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父親が横領の罪で捕まらなかったIFバージョン
第5話 いいから黙ってくれ頼む!
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ローガンの後姿を見送ったイルゼとユージーン。
あまり時間がないのに、その場に立ち尽くしたままのイルゼを、ユージーンは急かせることはなかった。
「ユージーン。父はあんなことを言っていたが、気にしないでくれ。」
長い沈黙の後、イルゼがやっと発した言葉。
その内容を聞いて、予想通りだと思うと同時に、少し残念に思うユージーン。
――――まだ頼られるには、足りないか。
「俺が守りたいだけだ。求婚中の相手が守れないような、情けない男だと思わないで欲しい。」
そう言い募るユージーンに。
「・・・・私は、・・・・君の気持に応えられるか分からない。」
イルゼは自分の本心を吐露した。
気持ちに応えられないかもしれないのに、こんなに優しくされてしまっては困る。
「それでいい。俺のことが好きにならなくても。」
側にいて守りたいだけだから。
「ただもう少し、頼ってくれるようになったら、嬉しいけどな。」
それだけを言って、寮へと先に歩き始めた。
かなり距離が離れてからだったので、ユージーンには聞こえなかった。
―――――ずるいだろ。
消えそうに小さな声で呟かれた、その言葉が。
*****
「イルゼー。生きてる?」
「アマンダさん・・・・死んでます。」
寮の自室でピクリとも動けないイルゼ。入隊2日目のことだ。
1日目は午前中が入隊式だったし、新人だけでの、説明されながらの訓練だったので余裕だった。
『厳しいと聞いていたがこの程度か・・・。』と思ったくらいだった。
しかし、2日目にはもう、いきなり本隊に組み込まれて、フルタイムでの訓練だった。
「さすがにいきなりすぎませんか。慣れるための移行期間は・・・・・。」
「新人はそう思うよねー。これでも一応、新人がいるから軽めなのよ。ベテラン騎士は、毎年この時期は、新人がいるから訓練が楽だーって楽しみにしている。」
「そんなぁ。」
騎士学校の首席がこの有様なので、他の新人は無残なものだった。
次々と倒れるか、倒れる前に部隊長のストップが掛けられて脱落していく中、最後まで立っていられたのはイルゼとユージーンだけだった。
といってもイルゼは根性でなんとか立っていただけで、全ての行程をこなすことはできなかった。
ユージーンは遅れながらも、全ての訓練に付いていっていた。
体力面ではやはり敵わない。悔しい。
「ほらほら。夕飯食べに行くよ。」
「・・・・・・無理。」
憧れのアマンダが目の前にいるが、はしゃぐ気力など微塵もない。
話すのもキツイので、自然と言葉が砕けてしまっている。
「と、思うでしょう?でも食べないと死ぬから。毎年この時期食べられなくて、食べないから増々訓練に付いていけなくて、すーぐ退団しちゃうのが何人もいるのよ。だから第1騎士団は多めに配属されるくらいなの。・・・良いの?すぐに退団しちゃって。」
「困ります。」
「でしょー?ほら、這ってでも行くわよ!」
アマンダに、グッとわきの下に手を入れられ、荷物の様に起こされる。
綺麗な女性なのに、やはり第1騎士団所属は伊達ではない。
「ううッ、痛い~キツイ~つらい~、でもアマンダさんと話せて嬉しい~。」
「あはは!なにそれ、私も嬉しい!」
アマンダに運ばれていくのは恥ずかしいので、さすがに一歩部屋を出たら、気合と根性で自立する。
普通に歩くだけが辛い。
食堂は、男子寮と女子寮の中心に建っていた。
食事は男女混合だ。
「ほら。取ってきてあげるから、座ってなさい。」
「うう、ありがとうございます・・・・。」
憧れのアマンダに食事を取りに行かせるなど、騎士の名折れ。
絶対に、絶対に、すぐに訓練に慣れて、今度はアマンダさんの食事を私が取りに行くんだと、イルゼは心に誓った。
「お、アマンダ。ついに第1に女性騎士第2号が入ったのか。」
「そうなの。もう可愛くて可愛くて。」
テーブルの間を歩くアマンダに、次々と声が掛かる。
「まあどうせすぐ辞めるだろ。」
「あら、せっかく入った女の子の後輩だもの。本人が辞めたいって言ったって辞めさせないわよ~ふふふ~。」
「おお怖っ!」
そんな会話がされていたことを、イルゼは知らない。
「適当に、食べやすいものを取ってきたわよ。」
「ありがとうございます。アマンダ様。」
「様って・・・。アマンダでいいわよ。」
「天使・・・。」
