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第二部 前編
06 人の営み
しおりを挟むようやく、煮込み料理が完成して、食卓に昼食が運ばれてきた。
「おいしそう!」
腹ペコ少女はぴょこぴょこ跳ね上がった。
「凄いね。カボチャのラタトゥイユか」
ロゼとポールが楽しみにしているところ、ポールの祖父は
「へんっ、ロボットの作ったもんなんか」
と文句を言った。
「じいちゃん。そんなこと言わずに頂こうよ」
孫は祖父のを取り分けて、目の前に差し出した。
出されたラタトゥイユを訝しんで見る翁とそれを見つめる青年少女、そしてロボットという不思議な構図が出来上がった。
スープをすする音がする。
固唾を呑んで見守る孫たちは互いに目で会話をした。
「う~ん、旨い」
翁は唸り声を上げたかと思ったら、味の感想を口にした。
「とても甘いし濃厚だ。ふむふむ……」
内容を聞いて二人共もほっとした。
自分たちも食べようとスープ皿を手前に引いた。
ロゼがポールを見ると、彼は笑いを堪えながら己のスプーンを掲げる仕草をした。
少女はお返事に両肩を竦めて笑った。
吹きださないように、翁と反対側の壁を二人して見ながら、食べ物を口に運んだ。
「やったね!」とポールが口パクした。
ロゼも体で隠しながら指でグッドマークを作って答えた。
メイド型ロボットは自分の作った食事を食べる人々を、静かに眺めた。
食後の紅茶が真っ白な磁器に注がれた。
カップの中で綺麗な赤の渦ができた。
「いい匂い」
立ち込める湯気の香りに包まれたロゼは、まるでお嬢様にでもなった気分でティーカップに指を掛けた。
ポールは熱々のダージリンティーを口に含んだ。「俺は紅茶党なんだよね~」
「私も紅茶好き」
ふぅーふぅーと紅茶を冷ましながらちょっとずつ飲み込んだ。
気を利かせたマキナが、ゼファー宅を、せわしなく動いて掃除をしている。
「ここも頼めるかあ?」
ポールの祖父が、マキナのことを遠慮なくこき使っているようだった。
「アハハッ、じいちゃんったら」
孫はそう言って紅茶を啜った。
別室でわいわいしている祖父とロボットのやりとりに笑いがこみ上げた。
「ごめんねーロゼ。じいちゃん、もうすっかりロボットに夢中みたいだ」
「うふふ。いいよいいよ! マキナのこと、おじいちゃんも好きになってくれたなら、嬉しい!」
「手のひら返したように、ねっ」
二人は笑いあった。
ゼファー宅は芳醇な香りに包まれて、ポールの好きなクラシック音楽によって癒しの空間が仕上がっていた。
人間たちは存分に寛いだ。
外ではブタやニワトリが自由に過ごしている。
優雅な一日になった。
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「創発のバイナリ」の続編、公開中です。
「IO--イオ」
◆あらすじ◆あれから五年の月日が経った。ロボットと人間、その境は徐々に曖昧に。ロゼと仲間らは「イオ」と名乗る青年ロボットと出会う。ロボットを取り巻く社会情勢の変化に彼らは立ち向かう!
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◆あらすじ◆あれから五年の月日が経った。ロボットと人間、その境は徐々に曖昧に。ロゼと仲間らは「イオ」と名乗る青年ロボットと出会う。ロボットを取り巻く社会情勢の変化に彼らは立ち向かう!
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