創発のバイナリ

ミズイロアシ

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第二部 後編

09 また今日という一日が始まる

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 朝の真新しい日差しが町に降り注ぐのが見える。

 早起きしたダグラスの隣、エリオが立った。

 眠そうな眼を擦りながら

「うう寒っ……ダグ、早えなあ」と呟いた。

 年末の冷たい空気が、眠気覚ましに丁度良く肌に突き刺さった。

「そりゃ、あんだけ昼寝すればね?」

 朝焼けの景色を二人して望んだ。

「ふ~ん……叱られるよな、俺ら」
「ああ。当然だな」
「なんで、んな平然としてられんの?」
「なんで……?」

 暫く間を空けて

「一人じゃないから、とか?」と答えた。

「ふうん?」
「全員で、道連れ的な」
「なんか怖い言い方だな」
「あはは、世は情けってね……今までだって……そうだったし、俺ら」

 親友のその言葉で何でも乗り越えられそうな気がしてきた。

「そうだ、なっ!」暗い親友の背を思いっきり叩いた。

「いっ、たっ!」

 痛がる友人を、思いっきり笑い飛ばした。「エリオ!!」と睨む彼の反応すら面白おかしく思えた。

「ダグ、お前が羨ましいよ。いつもクールで澄ましてさ。俺なんか直ぐにカッとして、感情そのまんまで……」

「はあ? まだ痛いんだけど。痕残ってたら最悪!」
 この時ばかりは、いつものお澄ましではいられなかった。

 背中のひりつきが気になって仕方なさそうだ。

「直ぐに消えるだろ」
 引っ叩いたことは、全然悪びれていない。

「チッ。お前が同じことやられたら、ギャーギャー言うだろ!」

「あーはいはい」
 エリオはくるりと背を向けて山小屋の方へ歩き始めた。

「おっ……おい!」

 追いついた彼と、また二人口喧嘩しながら山小屋へ帰った。



 怪盗の予告状よろしく『一輪の薔薇』は、無事孤児院へと返された。

 こってり絞られる覚悟でいた青年たちは、神父の態度に度肝を抜かれた。

「怪盗紳士諸君! 大切な宝石を返してくれてありがとう。ロゼくん、お礼は言ったかな?」
「うん! 皆ありがとう!」

 三人は、夢かと疑ったが、いくら考えても現実だった。

「マキナが一緒に行ったから、安心して任せられたよ」
 全く現代人は、ことごとくロボットに全信頼を置いているらしい。

 青年たちは面食らった。叱られる気満々で臨んだ犯行だったのに、肩透かしを食らったのだ。

 だからと言って、決して怒られたいわけではない。
 特にポールは、ラッキーと思った。



 孤児院を出て行く背中に、ロゼは大声で

「またねー!! メルシボクゥ!」

と言って、手を振った。

 エリオ、ダグラス、ポールの三人は、躊躇なく手を振り返した。

 そして清々しい気持ちで「またな」と、少女に挨拶を投げかけた。

「メルシィ!」

 また再会する時は、存外早いのかもしれない。

 手を振る四人皆が、そう感じた。
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