一見混んでいるように見えるのに、慣れているのかアマンダはすぐに食事を持って帰ってきた。
さっきまでは全く食べられる気がしなかったが、目の前に美味しそうな匂いをさせる食べやすそうなスープが置かれ、お腹がキューっと鳴った。
「美味しそう。」
「食べ物が身体を作るからね。騎士団の食事は美味しいわよ。」
国家防衛の要である騎士団と魔術師団には、投資は惜しまないのが国家の方針らしい。ありがたい。
「イルゼ、大丈夫か?顔色が悪い。」
そこへ、トレイに食事を載せたユージーンがやってきた。自力で食事を取りに行く元気があるとは、ちょっとかなり悔しい。
ユージーンは特に断りもなく、ストンとイルゼとアマンダのいる4人掛けのテーブルに座った。
食堂のテーブルは誰がどこに座っても自由だ。混んでいるし、相席にイチイチ許可を取る者などいない。
だがなんとなく、ユージーンが座った瞬間、周囲の空気が変わった気がする。
先ほどまで思い思いの会話でざわついていたのに、妙に静かになったような。
アマンダには、その理由が、数少ない女性隊員であるアマンダとイルゼのテーブルの残りの椅子を巡って、水面下で駆け引きが行われていたところを、新人があっさり座ってしまったからだと気づいた。
上官に譲るべきか・・・・いや、気にしないでさっさと座ってしまおう。おい待て、俺が行くから・・・・。
そんな牽制が繰り広げられていたところだったのだ。
ちなみに騎士学校時代もそんな感じでイルゼは遠巻きにされていたのだが、卒業を機にユージーンが思い切った形だ。
「食べられそうか?」
「・・・・なんとか。ユージーンは余裕だな。」
「さすがに体力では負けない。」
おい、誰だあいつ。
騎士学校2位の侯爵家の第1騎士団の新人だよ。
ぐうっ。くそっ、イケメン死ね。
―――――そんな会話があったとか、なかったとか。
「アマンダ、楽しそうだな。」
アマンダが新人たちの初々しい会話と、周囲の面白い会話に耳を澄ましてニヤニヤしていたところだった。
目の前の、最後の空いた席に、また食事を載せたトレイが置かれた。
「だ、団長!!」
さすがのアマンダも驚く。
ククッと笑いながら現れたのはなんと、騎士団全員の憧れの的、第1騎士団長のカミュである。
普通ならカミュが食堂に現れたら、全員がすぐに気が付いて、視線が集中する。しかし今日は全員がこのテーブルに注目していたものだから、食事を選んでここにくるまで、誰からも放っておかれるという面白い体験を、カミュはしていた。
ぐはぁ!!残り1席をカミュ団長が・・・。
勝てない・・・あれは勝てない。
「ふははっ。面白い事になっているな。」
「そうでしょう?」
周囲の雑音を気にする余裕などないイルゼは、カミュの言葉にキョトンとする。
ユージーンは聞こえていただろうに、涼しい顔で黙々と食事をしている。
「お前たち、入団式で俺の事をすごい目で見ていただろう。」
ええ、見てました。
心の中だけで返事をして、イルゼは曖昧な笑顔でごまかした。
上官を睨みつけていたとは、バレバレであっても、認める訳にはいかない。
「いいな。すごく良い。騎士団だから、当然指示に対して瞬時に行動しないといけないので、言う事全てに疑問を持たずに従ってもらわないと困るんだが・・・・。」
カミュも、二人の返事を待つでもなく、軽い世間話のように先を続ける。
「それでは、俺が指示を間違えた時、全滅してしまう。お前らみたいな、俺を越えてやるって思っている奴らも必要だ。」
「そんな。団長が指示を間違えることなんて、ありませんよ。」
「そんな訳ないだろう。俺だって人間だぞ?」
アマンダの言葉に、なんてことのないように答えるカミュ。
これほどの人でも、ミスを認めるのか。
カミュの言葉に、イルゼは逆に、越えるべき隊長の壁が思っていたよりも高く、厚いものであることを感じた。
「お前たち。俺がもし判断を誤った時や、重大な局面で俺がいない時、自分を信じて動けよ。」
「はい。」
イルゼとユージーンは士官候補だ。それを見据えてのアドバイスだろう。
なんてことない、ただの食事中の会話のようだが、きっと、これは心に刻む必要がある。
イルゼはスープを飲む手を止めて、カミュの目を見て頷いた。
「ところでイルゼ。」
「うん?なんだユージーン。」
カミュの話が終わると同時に、これまで妙に大人しく、黙々と食事をしていたユージーンが口を開いた。
「次の休養日に、一緒に出掛けないか?」
「・・・・・・・・うん?」
「良ければ次の休養日に、二人で一緒に・・・。」
「分かった大丈夫、言い直さなくていい。」
今か!?それ今言う必要あるのか!!?
一応ユージーンにも、カミュのありがたい言葉の直後にこんなことを言い出すには理由があった。
さっそく出されたシフトを見て、今度の休養日がイルゼと重なっている事に気が付き、他の用事が入らないうちにイルゼに声を掛けるぞ!と決心してこの食堂にやってきたのだ。
そして幸いなことにイルゼと同じテーブルにつけ、よし、言うぞ!言うんだ!とドキドキしながら食事をしていたのだ。
正直言ってカミュの話の内容は、聞いてはいたがそれどころではなかった。
よし、カミュの話が終わった!今だ!
と、切り出したのが今だ。
「良かった大丈夫なのか。二人で一緒にでかけ・・・・。」
「良いから!良いから黙ってくれ頼む!!!」
「良いのか。」
「ヤダこの子達さいこー!!!」
カミュとアマンダが爆笑する中、しばらく噛み合わない会話を続ける二人だった。
あまり時間がないのに、その場に立ち尽くしたままのイルゼを、ユージーンは急かせることはなかった。
「ユージーン。父はあんなことを言っていたが、気にしないでくれ。」
長い沈黙の後、イルゼがやっと発した言葉。
その内容を聞いて、予想通りだと思うと同時に、少し残念に思うユージーン。
――――まだ頼られるには、足りないか。
「俺が守りたいだけだ。求婚中の相手が守れないような、情けない男だと思わないで欲しい。」
そう言い募るユージーンに。
「・・・・私は、・・・・君の気持に応えられるか分からない。」
イルゼは自分の本心を吐露した。
気持ちに応えられないかもしれないのに、こんなに優しくされてしまっては困る。
「それでいい。俺のことが好きにならなくても。」
側にいて守りたいだけだから。
「ただもう少し、頼ってくれるようになったら、嬉しいけどな。」
それだけを言って、寮へと先に歩き始めた。
かなり距離が離れてからだったので、ユージーンには聞こえなかった。
―――――ずるいだろ。
消えそうに小さな声で呟かれた、その言葉が。
*****
「イルゼー。生きてる?」
「アマンダさん・・・・死んでます。」
寮の自室でピクリとも動けないイルゼ。入隊2日目のことだ。
1日目は午前中が入隊式だったし、新人だけでの、説明されながらの訓練だったので余裕だった。
『厳しいと聞いていたがこの程度か・・・。』と思ったくらいだった。
しかし、2日目にはもう、いきなり本隊に組み込まれて、フルタイムでの訓練だった。
「さすがにいきなりすぎませんか。慣れるための移行期間は・・・・・。」
「新人はそう思うよねー。これでも一応、新人がいるから軽めなのよ。ベテラン騎士は、毎年この時期は、新人がいるから訓練が楽だーって楽しみにしている。」
「そんなぁ。」
騎士学校の首席がこの有様なので、他の新人は無残なものだった。
次々と倒れるか、倒れる前に部隊長のストップが掛けられて脱落していく中、最後まで立っていられたのはイルゼとユージーンだけだった。
といってもイルゼは根性でなんとか立っていただけで、全ての行程をこなすことはできなかった。
ユージーンは遅れながらも、全ての訓練に付いていっていた。
体力面ではやはり敵わない。悔しい。
「ほらほら。夕飯食べに行くよ。」
「・・・・・・無理。」
憧れのアマンダが目の前にいるが、はしゃぐ気力など微塵もない。
話すのもキツイので、自然と言葉が砕けてしまっている。
「と、思うでしょう?でも食べないと死ぬから。毎年この時期食べられなくて、食べないから増々訓練に付いていけなくて、すーぐ退団しちゃうのが何人もいるのよ。だから第1騎士団は多めに配属されるくらいなの。・・・良いの?すぐに退団しちゃって。」
