61 / 83
61
しおりを挟む
黒木のマンションに着きタクシーを降りた。
黒木が、つないだ手を引いて歩きだそうとしたけど、俺は立ち止まる。
「野間?」
「黒木……あのさ」
「なに、どうした?」
「あの……ピザ取るって言ってたけどさ……」
「ああ、たまにはいいだろ?」
「……コ……コンビニでなんか買ってきたらダメか?」
ピザを取ると、来るまで待つことになる。
俺……ピザすら待つ余裕ねぇ……。
いますぐ黒木と……。
「……今日はなんか、適当に食うか」
『乾麺とかラーメンとかあったよな……』
つないだ手に力がこもってぎゅっとにぎられた。
黒木の心から映像が流れてきてハッとする。
同じだ。いま俺たち同じ気持ちだ。
ピザどころか、コンビニに買いに行く時間すら惜しい。そう思ってる。
もうそこからは言葉はいらなかった。
きっと黒木にも俺の映像が見えていたから。
家に入ったらどうしたいか、俺たちの心は同じだったから。
エントランスを通ってエレベーターに乗る。
その間もずっと黒木は心の中で俺を抱いていた。
もう心臓が口から飛び出そうなほどドキドキして、黒木の顔が見られない。
『顔が見られないほどドキドキしてる野間、久しぶりだな?』
『んぇっ?!』
『ほんと可愛すぎてやばい……』
最近の俺、どんなだったっけ。
そうだ……黒木を好きだって気づいてから、ドキドキなんてする余裕がどんどんなくなった。黒木が俺のことをちょっとでも考えてるって確認して安心したかった。
黒木の『可愛い』が聞きたくて抱いてほしくて、必死ですがりついてた気がする。めっちゃガッついてたきっと。
うわ、恥ず……っ。
『……ここにきて煽るのか』
『へ?』
エレベーターを降りると、黒木は早足で俺の手を引いて家の中に引っ張り込んだ。
「く、黒……っ、ん……っ!」
玄関を施錠してすぐ、黒木は唇を奪うようにふさいできた。舌が差し込まれると全身にビリビリと、まるで電流が流れるようだった。
久しぶりの黒木の熱い口付けに、俺は一瞬でとろけて頭がぼうっとした。
「……んぅ、……ん……」
もう二度とできないかもって思ってた黒木とのキス。
嬉しい……気持ちい……大好き……黒木……。
黒木の心がずっと聞こえる。『可愛い』『好き』『大好き』が流れてくる。ずっとずっと俺のことを考えてる。
こんな幸せなキスができるなんて数時間前までは想像もしてなかった。
本当に……夢みたいだ……。
涙があふれて頬を伝った。
「……ふ、……ぁ、……くろ……き……」
『野間、顔真っ赤……。トロンとして涙まで流して可愛いすぎだろう。やばいな。俺、暴走しそう。こんなに余裕ないのは初めてだ』
黒木が暴走? いつも余裕たっぷりに見える黒木が……? 信じられない。そんな黒木、見てみたい。
『黒木、も……早くしよ……?』
もう待てない。早く黒木に抱かれたい。
『もうほんと……理性吹っ飛ぶからやめてくれ……』
『いいよ、吹っ飛べよ……。余裕ない黒木、見たい。見せろよ……』
『お前、さっきまで顔も見られないとか言ってたくせに。ほんとキスで簡単にスイッチ入るよな』
「え、わっ!」
突然身体が浮いて慌てて黒木にしがみついた。
え、なにこれ、姫抱っこじゃんっ。恥ずっ。
「お、おいっ、下ろせよ、恥ずいだろっ」
「お前が煽ったからだろう。ちょっと黙っとけ」
「靴っ! まだ靴脱いでねぇって!」
「そんなもの、ベッドで脱がす」
「は?!」
下りたいけど暴れたら落ちそうで、必死で黒木にしがみついた。
黒木の心からはずっと俺を抱く映像が見えてくる。きっと俺もだけど。
余裕たっぷりの黒木しか知らないから、こんなのウソみたいだ。
俺をベッドに寝かすと靴を脱がし、黒木はそれを床に投げ落とした。
「えっ?!」
信じられないものを見た。キレイ好きの黒木がそんなことをするなんて。
黒木はスーツのジャケットを脱ぎ、片手でネクタイを外す。その仕草がカッコよすぎて、俺は目が離せない。
俺たちはいつもまるで手順通りにベッドに入るから、こんな玄関から流れるように服を着たままなんて初めてだった。
「俺はいつも、こうしたかった」
「え?」
