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恋人の距離✦side秋人✦5
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「なんだ。喜ばそうと思ってたのに、先を越されたな」
「……え?」
「神宮寺くんの知名度が上がったことで、今よりセキュリティの高い所を探していると聞いていてな。事務所で押さえていた秋人のマンションの空き部屋を紹介したところだ」
「…………え。蓮が、同じマンションに住むってこと……?」
「み、美月さん、本当ですかっ?」
蓮が身を乗り出して声を上げた。
「うん。すぐ入居手続き済ませるからっ。あとはもう自由に部屋を行き来できるよっ。まあ退去はすぐ無理かもだけど、被っても一ヶ月くらい事務所に負担させるからっ」
それを聞いて、俺は思わず蓮の手をぎゅっと握った。蓮も握り返してくれる。
「秋さん……」
「蓮……」
さっき話していた夢のような話が現実になる。
信じられなくてまるで夢みたいで、握った手が震えた。
「そろそろ時間だ。秋人、行くぞ」
「あ……は、はい」
蓮と目を合わせて微笑み合ってから、手をそっと離した。
それでは、と言って榊さんが車から降りて行く。
俺も追いかけようとドアに手をかけて、あ、と思い出して蓮のマネージャーに声をかけた。
「あの、マネージャーさん」
「あ、私のことは美月でいいですよっ。もう長ーいお付き合いになるでしょうしっ」
「あ、はい。そうですよね。じゃあ美月さん」
「はいっ、なんでしょう?」
「あの、なんで榊さんが俺の気持ちを知ってるって分かったんですか?」
時計を見たらもうちょっと大丈夫そうだなと思って、気になりすぎて聞いてしまった。
「もうね、探り合いをしててすごく感じたのっ。絶対に秋人くんは蓮くんが好きで、榊さんはそれを知ってるって。こっちは蓮くんの気持ちを知ってるし、もう言っちゃいたくて!」
美月さんは、よくぞ聞いてくれましたとばかりに興奮したように話してくれた。
「でも違ったら大変だし、お互いに口を割れなくて本当にもどかしかった! 昨日聞いたら、やっぱり榊さんも同じだったって」
「……そう……だったんですね」
「秋人くん、蓮くんをよろしくお願いしますね」
と頭を下げた美月さんに、俺も慌てて頭を下げた。
今度こそ本当に降りようとして、お礼を忘れてたと思い出した。
「あ、あと……昨日は、ありがとうございました」
「え?」
「その、荷物を、届けてくれて」
「ちょっ、秋さん……っ!?」
蓮が驚いたように声を上げて、真っ赤になった顔を手で覆って、はぁぁ、と深く息を吐いた。
美月さんは「はぅっ」とうめき声のようなものを発して、両手で顔を覆った。
「お、役に立てたようで……っ」
「はい。本当にありがとうございました」
「……もうっ、やめて……秋さんっ」
力無い声で蓮がうったえる。
「え、だってもうバレバレだよな? よくね?」
「…………よくないよ?」
「え、そっか……なんか、ごめん……?」
だって付き合ってお泊りして、準備も整ってたら普通するよな?
「ごちそうさまです……」
美月さんが言った。
車内の妙な空気に困って、俺は首の後ろをポリポリとかいた。
「……え?」
「神宮寺くんの知名度が上がったことで、今よりセキュリティの高い所を探していると聞いていてな。事務所で押さえていた秋人のマンションの空き部屋を紹介したところだ」
「…………え。蓮が、同じマンションに住むってこと……?」
「み、美月さん、本当ですかっ?」
蓮が身を乗り出して声を上げた。
「うん。すぐ入居手続き済ませるからっ。あとはもう自由に部屋を行き来できるよっ。まあ退去はすぐ無理かもだけど、被っても一ヶ月くらい事務所に負担させるからっ」
それを聞いて、俺は思わず蓮の手をぎゅっと握った。蓮も握り返してくれる。
「秋さん……」
「蓮……」
さっき話していた夢のような話が現実になる。
信じられなくてまるで夢みたいで、握った手が震えた。
「そろそろ時間だ。秋人、行くぞ」
「あ……は、はい」
蓮と目を合わせて微笑み合ってから、手をそっと離した。
それでは、と言って榊さんが車から降りて行く。
俺も追いかけようとドアに手をかけて、あ、と思い出して蓮のマネージャーに声をかけた。
「あの、マネージャーさん」
「あ、私のことは美月でいいですよっ。もう長ーいお付き合いになるでしょうしっ」
「あ、はい。そうですよね。じゃあ美月さん」
「はいっ、なんでしょう?」
「あの、なんで榊さんが俺の気持ちを知ってるって分かったんですか?」
時計を見たらもうちょっと大丈夫そうだなと思って、気になりすぎて聞いてしまった。
「もうね、探り合いをしててすごく感じたのっ。絶対に秋人くんは蓮くんが好きで、榊さんはそれを知ってるって。こっちは蓮くんの気持ちを知ってるし、もう言っちゃいたくて!」
美月さんは、よくぞ聞いてくれましたとばかりに興奮したように話してくれた。
「でも違ったら大変だし、お互いに口を割れなくて本当にもどかしかった! 昨日聞いたら、やっぱり榊さんも同じだったって」
「……そう……だったんですね」
「秋人くん、蓮くんをよろしくお願いしますね」
と頭を下げた美月さんに、俺も慌てて頭を下げた。
今度こそ本当に降りようとして、お礼を忘れてたと思い出した。
「あ、あと……昨日は、ありがとうございました」
「え?」
「その、荷物を、届けてくれて」
「ちょっ、秋さん……っ!?」
蓮が驚いたように声を上げて、真っ赤になった顔を手で覆って、はぁぁ、と深く息を吐いた。
美月さんは「はぅっ」とうめき声のようなものを発して、両手で顔を覆った。
「お、役に立てたようで……っ」
「はい。本当にありがとうございました」
「……もうっ、やめて……秋さんっ」
力無い声で蓮がうったえる。
「え、だってもうバレバレだよな? よくね?」
「…………よくないよ?」
「え、そっか……なんか、ごめん……?」
だって付き合ってお泊りして、準備も整ってたら普通するよな?
「ごちそうさまです……」
美月さんが言った。
車内の妙な空気に困って、俺は首の後ろをポリポリとかいた。
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