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父親が横領の罪で捕まらなかったIFバージョン
第7話 休養日
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ついに待ちに待った休養日がきた。
入隊日から1か月、ずーっと寮と訓練場を行ったり来たりで、いくら食事が美味しいとはいえ、そろそろ外の空気も吸いたくなってきたところだ。
王宮の外には出られないが、訓練は休める待機日はあったので、体を休める事は出来ていたが、寮から出てはいけないというのは、イルゼにとって逆に辛かった(他の新兵は、ただひたすら死んだように寝ているので、ヒマを持て余す元気があるのはイルゼぐらいなのだが)。
生活と訓練に必要な物は最低限支給されるとはいえ、さすがにそろそろ自分で選んで買いたいものもある。
しかしこの休養日、いつの間にかユージーンと出かけることが決定していた。
「明日8時に門で。」
誘われてからかなりの日数が経っていたし、あれ以来話題にのぼらなかったので、なかったことになったのかなーと、都合よく考えていた。
しかし一緒に夕飯を食べ、さあそれぞれの寮に戻ろうとしたところで、ユージーンはそれだけ言ってさっさと男子寮の方へ行ってしまった。
「忘れてたのかと思ってた。」
「そんなワケないでしょ!騎士団の全員が覚えているわよ!」
「ええ!なんで!?」
アマンダの言葉に驚くイルゼ。
何でも何も、あの日食堂にいた全員が、2人の会話を聞いていたのだ。更に娯楽話に飢えている騎士団の、隅々まで噂が駆け巡るのは一瞬だった。
ちなみに入団以来、時間があえば必ずアマンダはイルゼを食事に誘ってきた。それのおかげで、イルゼは何とか欠かすことなく、ムリヤリでも食事をすることが出来たのだ。
本当に心から感謝している。
国民憧れのアマンダ相手に、最初の頃は緊張する余裕もなく、されるがままに面倒を見られていたイルゼだったが、少しだけ余裕が出てきた今でも、関係性は変わらない。
「困ったな。私はあまり、友人と出かけたことがないんだ。どうすれば良いか分からない。」
本当に困り切ったようにしょんぼりする後輩の姿に、アマンダの胸がキューンと鳴った。
「大丈夫よ!ユージーンが色々と考えてくれているわ。イルゼはなーんにも考えないで、気楽に楽しめばいいのよ。」
「でも、休養日に買っておきたいものもあるし、行きたい場所もあるのに・・・・。」
ユージーンがいるなら、勝手に好きな場所へ行けないかもしれないではないか。
「あら素敵。なら、ユージーンにそれを伝えれば良いのよ。一緒に行こうって。」
「ユージーンにも行きたい場所があったら?」
「そうね、新人の休養日は少ないから、ユージーンの行きたい場所も行けると良いわね。」
「時間が足りなかったら?」
「2人で相談しなさい!!」
実に頼もしい先輩である。
「・・・アマンダも付いて来てくれ。」
「私明日、任務あるから。」
任務がなければ、押せば付いて来てくれそうな勢いである。
「それじゃあおやすみなさいイルゼ。明日は楽しんでね。」
狭いが個室の寮は、大体騎士団ごとに区画が分かれている。
女子寮の第1騎士団の区画はガランとしていて寂しく、アマンダとはお隣同士である。
部屋が余りまくっているので、貴族隊員用(公式にはただの広めの間取りの部屋という事になっているが、貴族出身の騎士が入るのが暗黙の了解である)の部屋を使えている。
「お休み、アマンダ。いつもありがとう。」
*****
翌朝。
「あ、アマンダおはよう。今から朝食?」
身体に染み込んだ習慣で、ついいつもの時間に起きたイルゼは、食堂へ行こうとドアを開けた。
するとちょうど隣の部屋のアマンダも、ドアを開けたところだった。
「おはようイルゼ。いつも通り可愛いわね。」
カッコいいとは言われ慣れているが、イルゼを可愛い可愛い言ってくるのはアマンダくらいである。
剣技では負けないが、訓練の習熟度ではアマンダ先輩には程遠い。
アマンダにとっては、イルゼなんて可愛いものなのだろう。
「アマンダも、いつも通り綺麗だね。」
「うぐぅ!!」
ニコリと微笑んだイルゼを見て、胸を押さえて俯くアマンダ。
最初にアマンダのこの行動を見た時は病気か、喉が詰まったのかと驚いたが、聞けば「ときめいているだけだから大丈夫」とのことだ。
きっとアマンダなりの冗談なのだろう。意外とお茶目な一面もあるなーとイルゼは思っている。
「そ・・・そうそう。こんなことしている場合ではなかったわ。イルゼ、その格好、いつも通り可愛いのだけれど、まさかその格好のままで、今日出かけるのじゃないわよね?食堂に行くだけで、後で部屋に戻って着替えるのよね???」
「この格好で出かけるつもりだよ。少し時間が早いけど、ゆっくりお茶でも飲んで、そのまま出かけようと・・・・。」
ラフだが清潔感のある白いブラウスに、スラリと伸びた黒系の細身のズボン。
ブラウスにワンポイントの刺繍もあって、外出着としては申し分ないと思う
その証拠に、この格好で街へ出かけると、自分で言うのもなんだが大好評で、色んなところでオマケまでしてくれる。・・・・・・主にご婦人方からだが。
「・・・知ってた。知ってたわ。聞いてみただけ。」
良い笑顔を浮かべるアマンダ。
「それじゃ、お姉さんの部屋へいらっしゃい。」
常日頃からお世話になっている先輩の誘いを断ることなど、イルゼには出来なかった。
「うん!可愛い。」
部屋の中に入ると、有無を言わせずアマンダに、色々なスカートを代わる代わるあてられ、その中の一着を着るように言われた。
基本的に先輩騎士の指示には従う根っから体育会系のイルゼは、あっさりと着替えて見せた。
「イルゼって、毎日のように外で訓練しているのに、肌が白いわよね。何か対策をしているの?」
「少しだけ地魔法が使えるから、頑張って日よけだけは出来るようにしたんだ。そうしないと、赤く腫れて火傷のようになってしまうから。それしか出来ないけど。」
「まあ良いわね。」
魔法を使える者の数は少ないし、使える者も、まああれば便利という程度の能力の者がほとんどだ。
イルゼも、他人にでも日よけの魔法を掛けられるなら重宝されるだろうが、自分にしか掛けられないので、本当にあって便利というだけの能力だ。
魔術師団の、火・水・地・風のそれぞれの長ですら、頑張って自分の周囲数メートルにシールドを張ったり、自分よりも軽いものを浮かせる程度の力しかない。
余談だが、王妃様は魔術師団の現役の地の長だったりする。
王様がまだ王太子の頃、運命の相手を探す儀式に地魔法の長として参加して、そのまま自分が選ばれてしまったというのは、今でも国民の語り草だ。
「これで完璧!」
アマンダに促されて鏡を見てみる。
「可愛い・・・・。」
思わずつぶやくイルゼ。ブラウスはそのままなのに、下をフワリと広がる爽やかな空色のスカートに変えただけで、印象が全然違う。
「おしとやかなお嬢さんみたい。」
「そりゃあそこら辺の男に負けないくらい強いけれど、イルゼはとっても可愛いお嬢さんよ。うーん、体がキュッと引き締まっていて、下着で締め付ける必要一切なし!ウエスト細~い!」
「アマンダこそ、とってもスタイルが良くて。強いのに、女性らしくて、綺麗で、ずっとずっと憧れていたんだ。私は男みたいで・・・・。嬉しい、ありがとう。」
「ふふ、私も嬉しい。ありがとうイルゼ。」
子どもの頃、父が慣れない店で、頑張ってワンピースを買って来てくれたこともあった。
でも結局訓練には着れないし、普段も汚してはいけないと棚の奥にしまったまま、サイズアウトしてしまうのがほとんどだった。
そうこうしているうちに成長して、たまにはスカートを履いてみたいと思ったこともあるけど、どの店に行けばいいのか、可愛い女の子のお店に入るのが照れ臭くなってしまって、まあほとんど外出をすることもない学園生活を送ったりで、ここまできてしまった。
今日は要人の護衛なのだろう。正式な騎士服を着た凛々しい姿のアマンダが、冗談めかして「お手をどうぞ、お嬢様。」などといってくるので、イルゼもそれにのっかって、食堂まで腕を組んで歩いていった。
途中すれ違う騎士達が、次々と驚いて二度見してくるのが面白くて、2人の顔はずっと笑ったままだった。
入隊日から1か月、ずーっと寮と訓練場を行ったり来たりで、いくら食事が美味しいとはいえ、そろそろ外の空気も吸いたくなってきたところだ。
王宮の外には出られないが、訓練は休める待機日はあったので、体を休める事は出来ていたが、寮から出てはいけないというのは、イルゼにとって逆に辛かった(他の新兵は、ただひたすら死んだように寝ているので、ヒマを持て余す元気があるのはイルゼぐらいなのだが)。
生活と訓練に必要な物は最低限支給されるとはいえ、さすがにそろそろ自分で選んで買いたいものもある。
しかしこの休養日、いつの間にかユージーンと出かけることが決定していた。
「明日8時に門で。」
誘われてからかなりの日数が経っていたし、あれ以来話題にのぼらなかったので、なかったことになったのかなーと、都合よく考えていた。
しかし一緒に夕飯を食べ、さあそれぞれの寮に戻ろうとしたところで、ユージーンはそれだけ言ってさっさと男子寮の方へ行ってしまった。
「忘れてたのかと思ってた。」
「そんなワケないでしょ!騎士団の全員が覚えているわよ!」
「ええ!なんで!?」
アマンダの言葉に驚くイルゼ。
何でも何も、あの日食堂にいた全員が、2人の会話を聞いていたのだ。更に娯楽話に飢えている騎士団の、隅々まで噂が駆け巡るのは一瞬だった。
ちなみに入団以来、時間があえば必ずアマンダはイルゼを食事に誘ってきた。それのおかげで、イルゼは何とか欠かすことなく、ムリヤリでも食事をすることが出来たのだ。
本当に心から感謝している。
国民憧れのアマンダ相手に、最初の頃は緊張する余裕もなく、されるがままに面倒を見られていたイルゼだったが、少しだけ余裕が出てきた今でも、関係性は変わらない。
「困ったな。私はあまり、友人と出かけたことがないんだ。どうすれば良いか分からない。」
本当に困り切ったようにしょんぼりする後輩の姿に、アマンダの胸がキューンと鳴った。
「大丈夫よ!ユージーンが色々と考えてくれているわ。イルゼはなーんにも考えないで、気楽に楽しめばいいのよ。」
「でも、休養日に買っておきたいものもあるし、行きたい場所もあるのに・・・・。」
ユージーンがいるなら、勝手に好きな場所へ行けないかもしれないではないか。
「あら素敵。なら、ユージーンにそれを伝えれば良いのよ。一緒に行こうって。」
「ユージーンにも行きたい場所があったら?」
「そうね、新人の休養日は少ないから、ユージーンの行きたい場所も行けると良いわね。」
「時間が足りなかったら?」
「2人で相談しなさい!!」
実に頼もしい先輩である。
「・・・アマンダも付いて来てくれ。」
「私明日、任務あるから。」
任務がなければ、押せば付いて来てくれそうな勢いである。
「それじゃあおやすみなさいイルゼ。明日は楽しんでね。」
狭いが個室の寮は、大体騎士団ごとに区画が分かれている。
女子寮の第1騎士団の区画はガランとしていて寂しく、アマンダとはお隣同士である。
部屋が余りまくっているので、貴族隊員用(公式にはただの広めの間取りの部屋という事になっているが、貴族出身の騎士が入るのが暗黙の了解である)の部屋を使えている。
「お休み、アマンダ。いつもありがとう。」
*****
翌朝。
「あ、アマンダおはよう。今から朝食?」
身体に染み込んだ習慣で、ついいつもの時間に起きたイルゼは、食堂へ行こうとドアを開けた。
するとちょうど隣の部屋のアマンダも、ドアを開けたところだった。
「おはようイルゼ。いつも通り可愛いわね。」
カッコいいとは言われ慣れているが、イルゼを可愛い可愛い言ってくるのはアマンダくらいである。
剣技では負けないが、訓練の習熟度ではアマンダ先輩には程遠い。
アマンダにとっては、イルゼなんて可愛いものなのだろう。
「アマンダも、いつも通り綺麗だね。」
「うぐぅ!!」
ニコリと微笑んだイルゼを見て、胸を押さえて俯くアマンダ。
最初にアマンダのこの行動を見た時は病気か、喉が詰まったのかと驚いたが、聞けば「ときめいているだけだから大丈夫」とのことだ。
きっとアマンダなりの冗談なのだろう。意外とお茶目な一面もあるなーとイルゼは思っている。
「そ・・・そうそう。こんなことしている場合ではなかったわ。イルゼ、その格好、いつも通り可愛いのだけれど、まさかその格好のままで、今日出かけるのじゃないわよね?食堂に行くだけで、後で部屋に戻って着替えるのよね???」
「この格好で出かけるつもりだよ。少し時間が早いけど、ゆっくりお茶でも飲んで、そのまま出かけようと・・・・。」
ラフだが清潔感のある白いブラウスに、スラリと伸びた黒系の細身のズボン。
ブラウスにワンポイントの刺繍もあって、外出着としては申し分ないと思う
その証拠に、この格好で街へ出かけると、自分で言うのもなんだが大好評で、色んなところでオマケまでしてくれる。・・・・・・主にご婦人方からだが。
「・・・知ってた。知ってたわ。聞いてみただけ。」
良い笑顔を浮かべるアマンダ。
「それじゃ、お姉さんの部屋へいらっしゃい。」
常日頃からお世話になっている先輩の誘いを断ることなど、イルゼには出来なかった。
「うん!可愛い。」
部屋の中に入ると、有無を言わせずアマンダに、色々なスカートを代わる代わるあてられ、その中の一着を着るように言われた。
基本的に先輩騎士の指示には従う根っから体育会系のイルゼは、あっさりと着替えて見せた。
「イルゼって、毎日のように外で訓練しているのに、肌が白いわよね。何か対策をしているの?」
「少しだけ地魔法が使えるから、頑張って日よけだけは出来るようにしたんだ。そうしないと、赤く腫れて火傷のようになってしまうから。それしか出来ないけど。」
「まあ良いわね。」
魔法を使える者の数は少ないし、使える者も、まああれば便利という程度の能力の者がほとんどだ。
イルゼも、他人にでも日よけの魔法を掛けられるなら重宝されるだろうが、自分にしか掛けられないので、本当にあって便利というだけの能力だ。
魔術師団の、火・水・地・風のそれぞれの長ですら、頑張って自分の周囲数メートルにシールドを張ったり、自分よりも軽いものを浮かせる程度の力しかない。
余談だが、王妃様は魔術師団の現役の地の長だったりする。
王様がまだ王太子の頃、運命の相手を探す儀式に地魔法の長として参加して、そのまま自分が選ばれてしまったというのは、今でも国民の語り草だ。
「これで完璧!」
アマンダに促されて鏡を見てみる。
「可愛い・・・・。」
思わずつぶやくイルゼ。ブラウスはそのままなのに、下をフワリと広がる爽やかな空色のスカートに変えただけで、印象が全然違う。
「おしとやかなお嬢さんみたい。」
「そりゃあそこら辺の男に負けないくらい強いけれど、イルゼはとっても可愛いお嬢さんよ。うーん、体がキュッと引き締まっていて、下着で締め付ける必要一切なし!ウエスト細~い!」
「アマンダこそ、とってもスタイルが良くて。強いのに、女性らしくて、綺麗で、ずっとずっと憧れていたんだ。私は男みたいで・・・・。嬉しい、ありがとう。」
「ふふ、私も嬉しい。ありがとうイルゼ。」
子どもの頃、父が慣れない店で、頑張ってワンピースを買って来てくれたこともあった。
でも結局訓練には着れないし、普段も汚してはいけないと棚の奥にしまったまま、サイズアウトしてしまうのがほとんどだった。
そうこうしているうちに成長して、たまにはスカートを履いてみたいと思ったこともあるけど、どの店に行けばいいのか、可愛い女の子のお店に入るのが照れ臭くなってしまって、まあほとんど外出をすることもない学園生活を送ったりで、ここまできてしまった。
今日は要人の護衛なのだろう。正式な騎士服を着た凛々しい姿のアマンダが、冗談めかして「お手をどうぞ、お嬢様。」などといってくるので、イルゼもそれにのっかって、食堂まで腕を組んで歩いていった。
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