「大人しく飯食って風呂入って勉強見てるフリしてた。本当はいつも、すぐにお前を抱きたかった」
「う、うそだろ……?」
「本当はいつも、余裕なんて全然なかった。いまはそれ以上にないけどな」
うそだろうそだろ……そんなこと聞かされたら、頭が沸騰しちゃうだろっ。
心臓がうるさいくらい暴れだす。
黒木が俺を抱きたくて余裕をなくしているのが、表情からも心からも全部伝わってくる。
嬉しくてまた涙が出た。
黒木が優しく頬を撫でる。黒木の手……気持ちい……。
「野間、好きだ」
初めて声で伝えられた『好き』に、身体中が反応した。
一気に全身がカッと火照る。もう、幸せすぎて死にそうだ。
「俺も……好き、大好き」
首に腕を回し身体を引き寄せてキスをした。
「好きだ、野間」
「ん……好き、黒木……」
「大好きだ」
「……ん、大好き」
何度もリップ音を鳴らして唇を合わせ、声で『好き』を伝え合う。
声も心も全部が好きであふれて胸がいっぱいになった。
黒木が、つないだ手を引いて歩きだそうとしたけど、俺は立ち止まる。
「野間?」
「黒木……あのさ」
「なに、どうした?」
「あの……ピザ取るって言ってたけどさ……」
「ああ、たまにはいいだろ?」
「……コ……コンビニでなんか買ってきたらダメか?」
ピザを取ると、来るまで待つことになる。
俺……ピザすら待つ余裕ねぇ……。
いますぐ黒木と……。
「……今日はなんか、適当に食うか」
『乾麺とかラーメンとかあったよな……』
つないだ手に力がこもってぎゅっとにぎられた。
黒木の心から映像が流れてきてハッとする。
同じだ。いま俺たち同じ気持ちだ。
ピザどころか、コンビニに買いに行く時間すら惜しい。そう思ってる。
もうそこからは言葉はいらなかった。
きっと黒木にも俺の映像が見えていたから。
家に入ったらどうしたいか、俺たちの心は同じだったから。
エントランスを通ってエレベーターに乗る。
その間もずっと黒木は心の中で俺を抱いていた。
もう心臓が口から飛び出そうなほどドキドキして、黒木の顔が見られない。
『顔が見られないほどドキドキしてる野間、久しぶりだな?』
『んぇっ?!』
『ほんと可愛すぎてやばい……』
最近の俺、どんなだったっけ。
そうだ……黒木を好きだって気づいてから、ドキドキなんてする余裕がどんどんなくなった。黒木が俺のことをちょっとでも考えてるって確認して安心したかった。
黒木の『可愛い』が聞きたくて抱いてほしくて、必死ですがりついてた気がする。めっちゃガッついてたきっと。
うわ、恥ず……っ。
『……ここにきて煽るのか』
『へ?』
エレベーターを降りると、黒木は早足で俺の手を引いて家の中に引っ張り込んだ。
「く、黒……っ、ん……っ!」
玄関を施錠してすぐ、黒木は唇を奪うようにふさいできた。舌が差し込まれると全身にビリビリと、まるで電流が流れるようだった。
久しぶりの黒木の熱い口付けに、俺は一瞬でとろけて頭がぼうっとした。
「……んぅ、……ん……」
もう二度とできないかもって思ってた黒木とのキス。
嬉しい……気持ちい……大好き……黒木……。
黒木の心がずっと聞こえる。『可愛い』『好き』『大好き』が流れてくる。ずっとずっと俺のことを考えてる。
こんな幸せなキスができるなんて数時間前までは想像もしてなかった。
本当に……夢みたいだ……。
涙があふれて頬を伝った。
「……ふ、……ぁ、……くろ……き……」
『野間、顔真っ赤……。トロンとして涙まで流して可愛いすぎだろう。やばいな。俺、暴走しそう。こんなに余裕ないのは初めてだ』
黒木が暴走? いつも余裕たっぷりに見える黒木が……? 信じられない。そんな黒木、見てみたい。
『黒木、も……早くしよ……?』
もう待てない。早く黒木に抱かれたい。
『もうほんと……理性吹っ飛ぶからやめてくれ……』
『いいよ、吹っ飛べよ……。余裕ない黒木、見たい。見せろよ……』
『お前、さっきまで顔も見られないとか言ってたくせに。ほんとキスで簡単にスイッチ入るよな』
「え、わっ!」
突然身体が浮いて慌てて黒木にしがみついた。
え、なにこれ、姫抱っこじゃんっ。恥ずっ。
「お、おいっ、下ろせよ、恥ずいだろっ」
