創発のバイナリ

ミズイロアシ@文と絵

文字の大きさ
上 下
21 / 49
第二部 前編

05 エリオとダグラス

しおりを挟む
 
 
 ロゼたちと別れた二人は横並びで帰路についた。

「取引はできたよ? あのロボットなら喋らねえだろ」

とダグラスは同じ歩幅の彼に話しかけた。

「ハッ、キザな奴」

「〝紳士的〟と言ってくれないかな?」

「フン、どこが」

「フッ……」
 前髪の隙間から、目が冗談だと笑った。
「俺がやらなくても、お前がやった。そうだろ?」

 エリオは知らんぷりで凝った首を回した。ダグラスは構わず話す。

「……でなけりゃ、おかわりなんてしない」
「……うっざ」
「後で返せよ?」
「わかってるわ!」

 エリオはまた顔を少し赤らめた。

 ダグラスは不意にため息をついた。

「あれで良かったの?」

「はあ?」

 エリオはぶっきら棒に返事をした。

「あの子……いい子そうじゃん? もう会えないかもよ?」

「はぁ……五つ下のガキに手ぇ出すかよ」

「あっはは……そういう意味じゃねぇってば――」

 エリオに睨まれつつも
「新しい……弟分? できたみたいでさ」と言い切った。

「はっ、それ言うなら妹――お前の方が嬉しいんだろ」

「ええ?」
 想定外の返答で、目を丸くした。

「あ、悪い。傷口えぐったわな」

「っ……んなことないけど」

 ダグラスは長い前髪で表情を見えにくくした。
「――死んだ人は戻って来ない。どこにでもある話だよ……」

「ま……そうだな……」

「ロゼとは――……別人なんだから……俺の妹や――」

「やめろ」
 エリオはダグラスの独話を遮り、自分の額に手を当てた。
「はぁー……もうよせよ」

「ごめんね……」

「違うっ……いや、いい」

 二人の青年は肩を丸めながら歩みを進めた。

 やがて黒い髪の方が

「俺は――……案外大丈夫だよ、エリオ」

 と沈黙を破り、隣を横目で見た。

 エリオは無視して歩いている。

「……ロゼは……本当にいい子だよ。お転婆そうだけど」

 右側を歩くエリオは黙ったままで、聞いている証拠に頷くばかりだった。

 ダグラスもそれ以上は言わない。

 それからは二人共無言で、人通りの少ない町外れの道を選んで進んだ。
しおりを挟む
「創発のバイナリ」の続編、公開中です。
「IO--イオ」
◆あらすじ◆あれから五年の月日が経った。ロボットと人間、その境は徐々に曖昧に。ロゼと仲間らは「イオ」と名乗る青年ロボットと出会う。ロボットを取り巻く社会情勢の変化に彼らは立ち向かう!「IO--イオ」
感想 0

あなたにおすすめの小説

廃線隧道(ずいどう)  

morituna
SF
  18世紀末の明治時代に開通した蒸気機関車用のシャチホコ線は、単線だったため、1966年(昭和41)年に廃線になりました。  廃線の際に、レールや枕木は撤去されましたが、多数の隧道(ずいどう;トンネルのこと)は、そのまま残されました。   いつしか、これらの隧道は、雑草や木々の中に埋もれ、人々の記憶から忘れ去られました。  これらの廃線隧道は、時が止まった異世界の雰囲気が感じられると思われるため、俺は、廃線隧道の一つを探検することにした。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

グレーゾーンディサイプルズ

WTF
SF
ある日親友を惨殺されたかもしれないと連絡がある。 遺体は無く肉片すら見つからず血溜まりと複数の飛沫痕だけが遺されていた。 明らかな致死量の血液量と状況証拠から生存は絶望的であった。 月日は流れ特務捜査官となったエレンは日々の職務の中、1番憎い犯人が残した断片を探し、追い詰めて親友であり幼馴染がまだこの世に存在していると証明することを使命とし職務を全うする。 公開分シナリオは全てベータ版です 挿絵は自前

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

感情を失った未来、少年が導く人間らしさを取り戻す冒険の旅

ことのは工房
SF
未来の地球は、技術が進化しすぎて人類の生活がほぼ全て機械によって管理されています。しかし、AIが支配する世界において、感情や創造性を失った人々は、日々の生活をただ無感動に繰り返すだけの存在となっています。そんな中、ある少年が目を覚まし、心に残る一つの奇妙な夢に導かれながら、未知の世界へと旅立つ決意を固めます。その旅の途中で、彼は「人間らしさ」を取り戻すための鍵を握る謎の存在と出会います。 この物語は、機械による支配と人間らしさを求める冒険を描き、AIと人間の関係性、感情、自由意志といったテーマを探求します。

関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。

虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。 科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。 愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。 そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。 科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。 そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。 誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。 それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。 科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。 「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」 一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...