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最低最悪のクズ伯爵に嫁がされそうになったので、全力で教育して回避します!
【後日談】レオとケヴィン
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レオハルトは、とっておきの隠れ家である木の上で、自分を探す使用人たちの様子をうかがっていた。
「レオ様―!どちらにいらっしゃるのですか。」
「レオ様!ご無事かだけでもお返事してください。」
今日は本来なら、お父様とお母様と一緒にお出かけをする約束の日だった。
普段お仕事で忙しいお父様とお母様。3人で1日中出かけられるのは、ずいぶん久しぶりだったのに。
数日前に、誰かから会いたいという手紙がきたらしくて、2人で揃って対応できるのがこの日だけなんだと謝られてしまったのだ。
お出かけの代わりに家庭教師の先生を呼んでおくから、一緒に勉強をして待っててくれって。
なんで遊ぶはずだった日の代わりの埋め合わせが勉強なんだ!
おかしくないか? お父様とお母様は頭が固すぎる!
レオハルトは、厳しい家庭教師の先生が来る前にと、早々に自分の部屋を抜け出していた。
庭に沢山ある木のうち、登りやすいものが何本かある。さらに葉が生い茂っていて、登ってしまえば、大人からは姿が見えなくなる木。
探している人たちの様子も見えるし、しかも屋敷のいくつかの部屋の中も見える。
あんまり何度も隠れていたら、さすがにいつか見つかってしまうだろうから、本当に一人になりたい時だけに隠れるとっておきの場所だ。
レオが屋敷の様子を見ていたら、応接室に男の人が訪ねてきた。
背が高くてスラっとしていて、中々格好良さそうな人だ。
茶色の髪の毛はクルクルとカールしていて、レオと同じだった。
お父様とお母様とその人は、しばらく話し込んでいたけれど、レオを探しだせなかったらしい使用人がなにやら部屋に報告に行くと、3人で慌てたように部屋を出ていった。
―――まずい。お父様たちが探しにくるかも。
そろそろ出ていったほうがいいかもしれない。
この木の隠れ場所がバレないように、近くに人がいない時に地面に降りよう。
そうして少し離れた場所に移動してから、誰かに見つかるのだ。
でも今日は、なかなか人がいなくならない。
レオはこの場所が見つからないか、ハラハラしながら使用人たちがいなくなるのを待っていた。
「やあ、良い木だね。」
「うわ!」
「危ない!」
集中して下の気配を探っていたら、急に誰かの声が間近で聞こえて驚いてしまう。
慌てて手を滑らせてしまって、その誰かに支えられたけれど、足をしっかりと枝に巻き付けているので支えられなくても大丈夫だった。
その誰かは、お父様とお母様を訪ねてきたお客様だった。
遠くから見た時は分からなかったけれど、近くで見たら、顔も結構格好良い。
「なんだよ、びっくりさせないでよ。」
「ごめんごめん。急に話しかけて驚かせてしまったね。」
その人は大人なのに、レオが文句を言ったらあっさりと謝ってくれた。
「さて。なんでレオ君は、こんなところに隠れているんだい?」
「今日はお父様とお母様とお出かけする予定だったんだ。なのにお客さんが来るからやっぱり勉強しろって言うんだよ?なんでお出かけ行けない上に、勉強をしなくちゃいけないんだ。おかしいと思う。」
「あ、ゴメン。」
そのお客さんである男の人は、また謝った。
「べつにあなたに謝ってもらいたいわけじゃないんだけど。・・・・ところでなんであなたはこの隠れ場所がすぐ分かったの?今まで誰にも見つかったことないのに。お父様もお母様も子どもの頃から真面目な良い子で、木登りなんて生まれてから一度もしたことないんだってさ。」
「・・・・いかにも登りやすそうな良い木があるからさ。僕は子どもの頃、こんな木を見つけると登らずにはいられなかった。だからレオ君がいなくなって、どこを探しても見つからないって聞いた時、もしかしたらこの木の上かもしれないと思ったんだ。」
「へー、そうなんだ。」
服装からして貴族だろうに、木登りが好きな人もいるんだな。
レオはこの男の人に親近感を覚えて、興味が出てきた。
「ねえねえ、今日は何の用事だったの?初めてうちにくるよね?1度も見た事がない顔だ。」
来客の全員を覚えているわけではないけれど、この人は見た事がないという自信があった。
なんとなく。
格好いいし、目立つというか、特別な感じ。この人だったら、1度会ったら忘れない気がする。
「今日はね、君のお父様とお母様に謝りに来たんだ。」
「謝りに?オジサン、何か悪いことでもしたの?」
「うん。とてもね。」
そんな悪い事をするような人には見えないのにな、とレオは不思議に思った。
「会ってくれなくても、顔も見たくないと言われてもおかしくないくらい、悪い事をしてしまったんだ。・・・・君のお父様とお母様は本当に、とても優しいね。会って、謝らせてくれた。」
お父様とお母様を褒められて、レオは少し誇らしいような、くすぐったいような感じがしてしまう。
「そ、そうかな。お父様もお母様もいつもあれするなとかこれは危ないとか、心配性で。あと逆にこの本は読んでおけとか、今から少しずつ領地のことを知っておけとか。真面目すぎてつまらない。」
少し照れ臭さもあって、大げさに言ってしまう。
でも他の友達のお父さんお母さんよりも少し心配性で、真面目でつまらないことは本当だ。
こんな木に登っているとバレたら、びっくりされることだろう。
「レオ君はさ、こうやって隠れていたら、お父様やお母様があきれて、君のことを捨てるかもとか、思ったことはある?」
「いやないよ。なにそれ。そんなことあるわけないじゃないか。」
「だよね。」
男の人は、安心したように、嬉しそうに笑った。
「じゃあさ、君の意見を聞かずに、全部先回りして、何をやるかも、何を着るかも全てお父様やお母様が決めて、従わなかったら捨てられるかもとか思った事ある?」
「いやだからないって。なんだよそれ。」
確かにこれは役に立つからやれとかは言われるけど、ちゃんとレオの好みの服を選ばせてくれるし、好きな手習いをやらせてくれる。
大体なんだよ捨てられるって。そんなことあるわけないじゃないか。
「君の心は愛情で満たされている。君の両親は素晴らしい人たちだ。いくら謝っても謝り足りないし、いくら感謝をしてもしたりない。」
大げさだなーなにを言っているんだよ。
そう言おうと思ったけど、その男の人の表情がとても真剣なのでやめた。その人の目は、少し赤かった。
「あのさ・・・・。」
「お、チャンスだよレオ君。今下に誰もいない。今のうちに下りよう。」
その男の人は、するするとしなやかに木から下りていってしまう。
慌ててレオも、追いかけて木から下りる。
「じゃあここでお別れだ。この木のことは秘密だろう?僕はあっちのほうを探しているフリをするから、レオ君はそっち側から適当にあらわれてくれ。」
そう言うと男の人は、レオに背中を向けて行ってしまおうとする。
「あなたが僕の本当のお父さん?」
今聞かないと一生聞けない気がして、レオは勇気を振り絞って聞いてみた。
お父様とお母様は隠しているつもりだろうけど、色んな人が噂をしているのを聞いたことがある。レオが今よりもずっと小さな頃から。
小さいレオが、意味が分からないと思ってだろう。色んな人が噂をしていた。
レオの父親が本当はセディじゃなくて、他にいるんだって。
だからセドリック父様が「俺が君のお父さんになっても良いか?」と聞いてきた時は、どういうことなのかと思った。あれ?僕のお父様ってセドリックってことになってるんじゃないの?どういうこと?って。
「・・・・・・・・。」
その男の人はすぐには返事をしなかった。それが十分答えだった。
「また会える?」
「君が会っても良いと言ってくれるならいつでも。」
今度の答えはすぐに返ってきた。
「別にいいけど。そんな会いたくないとか言わないよ。」
「・・・・僕は君にも、酷い事をしてしまったんだ。」
「そんなの覚えてないし。・・・・じゃあさ、僕が何か困っていたら、なんか助けてよ。あとお父様とお母様にバレたくない相談とかあった時、聞いてよ。それで許してあげるからさ。」
「必ず助ける。君が何か困っていることがあったら、世界中のどこにいても駆け付ける。なんとしてでも助ける。」
「いやまあ、それは無理だろうけど。」
そんなの人間にできるわけない。
「助ける。」
「うん、分かった。じゃあよろしく。」
レオがそう言うと、男の人は振り向かずに去って行った。
―――最後声が震えていたから、多分泣いてたなアイツ。
大人なのに、泣き虫な奴だなー。
レオはハンカチを取り出して、涙と鼻水を拭いながら、そんなことを考えていた。
「レオ様―!どちらにいらっしゃるのですか。」
「レオ様!ご無事かだけでもお返事してください。」
今日は本来なら、お父様とお母様と一緒にお出かけをする約束の日だった。
普段お仕事で忙しいお父様とお母様。3人で1日中出かけられるのは、ずいぶん久しぶりだったのに。
数日前に、誰かから会いたいという手紙がきたらしくて、2人で揃って対応できるのがこの日だけなんだと謝られてしまったのだ。
お出かけの代わりに家庭教師の先生を呼んでおくから、一緒に勉強をして待っててくれって。
なんで遊ぶはずだった日の代わりの埋め合わせが勉強なんだ!
おかしくないか? お父様とお母様は頭が固すぎる!
レオハルトは、厳しい家庭教師の先生が来る前にと、早々に自分の部屋を抜け出していた。
庭に沢山ある木のうち、登りやすいものが何本かある。さらに葉が生い茂っていて、登ってしまえば、大人からは姿が見えなくなる木。
探している人たちの様子も見えるし、しかも屋敷のいくつかの部屋の中も見える。
あんまり何度も隠れていたら、さすがにいつか見つかってしまうだろうから、本当に一人になりたい時だけに隠れるとっておきの場所だ。
レオが屋敷の様子を見ていたら、応接室に男の人が訪ねてきた。
背が高くてスラっとしていて、中々格好良さそうな人だ。
茶色の髪の毛はクルクルとカールしていて、レオと同じだった。
お父様とお母様とその人は、しばらく話し込んでいたけれど、レオを探しだせなかったらしい使用人がなにやら部屋に報告に行くと、3人で慌てたように部屋を出ていった。
―――まずい。お父様たちが探しにくるかも。
そろそろ出ていったほうがいいかもしれない。
この木の隠れ場所がバレないように、近くに人がいない時に地面に降りよう。
そうして少し離れた場所に移動してから、誰かに見つかるのだ。
でも今日は、なかなか人がいなくならない。
レオはこの場所が見つからないか、ハラハラしながら使用人たちがいなくなるのを待っていた。
「やあ、良い木だね。」
「うわ!」
「危ない!」
集中して下の気配を探っていたら、急に誰かの声が間近で聞こえて驚いてしまう。
慌てて手を滑らせてしまって、その誰かに支えられたけれど、足をしっかりと枝に巻き付けているので支えられなくても大丈夫だった。
その誰かは、お父様とお母様を訪ねてきたお客様だった。
遠くから見た時は分からなかったけれど、近くで見たら、顔も結構格好良い。
「なんだよ、びっくりさせないでよ。」
「ごめんごめん。急に話しかけて驚かせてしまったね。」
その人は大人なのに、レオが文句を言ったらあっさりと謝ってくれた。
「さて。なんでレオ君は、こんなところに隠れているんだい?」
「今日はお父様とお母様とお出かけする予定だったんだ。なのにお客さんが来るからやっぱり勉強しろって言うんだよ?なんでお出かけ行けない上に、勉強をしなくちゃいけないんだ。おかしいと思う。」
「あ、ゴメン。」
そのお客さんである男の人は、また謝った。
「べつにあなたに謝ってもらいたいわけじゃないんだけど。・・・・ところでなんであなたはこの隠れ場所がすぐ分かったの?今まで誰にも見つかったことないのに。お父様もお母様も子どもの頃から真面目な良い子で、木登りなんて生まれてから一度もしたことないんだってさ。」
「・・・・いかにも登りやすそうな良い木があるからさ。僕は子どもの頃、こんな木を見つけると登らずにはいられなかった。だからレオ君がいなくなって、どこを探しても見つからないって聞いた時、もしかしたらこの木の上かもしれないと思ったんだ。」
「へー、そうなんだ。」
服装からして貴族だろうに、木登りが好きな人もいるんだな。
レオはこの男の人に親近感を覚えて、興味が出てきた。
「ねえねえ、今日は何の用事だったの?初めてうちにくるよね?1度も見た事がない顔だ。」
来客の全員を覚えているわけではないけれど、この人は見た事がないという自信があった。
なんとなく。
格好いいし、目立つというか、特別な感じ。この人だったら、1度会ったら忘れない気がする。
「今日はね、君のお父様とお母様に謝りに来たんだ。」
「謝りに?オジサン、何か悪いことでもしたの?」
「うん。とてもね。」
そんな悪い事をするような人には見えないのにな、とレオは不思議に思った。
「会ってくれなくても、顔も見たくないと言われてもおかしくないくらい、悪い事をしてしまったんだ。・・・・君のお父様とお母様は本当に、とても優しいね。会って、謝らせてくれた。」
お父様とお母様を褒められて、レオは少し誇らしいような、くすぐったいような感じがしてしまう。
「そ、そうかな。お父様もお母様もいつもあれするなとかこれは危ないとか、心配性で。あと逆にこの本は読んでおけとか、今から少しずつ領地のことを知っておけとか。真面目すぎてつまらない。」
少し照れ臭さもあって、大げさに言ってしまう。
でも他の友達のお父さんお母さんよりも少し心配性で、真面目でつまらないことは本当だ。
こんな木に登っているとバレたら、びっくりされることだろう。
「レオ君はさ、こうやって隠れていたら、お父様やお母様があきれて、君のことを捨てるかもとか、思ったことはある?」
「いやないよ。なにそれ。そんなことあるわけないじゃないか。」
「だよね。」
男の人は、安心したように、嬉しそうに笑った。
「じゃあさ、君の意見を聞かずに、全部先回りして、何をやるかも、何を着るかも全てお父様やお母様が決めて、従わなかったら捨てられるかもとか思った事ある?」
「いやだからないって。なんだよそれ。」
確かにこれは役に立つからやれとかは言われるけど、ちゃんとレオの好みの服を選ばせてくれるし、好きな手習いをやらせてくれる。
大体なんだよ捨てられるって。そんなことあるわけないじゃないか。
「君の心は愛情で満たされている。君の両親は素晴らしい人たちだ。いくら謝っても謝り足りないし、いくら感謝をしてもしたりない。」
大げさだなーなにを言っているんだよ。
そう言おうと思ったけど、その男の人の表情がとても真剣なのでやめた。その人の目は、少し赤かった。
「あのさ・・・・。」
「お、チャンスだよレオ君。今下に誰もいない。今のうちに下りよう。」
その男の人は、するするとしなやかに木から下りていってしまう。
慌ててレオも、追いかけて木から下りる。
「じゃあここでお別れだ。この木のことは秘密だろう?僕はあっちのほうを探しているフリをするから、レオ君はそっち側から適当にあらわれてくれ。」
そう言うと男の人は、レオに背中を向けて行ってしまおうとする。
「あなたが僕の本当のお父さん?」
今聞かないと一生聞けない気がして、レオは勇気を振り絞って聞いてみた。
お父様とお母様は隠しているつもりだろうけど、色んな人が噂をしているのを聞いたことがある。レオが今よりもずっと小さな頃から。
小さいレオが、意味が分からないと思ってだろう。色んな人が噂をしていた。
レオの父親が本当はセディじゃなくて、他にいるんだって。
だからセドリック父様が「俺が君のお父さんになっても良いか?」と聞いてきた時は、どういうことなのかと思った。あれ?僕のお父様ってセドリックってことになってるんじゃないの?どういうこと?って。
「・・・・・・・・。」
その男の人はすぐには返事をしなかった。それが十分答えだった。
「また会える?」
「君が会っても良いと言ってくれるならいつでも。」
今度の答えはすぐに返ってきた。
「別にいいけど。そんな会いたくないとか言わないよ。」
「・・・・僕は君にも、酷い事をしてしまったんだ。」
「そんなの覚えてないし。・・・・じゃあさ、僕が何か困っていたら、なんか助けてよ。あとお父様とお母様にバレたくない相談とかあった時、聞いてよ。それで許してあげるからさ。」
「必ず助ける。君が何か困っていることがあったら、世界中のどこにいても駆け付ける。なんとしてでも助ける。」
「いやまあ、それは無理だろうけど。」
そんなの人間にできるわけない。
「助ける。」
「うん、分かった。じゃあよろしく。」
レオがそう言うと、男の人は振り向かずに去って行った。
―――最後声が震えていたから、多分泣いてたなアイツ。
大人なのに、泣き虫な奴だなー。
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