「お前が煽ったからだろう。ちょっと黙っとけ」
「靴っ! まだ靴脱いでねぇって!」
「そんなもの、ベッドで脱がす」
「は?!」
下りたいけど暴れたら落ちそうで、必死で黒木にしがみついた。
黒木の心からはずっと俺を抱く映像が見えてくる。きっと俺もだけど。
余裕たっぷりの黒木しか知らないから、こんなのウソみたいだ。
俺をベッドに寝かすと靴を脱がし、黒木はそれを床に投げ落とした。
「えっ?!」
信じられないものを見た。キレイ好きの黒木がそんなことをするなんて。
黒木はスーツのジャケットを脱ぎ、片手でネクタイを外す。その仕草がカッコよすぎて、俺は目が離せない。
俺たちはいつもまるで手順通りにベッドに入るから、こんな玄関から流れるように服を着たままなんて初めてだった。
「俺はいつも、こうしたかった」
「え?」
「大人しく飯食って風呂入って勉強見てるフリしてた。本当はいつも、すぐにお前を抱きたかった」
「う、うそだろ……?」
「本当はいつも、余裕なんて全然なかった。いまはそれ以上にないけどな」
うそだろうそだろ……そんなこと聞かされたら、頭が沸騰しちゃうだろっ。
心臓がうるさいくらい暴れだす。
黒木が俺を抱きたくて余裕をなくしているのが、表情からも心からも全部伝わってくる。
嬉しくてまた涙が出た。
黒木が優しく頬を撫でる。黒木の手……気持ちい……。
「野間、好きだ」
初めて声で伝えられた『好き』に、身体中が反応した。
一気に全身がカッと火照る。もう、幸せすぎて死にそうだ。
「俺も……好き、大好き」
首に腕を回し身体を引き寄せてキスをした。
「好きだ、野間」
「ん……好き、黒木……」
「大好きだ」
「……ん、大好き」
何度もリップ音を鳴らして唇を合わせ、声で『好き』を伝え合う。
声も心も全部が好きであふれて胸がいっぱいになった。
1
お気に入りに追加
129
あなたにおすすめの小説
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
思い出して欲しい二人
春色悠
BL
喫茶店でアルバイトをしている鷹木翠(たかぎ みどり)。ある日、喫茶店に初恋の人、白河朱鳥(しらかわ あすか)が女性を伴って入ってきた。しかも朱鳥は翠の事を覚えていない様で、幼い頃の約束をずっと覚えていた翠はショックを受ける。
そして恋心を忘れようと努力するが、昔と変わったのに変わっていない朱鳥に寧ろ、どんどん惚れてしまう。
一方朱鳥は、バッチリと翠の事を覚えていた。まさか取引先との昼食を食べに行った先で、再会すると思わず、緩む頬を引き締めて翠にかっこいい所を見せようと頑張ったが、翠は朱鳥の事を覚えていない様。それでも全く愛が冷めず、今度は本当に結婚するために翠を落としにかかる。
そんな二人の、もだもだ、じれったい、さっさとくっつけ!と、言いたくなるようなラブロマンス。
拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~
藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――
子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。
彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。
「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」
四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。
そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。
文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!?
じれじれ両片思いです。
※他サイトでも掲載しています。
イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる