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今日からはずっと一緒に✦side秋人✦4
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今日もまた椅子をペッタリとくっつけて、蓮が作ってくれたクリームシチューを二人で食べた。
目を合わせては微笑み合って、カリカリに焼いたフランスパンとシチューを頬張る。
この一週間があまりにもつらすぎた反動か、何気ない会話一つ一つが、もう宝物にしてしまいたいほど嬉しかった。
「蓮、明日の迎え何時? 俺は十時」
洗面所で並んで歯を磨きながら聞いた。
蓮は「あっ」と一言こぼして、ちょっと慌てたように口をゆすいでから、忘れてた、と言った。
「俺明日は早朝なんだ。そっと出ていくから、気にしないで寝ててね」
「え、マジか。じゃあ早く寝ねぇと」
口をゆすいでいると、俺の後ろに移動した蓮が鏡越しに見えた。目が合うと笑顔で両手を広げる。
「お姫様抱っこと、コアラ抱き、どっちがいい?」
「コアラ抱きに決まってんじゃんっ」
急いでタオルで口を拭いて、嬉しくなってふり返る。俺は飛びつくように蓮に抱きついて、後ろで足をクロスさせた。
蓮はクスクス笑いながら、そのまま寝室に向かって歩き始める。
「秋さんコアラ抱き好きだよね」
「ん。好き。蓮にしかやったことねぇけど」
「え、そうなの?」
「そうだよ」
蓮の首筋に顔をすり寄せて、チュッとキスをする。
「ぁっ……ちょ、落としちゃうって」
そういえば台風の日に、蓮が首筋が弱いと知ったことを思い出す。次は絶対に蓮を鳴かせようと、密かにほくそ笑んだ。
寝室に入ると、蓮はベッドではなくクローゼットの前に立つ。
「ん? どした?」
「秋さん、ちょっと降りて?」
不思議に思いながら蓮から降りた。
蓮が、クローゼットの中の引き出しから何かを取り出す。
俺の手を取ると、引き出しから取り出したものを手のひらに乗せた。
「いつでも、ここに帰ってきてね。俺がいなくても、ここで待っててね」
手の中には蓮の部屋の鍵。
あまりにも不意打ちで、目頭が熱くなった。
「いい……のか?」
「いいもなにも。俺は今日から秋さんと一緒に住むくらいの気持ちだったよ?」
「蓮……っ」
鍵を握りしめて蓮に飛びついた。
蓮は心得ていたように俺を受け止めて、腕に中に閉じ込めた。
「すげぇ嬉しいっ。やべぇ……鳥肌たった……」
「え、鳥肌?」
「だって……考えてたセリフまで一緒……」
「え?」
「俺も、鍵用意してたんだ」
「え、本当?」
「ん。まさか蓮からも、もらえるなんて思わなかった」
蓮から離れると、バッグの中から鍵を取り出して蓮の手のひらに乗せた。
「俺も、いつでもこっちに帰ってきてって言うつもりだった」
「秋さん……っ。うわぁ。どうしよう、宝物過ぎて……家宝にしたい!」
涙をにじませて大げさすぎるくらいに喜ぶ蓮に、俺は吹き出した。
「なにバカ言ってんだ。使えよ、ちゃんと」
二人でお互いの鍵を自分のキーケースにおさめた。ケースに並んだ二本の鍵が、それだけでもう愛おしい。
二本の鍵が付いた二つのキーケース。
ずっと一緒の証のような気がして、心が溶けそうなほど嬉しい。
二つのキーケースを眺めながら、二人でニコニコ微笑み合った。
ベッドに入っても、気分が高揚していてなかなか寝付けない。
蓮の腕枕が、もう幸せすぎる……。
胸に顔をすり寄せると、今度は心臓の鼓動が俺の耳を幸せにした。
もうこれが毎日続くなんて、本当に夢みたいだ……。
目を合わせては微笑み合って、カリカリに焼いたフランスパンとシチューを頬張る。
この一週間があまりにもつらすぎた反動か、何気ない会話一つ一つが、もう宝物にしてしまいたいほど嬉しかった。
「蓮、明日の迎え何時? 俺は十時」
洗面所で並んで歯を磨きながら聞いた。
蓮は「あっ」と一言こぼして、ちょっと慌てたように口をゆすいでから、忘れてた、と言った。
「俺明日は早朝なんだ。そっと出ていくから、気にしないで寝ててね」
「え、マジか。じゃあ早く寝ねぇと」
口をゆすいでいると、俺の後ろに移動した蓮が鏡越しに見えた。目が合うと笑顔で両手を広げる。
「お姫様抱っこと、コアラ抱き、どっちがいい?」
「コアラ抱きに決まってんじゃんっ」
急いでタオルで口を拭いて、嬉しくなってふり返る。俺は飛びつくように蓮に抱きついて、後ろで足をクロスさせた。
蓮はクスクス笑いながら、そのまま寝室に向かって歩き始める。
「秋さんコアラ抱き好きだよね」
「ん。好き。蓮にしかやったことねぇけど」
「え、そうなの?」
「そうだよ」
蓮の首筋に顔をすり寄せて、チュッとキスをする。
「ぁっ……ちょ、落としちゃうって」
そういえば台風の日に、蓮が首筋が弱いと知ったことを思い出す。次は絶対に蓮を鳴かせようと、密かにほくそ笑んだ。
寝室に入ると、蓮はベッドではなくクローゼットの前に立つ。
「ん? どした?」
「秋さん、ちょっと降りて?」
不思議に思いながら蓮から降りた。
蓮が、クローゼットの中の引き出しから何かを取り出す。
俺の手を取ると、引き出しから取り出したものを手のひらに乗せた。
「いつでも、ここに帰ってきてね。俺がいなくても、ここで待っててね」
手の中には蓮の部屋の鍵。
あまりにも不意打ちで、目頭が熱くなった。
「いい……のか?」
「いいもなにも。俺は今日から秋さんと一緒に住むくらいの気持ちだったよ?」
「蓮……っ」
鍵を握りしめて蓮に飛びついた。
蓮は心得ていたように俺を受け止めて、腕に中に閉じ込めた。
「すげぇ嬉しいっ。やべぇ……鳥肌たった……」
「え、鳥肌?」
「だって……考えてたセリフまで一緒……」
「え?」
「俺も、鍵用意してたんだ」
「え、本当?」
「ん。まさか蓮からも、もらえるなんて思わなかった」
蓮から離れると、バッグの中から鍵を取り出して蓮の手のひらに乗せた。
「俺も、いつでもこっちに帰ってきてって言うつもりだった」
「秋さん……っ。うわぁ。どうしよう、宝物過ぎて……家宝にしたい!」
涙をにじませて大げさすぎるくらいに喜ぶ蓮に、俺は吹き出した。
「なにバカ言ってんだ。使えよ、ちゃんと」
二人でお互いの鍵を自分のキーケースにおさめた。ケースに並んだ二本の鍵が、それだけでもう愛おしい。
二本の鍵が付いた二つのキーケース。
ずっと一緒の証のような気がして、心が溶けそうなほど嬉しい。
二つのキーケースを眺めながら、二人でニコニコ微笑み合った。
ベッドに入っても、気分が高揚していてなかなか寝付けない。
蓮の腕枕が、もう幸せすぎる……。
胸に顔をすり寄せると、今度は心臓の鼓動が俺の耳を幸せにした。
もうこれが毎日続くなんて、本当に夢みたいだ……。
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