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父親が横領の罪で捕まらなかったIFバージョン
第15話 エピローグ
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盗賊に扮した私設騎士団は、なんとほとんどがヘッツェン家の者だった。
なんでも嫡男のハリー(まだブラッドの祖父が現役の当主だった)が、ローガンの横領の証拠を捏造しようとしていたことが直前で発覚。
貴族なため秘密裏に処分されたが、ヘッツェン家は随分家格を下げられた。
領地も大部分返上し、収入も減る。
平民出身ごときがと逆恨みしたヘッツェン侯爵が、第4騎士団を襲ったのだそうだ。
計画は獄中のハリーが立てていた。
貴族なら、獄中の者との連絡手段も、色々とあったらしい。
捏造した証拠の完成度と言い、今回の計画と言い、ハリー・ヘッツェンはどうもよろしくない方向への才能に恵まれているらしい。
いや、貴族出身とはいえ騎士団長にまでなったのだ。
その才能を、他人を蹴落としたり、陥れるのではなく、真っ直ぐなものに向けていれば・・・・・本当はカミュにだって、負けなかったのかもしれない。
「父上が、横領の罪を捏造されて捕まる寸前だったなんて・・・・。」
事の顛末を聞いた時、流石のイルゼも顔を青くした。
「そんな事になっていたら、私なんて路頭に迷って死んでたかもしれない。」
「そうか?」
いつもの騎士団の食堂で、ユージーンと。・・・・アマンダとカミュも一緒だ。
最初の頃はこの2人と食事できるなんてと感動していたが、最近では新人を出汁にして、一緒のテーブルで食べたいだけなんじゃないかこの人たちと、イルゼは思っている。
「そうか?って、それ以外に何があるんだ。」
「そうだな。お前自身に罪はないんだから、その腕なら私設の騎士団ならどこでも活躍できるだろうし、外国へ行けば父親の罪など問題視されない国が、いくらでもある。個人的に気に入られて誰か貴婦人の護衛になるかもしれない。・・・案外王妃の護衛になれたりな。」
「それ、今より出世してないか?」
複雑そうな顔で言ったのはカミュだ。
というか、今でも望むなら、明日にでも王妃の護衛になれるだろう。
王妃は既にイルゼのファンだ。
せっかく入ったアマンダの可愛い後輩が取られないか、心配なカミュだった。
「・・・・・・・・いけそうだな。」
しばらく黙ってシミュレーションしていたのだろう。イルゼは、あ、それいけそうと結論を出したようだ。
イルゼは意外と図太い。
「まああと、一番ありそうなのは・・・・・うちの侯爵家で護衛をやってもらえるように、頼みこむな。好きなだけ、好きなように思いっきり自由に訓練できる環境を整えて、家族の護衛やうちの騎士団で活躍してもらう。」
「へえ、それも楽しそうだな。」
国有数の侯爵家で、思いっきり羽を伸ばして自由に鍛錬できるなら、悪い話ではない。
「それでローガン殿の冤罪を晴らして、イルゼがうちの家族とも仲良くなって、十分馴染んだ頃、求婚する。」
「おい・・・・・・・・・・・・・・・おい。」
なんだそれ・・・・そんなの。
「断れる気がしないんだが。」
「断る気なのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
本心を言えば、いつどんな風に求婚されていても、断れる気がしない。
――――――――――――――――――つまりはそういうことだ。
いつからか分からない。
もしかしたら、学生時代に、あの真剣な目で鋭く射貫かれる手合わせに、心躍らせていた時から、始まっていたのかもしれない。
真っ赤になって俯くイルゼ。それを微笑ましく見守るカミュと、少しうらやましそうなアマンダ。
「おれは自分に勝つような女を、取り逃がすようなバカな真似をする気はないんだよ。」
そう言って、最高の笑顔を見せるユージーンに、とても勝てる気がしないイルゼだった。
なんでも嫡男のハリー(まだブラッドの祖父が現役の当主だった)が、ローガンの横領の証拠を捏造しようとしていたことが直前で発覚。
貴族なため秘密裏に処分されたが、ヘッツェン家は随分家格を下げられた。
領地も大部分返上し、収入も減る。
平民出身ごときがと逆恨みしたヘッツェン侯爵が、第4騎士団を襲ったのだそうだ。
計画は獄中のハリーが立てていた。
貴族なら、獄中の者との連絡手段も、色々とあったらしい。
捏造した証拠の完成度と言い、今回の計画と言い、ハリー・ヘッツェンはどうもよろしくない方向への才能に恵まれているらしい。
いや、貴族出身とはいえ騎士団長にまでなったのだ。
その才能を、他人を蹴落としたり、陥れるのではなく、真っ直ぐなものに向けていれば・・・・・本当はカミュにだって、負けなかったのかもしれない。
「父上が、横領の罪を捏造されて捕まる寸前だったなんて・・・・。」
事の顛末を聞いた時、流石のイルゼも顔を青くした。
「そんな事になっていたら、私なんて路頭に迷って死んでたかもしれない。」
「そうか?」
いつもの騎士団の食堂で、ユージーンと。・・・・アマンダとカミュも一緒だ。
最初の頃はこの2人と食事できるなんてと感動していたが、最近では新人を出汁にして、一緒のテーブルで食べたいだけなんじゃないかこの人たちと、イルゼは思っている。
「そうか?って、それ以外に何があるんだ。」
「そうだな。お前自身に罪はないんだから、その腕なら私設の騎士団ならどこでも活躍できるだろうし、外国へ行けば父親の罪など問題視されない国が、いくらでもある。個人的に気に入られて誰か貴婦人の護衛になるかもしれない。・・・案外王妃の護衛になれたりな。」
「それ、今より出世してないか?」
複雑そうな顔で言ったのはカミュだ。
というか、今でも望むなら、明日にでも王妃の護衛になれるだろう。
王妃は既にイルゼのファンだ。
せっかく入ったアマンダの可愛い後輩が取られないか、心配なカミュだった。
「・・・・・・・・いけそうだな。」
しばらく黙ってシミュレーションしていたのだろう。イルゼは、あ、それいけそうと結論を出したようだ。
イルゼは意外と図太い。
「まああと、一番ありそうなのは・・・・・うちの侯爵家で護衛をやってもらえるように、頼みこむな。好きなだけ、好きなように思いっきり自由に訓練できる環境を整えて、家族の護衛やうちの騎士団で活躍してもらう。」
「へえ、それも楽しそうだな。」
国有数の侯爵家で、思いっきり羽を伸ばして自由に鍛錬できるなら、悪い話ではない。
「それでローガン殿の冤罪を晴らして、イルゼがうちの家族とも仲良くなって、十分馴染んだ頃、求婚する。」
「おい・・・・・・・・・・・・・・・おい。」
なんだそれ・・・・そんなの。
「断れる気がしないんだが。」
「断る気なのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
本心を言えば、いつどんな風に求婚されていても、断れる気がしない。
――――――――――――――――――つまりはそういうことだ。
いつからか分からない。
もしかしたら、学生時代に、あの真剣な目で鋭く射貫かれる手合わせに、心躍らせていた時から、始まっていたのかもしれない。
真っ赤になって俯くイルゼ。それを微笑ましく見守るカミュと、少しうらやましそうなアマンダ。
「おれは自分に勝つような女を、取り逃がすようなバカな真似をする気はないんだよ。」
そう言って、最高の笑顔を見せるユージーンに、とても勝てる気がしないイルゼだった。
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