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第二部
06 緑のおうち
しおりを挟む約束していた通り、ロゼはポールのお宅を訪問した。孤児院側の都合上、マキナ付きでの外出を許された。
ゼファー宅には、話に聞いていたように、裏庭に動物が沢山いる。こじんまりとした畑もあった。気温は寒いが、ロゼの心は初めての光景にときめき、ウキウキした。
「本当だ。子豚ちゃん可愛い!」
「ハハハ、ミニブタだよ。結構賢いんだ」
ポールの言った通り、ミニブタは『おすわり』と『おて』をしてみせた。
「すご!」
「ロゼもやってみる?」
「いいの?」
「どうぞ」
ロゼがミニブタの前にしゃがみ込むと、ニワトリたちが一斉にロゼを囲み込んだ。
「うわあ! 何!?」
「アハハハ。ロゼのこと、気に入ったみたいだ!」
「ええー!?」
ニワトリはロゼの持つ餌をせびった。
彼女は焦ってしまって、餌を地面に撒き散らした。
ニワトリはコッコ、コッコと鳴きながら、嘴を地面に高速で叩きつけた。
「凄い。沢山食べるのね」
「ハハハ、そうだね」
ベランダからポールの祖父が顔を出した。
「おいポール、お昼はどうする?」
「あ、はーい」
孫は返事をした。
お爺さんは少女の持つロボットを見ると、嫌な顔をして屋内に戻って行った。
ポールは客人に向き合った。
「ロゼも食べてきなよ」
「うん、ありがとう! ポールが作るの?」
部屋に戻ろうとする彼に声を掛けた。
「うん? そーだけど」嫌だったかとロゼに訊いた。
「ううん」
「ポール」
マキナが声を掛けてきた。
「何? マキナ」
目をぱちくりした。
「私に昼食の支度をさせてください」
「え、マキナが? お客さんだし、悪いよ」
「いいえ。お礼です!」
やる気満々に胸を叩くロボットに、ポールは
「そ、そう? じゃあ、やってもらおうかな」
と家に上げた。
ポール、マキナ、ロゼの三人はキッチンに立った。
「ねえねえ、何を作るの?」
ロゼは浮足立って二人の手元を見た。
「うん? そーだなー」
「ラタトゥイユを作ります」
「おっ、いいね」
ロボットの提案に同意し、マルシェカゴから使えそうな野菜を取り出した。
野菜を慣れた手つきで切る青年の姿に、ロゼは見とれてしまった。
「ずっとポールが作ってるの?」
「ん、ううん? 子供の頃はじいちゃんが。俺がやり始めたのはここ二、三年前からーだったかな?」
と答えながら、包丁を上手く使いこなした。
「へえ……!」
自分と同じ年頃にはできるようになっていたということだ。
ロゼは今の自分には到底無理なことだと思った。心から彼に感心してしまった。
料理する手をただ見ていることしかできそうになかった。
「ロボットにやってもらったら楽だよ?」
「そうだねー。けど、作るのは楽しいから」
その笑顔が輝いて見えた。
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