「困ります。」
「でしょー?ほら、這ってでも行くわよ!」
アマンダに、グッとわきの下に手を入れられ、荷物の様に起こされる。
綺麗な女性なのに、やはり第1騎士団所属は伊達ではない。
「ううッ、痛い~キツイ~つらい~、でもアマンダさんと話せて嬉しい~。」
「あはは!なにそれ、私も嬉しい!」
アマンダに運ばれていくのは恥ずかしいので、さすがに一歩部屋を出たら、気合と根性で自立する。
普通に歩くだけが辛い。
食堂は、男子寮と女子寮の中心に建っていた。
食事は男女混合だ。
「ほら。取ってきてあげるから、座ってなさい。」
「うう、ありがとうございます・・・・。」
憧れのアマンダに食事を取りに行かせるなど、騎士の名折れ。
絶対に、絶対に、すぐに訓練に慣れて、今度はアマンダさんの食事を私が取りに行くんだと、イルゼは心に誓った。
「お、アマンダ。ついに第1に女性騎士第2号が入ったのか。」
「そうなの。もう可愛くて可愛くて。」
テーブルの間を歩くアマンダに、次々と声が掛かる。
「まあどうせすぐ辞めるだろ。」
「あら、せっかく入った女の子の後輩だもの。本人が辞めたいって言ったって辞めさせないわよ~ふふふ~。」
「おお怖っ!」
そんな会話がされていたことを、イルゼは知らない。
「適当に、食べやすいものを取ってきたわよ。」
「ありがとうございます。アマンダ様。」
「様って・・・。アマンダでいいわよ。」
「天使・・・。」
一見混んでいるように見えるのに、慣れているのかアマンダはすぐに食事を持って帰ってきた。
さっきまでは全く食べられる気がしなかったが、目の前に美味しそうな匂いをさせる食べやすそうなスープが置かれ、お腹がキューっと鳴った。
「美味しそう。」
「食べ物が身体を作るからね。騎士団の食事は美味しいわよ。」
国家防衛の要である騎士団と魔術師団には、投資は惜しまないのが国家の方針らしい。ありがたい。
「イルゼ、大丈夫か?顔色が悪い。」
そこへ、トレイに食事を載せたユージーンがやってきた。自力で食事を取りに行く元気があるとは、ちょっとかなり悔しい。
ユージーンは特に断りもなく、ストンとイルゼとアマンダのいる4人掛けのテーブルに座った。
食堂のテーブルは誰がどこに座っても自由だ。混んでいるし、相席にイチイチ許可を取る者などいない。
だがなんとなく、ユージーンが座った瞬間、周囲の空気が変わった気がする。
先ほどまで思い思いの会話でざわついていたのに、妙に静かになったような。
アマンダには、その理由が、数少ない女性隊員であるアマンダとイルゼのテーブルの残りの椅子を巡って、水面下で駆け引きが行われていたところを、新人があっさり座ってしまったからだと気づいた。
上官に譲るべきか・・・・いや、気にしないでさっさと座ってしまおう。おい待て、俺が行くから・・・・。
そんな牽制が繰り広げられていたところだったのだ。
ちなみに騎士学校時代もそんな感じでイルゼは遠巻きにされていたのだが、卒業を機にユージーンが思い切った形だ。
「食べられそうか?」
「・・・・なんとか。ユージーンは余裕だな。」
「さすがに体力では負けない。」
おい、誰だあいつ。
騎士学校2位の侯爵家の第1騎士団の新人だよ。
ぐうっ。くそっ、イケメン死ね。
―――――そんな会話があったとか、なかったとか。
「アマンダ、楽しそうだな。」
アマンダが新人たちの初々しい会話と、周囲の面白い会話に耳を澄ましてニヤニヤしていたところだった。
目の前の、最後の空いた席に、また食事を載せたトレイが置かれた。
「だ、団長!!」
さすがのアマンダも驚く。
ククッと笑いながら現れたのはなんと、騎士団全員の憧れの的、第1騎士団長のカミュである。
普通ならカミュが食堂に現れたら、全員がすぐに気が付いて、視線が集中する。しかし今日は全員がこのテーブルに注目していたものだから、食事を選んでここにくるまで、誰からも放っておかれるという面白い体験を、カミュはしていた。
ぐはぁ!!残り1席をカミュ団長が・・・。
勝てない・・・あれは勝てない。
「ふははっ。面白い事になっているな。」
「そうでしょう?」
周囲の雑音を気にする余裕などないイルゼは、カミュの言葉にキョトンとする。
ユージーンは聞こえていただろうに、涼しい顔で黙々と食事をしている。
「お前たち、入団式で俺の事をすごい目で見ていただろう。」
ええ、見てました。
心の中だけで返事をして、イルゼは曖昧な笑顔でごまかした。
上官を睨みつけていたとは、バレバレであっても、認める訳にはいかない。
「いいな。すごく良い。騎士団だから、当然指示に対して瞬時に行動しないといけないので、言う事全てに疑問を持たずに従ってもらわないと困るんだが・・・・。」
カミュも、二人の返事を待つでもなく、軽い世間話のように先を続ける。
「それでは、俺が指示を間違えた時、全滅してしまう。お前らみたいな、俺を越えてやるって思っている奴らも必要だ。」
「そんな。団長が指示を間違えることなんて、ありませんよ。」
「そんな訳ないだろう。俺だって人間だぞ?」
アマンダの言葉に、なんてことのないように答えるカミュ。
これほどの人でも、ミスを認めるのか。
カミュの言葉に、イルゼは逆に、越えるべき隊長の壁が思っていたよりも高く、厚いものであることを感じた。
「お前たち。俺がもし判断を誤った時や、重大な局面で俺がいない時、自分を信じて動けよ。」
「はい。」
イルゼとユージーンは士官候補だ。それを見据えてのアドバイスだろう。
なんてことない、ただの食事中の会話のようだが、きっと、これは心に刻む必要がある。
イルゼはスープを飲む手を止めて、カミュの目を見て頷いた。
「ところでイルゼ。」
「うん?なんだユージーン。」
カミュの話が終わると同時に、これまで妙に大人しく、黙々と食事をしていたユージーンが口を開いた。
「次の休養日に、一緒に出掛けないか?」
「・・・・・・・・うん?」
「良ければ次の休養日に、二人で一緒に・・・。」
「分かった大丈夫、言い直さなくていい。」
今か!?それ今言う必要あるのか!!?
一応ユージーンにも、カミュのありがたい言葉の直後にこんなことを言い出すには理由があった。
さっそく出されたシフトを見て、今度の休養日がイルゼと重なっている事に気が付き、他の用事が入らないうちにイルゼに声を掛けるぞ!と決心してこの食堂にやってきたのだ。
そして幸いなことにイルゼと同じテーブルにつけ、よし、言うぞ!言うんだ!とドキドキしながら食事をしていたのだ。
正直言ってカミュの話の内容は、聞いてはいたがそれどころではなかった。
よし、カミュの話が終わった!今だ!
と、切り出したのが今だ。
「良かった大丈夫なのか。二人で一緒にでかけ・・・・。」
「良いから!良いから黙ってくれ頼む!!!」
「良いのか。」
「ヤダこの子達さいこー!!!」
カミュとアマンダが爆笑する中、しばらく噛み合わない会話を続ける二人だった。
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