0と1の感情

ミズイロアシ

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第二部

08 ちょっと一息つきましょ

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 外壁が緑色の一軒家に到着した。

 ポールの祖父がリビングでくつろいでいるところにお邪魔した。
 早朝だというのに翁は、ロゼたちを温かく出迎えてくれた。
 後ろにマキナの姿を見つけて、何故か喜んだ様子だ。

 ロゼは、折角来たのだから、またニワトリたちに餌をあげたくなった。

「アハハ、いいよ。待ってね」

 ポールはそう言うと、家の奥へ入って行った。

 エリオは、ダグラスに耳打ちしようと手招いた。

「なあ、どうすんだよ」
「んー……ま、どうにでもなるんじゃない?」
「はあぁ?」

 親友の態度にはヤキモキしたが、自分だってずさんな計画が破綻して、責める立場にないことはわかっていた。
 言い争ってる場合でも無いし、これ以上食い下がるのもやめよう。相手も何も言ってこないのだし、とエリオは思った。



 ロゼたちは、ゼファー宅で軽く朝食を済ませた。

「流石ロボットだわな」
 ポールの祖父は、マキナに朝食を作らせて上機嫌だ。

 そんな祖父の態度に、孫は恥ずかしさを感じて

「ごめんよ、ロゼ」と謝った。

 爺が客人のロボットに夢中になっている頃、ダグラスが折を見て動いた。
 ロゼと仲間たちを呼び寄せて「そろそろ出よう」と指示をした。

 事情もわからないロゼは「え、何? 何?」と頭を左右に振っている。

 とても混乱しているようだ。

 二人の親友には勿論彼が言わんとしていることはわかった。

 エリオは「ああ、そうだな」と頷いた。

 そして今現在、翁の相手をしているマキナに目をやった。

 作戦は第二段階へ突入していた。

 まずは、ポールが祖父へ話しかけた。

「じいちゃん?」
「ん? なんだあ?」
「山小屋のカギちょうだい? この前言ってたでしょ?」
「む。ほれ、これでいいか?」
「ありがとう。今から出るから、明日返す」
「皆で行くのか?」

「そう。ロゼも連れてく」
 目線はロボットに向けていた。

「ポール、ちいっと頼みたいんだが」
「え、今?」

 人のいいポールは耳を貸した。

「――ええ? マキナ?」

 驚いて、共感を求めるように親友たちの方を向くと、ダグラスが頷き返してくれた。「あ――!」

 青年たちはロゼをある場所へ連れて行こうと画策していた。
 そのための誘拐だ。

 それのためには無謀でもロゼをマキナから引き離す必要があった。
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