠さずに、目一杯秋さんに見せた。
「……なんで……絶対ちょっとくらいうぜぇだろ……」
「全然?」
「……うそだ」
繋いだ手を引っ張って、倒れてきた秋さんを腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
「嬉しいから、もっと嫉妬されたい」
「…………な……んでっ。……なんで……そんな優しいんだよ……」
「優しいんじゃなくて、ただ秋さんが大好きなだけだよ」
「…………っ」
優しく背中を撫でいていると、繋いだ手に力がこもった。
「…………俺……さ……」
静かに話しだした秋さんに、「うん」と相づちをうって続きを待つ。
昨日は俺が今撮影している刑事ドラマの、第一話放送日だった。
秋さんの帰宅が深夜だったから、今日一緒に観ようと思って観ないでいた。
「…………悪いけど俺……明日早ぇんだ。……もう寝るわ」
「あ、そうなんだ……残念。じゃあ先に寝て。俺は今日はさすがに観てチェックしないと」
「…………ごめん」
「いいよ、気にしないで寝てね」
「……ん。……おやすみ」
「おやすみ、秋さん」
残念だけど仕方がない。
明日になったら少しは元気になってるといいなと思いながら、寝室に行く秋さんを見送った。
もう一つの家に帰らずにいてくれただけでも、良かったと胸をなで下ろす。
録画してあるドラマを再生しようとして、視聴済みになっていることに気がついた。
不思議に思って再生を押すと、エンディング後のCM部分から再生された。
秋さんが観たんだ。今日俺が帰ってくる前に一人でこれを観たということだ。
まさか……これを観て嫉妬した?
でも誰に?
本当に分からなくて困惑する。
恋愛ドラマではなく刑事ドラマだし、嫉妬するような絡みは誰ともしていない。
でもきっと秋さんの嫉妬の原因はこれだ。
俺は確信を持つと、原因を見つけなければといつも以上に真剣にドラマを観た。
何一つ見落とさないようにと思って観たつもりだったけど、やっぱり分からなかった。秋さんはいったい誰に嫉妬したんだろう?
今回俺は、主役をつとめる大先輩である堤さんのバディ役だ。
常に一緒に行動する役だから、堤さんとの絡みが一番多い。
でもどこにも嫉妬するような絡みはない。あるわけがない。ただの刑事ドラマなんだから。
俺は新人刑事役で、コンビを組まされた先輩刑事に罵倒されながらも食らいつき、徐々にバディと認められていくというドラマだ。
どこに嫉妬する要素があったんだろう。バディは俺だろ……とかだろうか?
よく分からないけどそうだとしたら可愛すぎる。いや多分どんな理由でも可愛い、と口元がゆるむ。
テレビを消してリビングの照明を落とし寝室に向かう。静かにドアを開けて中に入り、秋さんの眠るベッドにもぐり込んだ。
いつものように腕枕をしようとそっと頭の下に腕を差し込むと、秋さんの身体がビクッと反応する。
「あ、ごめん起こしちゃった……?」
「…………起きてねぇ……」
まるでドラマに出てきそうなその返しに、思わず笑ってしまった。
もしかして、ずっと眠れずに起きてたんだろうか。秋さんの頭を撫でながら、俺は優しく話しかけた。
「ねえ秋さん。もしかして、堤さんに嫉妬したの?」
秋さんの身体が強張ったのが伝わってきた。
やっぱり堤さんだったんだ。
「でも俺、どこに嫉妬したのか分かんなくって。ごめん」
「…………俺が……おかしいんだ……。お前が謝んな」
「バディは俺だろ、とかかな?」
「…………そんなんじゃねぇし」
「じゃあどこに嫉妬したの? ……教えてほしい」
そう問いかけると、秋さんは布団を頭までかぶり、もぐってしまった。
「…………待ってて……」
布団の中から秋さんのささやきが聞こえた。
「…………頭冷やすから……も少し待ってて」
「うーん。すごい可愛くて嬉しいから、冷やさなくてもいいんだけど」
「…………バカじゃねぇの。ドラマに嫉妬するとかねぇだろ……うぜぇだろ……」
「全然。俺はすごい嬉しい」
すると、ガバッと秋さんが起き上がって声を上げた。
「ドラマだぞ……っ。男相手に嫉妬してんだぞっ。恋人役でもねぇのにおかしいだろっ」
秋さんの叫びを聞いてやっと分かった。ああなんだそうだったんだ。秋さんは、嫉妬してる自分に驚いて戸惑ってどうしたらいいのか分からないんだ。
秋さんの手をぎゅっと握って俺は言った。
「大好きな秋さんが、俺のこと本当に大好きなんだなぁって分かってすごい嬉しいよ。誰が相手でもどんな理由でも、嫉妬する秋さんが可愛すぎてもう顔がニヨニヨしちゃう」
嬉しさでゆるむ顔を隠さずに、目一杯秋さんに見せた。
「……なんで……絶対ちょっとくらいうぜぇだろ……」
「全然?」
「……うそだ」
繋いだ手を引っ張って、倒れてきた秋さんを腕の中に閉じ込めるように抱きしめた。
「嬉しいから、もっと嫉妬されたい」
「…………な……んでっ。……なんで……そんな優しいんだよ……」
「優しいんじゃなくて、ただ秋さんが大好きなだけだよ」
「…………っ」
優しく背中を撫でいていると、繋いだ手に力がこもった。
「…………俺……さ……」
静かに話しだした秋さんに、「うん」と相づちをうって続きを待つ。
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