4 / 5
4.発言が濃すぎます
しおりを挟む
「おお、これは聖女様。一週間ぶりかな、元気にしておいでか」
「お久しぶりです、国王陛下。未だ、聖女と呼んで下さって、有難うございます」
書物机で書き物をしていた国王陛下は、わざわざ立ち上がって、私を書斎に迎え入れてくれた。
いつもにこにこと、笑みを絶やさない王様だ。優しげではあるが、突然、私に王子二人を選ばせたりしてくるし、考えていることがあまり読めない。
嫌味を言いながらつきまとってくるオルセア様の考えも読めないし、婚約者だった第一王子はそもそも何も考えてなさそうにぼんやりしていたし、私の周りには、何を考えているか分からない連中ばかりだ。
そんな連中に囲まれて生きた三年間で、私は一つのことを学んでいた。
どうせ他人の考えなど読めない。だから、読もうなどと空回りせず、何はともあれ自分の言いたいことを言っておくべきなのである。
「今日は、オルセア様について、陛下にお尋ねしたいことがありまして」
「オルセアか。そういえば、今日は一緒に登城しなかったのかね? 今では聖女様の従者なのだから、付き従ってくるかと思ったが」
「家に置いてきました。今日は足腰立たないと思いますので」
「……聖女様、オルセアに一体何を?」
「回復魔法をかけただけです」
「回復魔法をかけたら、足腰立たなくなったのか?」
「そうなんです」
国王陛下が首をひねっているが、私にも分からない。理由が分かるなら、誰か教えて欲しいものだ。
「それはそれとして。陛下、私はなぜ、オルセア様が私につきまとい……いえ、従者として仕えることになったのか、その理由が知りたいのです」
「理由? もちろん、オルセアが望んだからに決まっている」
やっぱりそうなのか。私は内心、溜息をつく。
「王子が望めば、一介の庶民の従者になってもいいのでしょうか? そんなに簡単なものだとは思えないのですが」
「当然、普通はありえないことなんだけどもね。オルセアはいろいろ拗らせすぎていて、聖女様が手の届かないところに行ってしまったら自害しそうだったから」
「そこまで……だったんですか」
「嬉しくなさそうだね」
「好きな子にかえって悪戯する、周りがそれを微笑ましく見守る、とかいう構図が大嫌いなんです。嫌がらせは嫌がらせです。しかも、オルセア様は、私より七歳も年上じゃないですか。大の大人がそんなことを」
「あれは病気のようなものでね。五歳のときから罹患していたんだが、聖女様に会って、いきなり悪化したんだよ」
「……五歳児のころから、好きな相手に嫌がらせを?」
完全にどん引きした目で尋ねると、「違う違う」と王様が手を振った。
「オルセアが五歳のとき、可愛がっていた猫がいてね。あまりに好き過ぎて、毎日餌を手ずからブレンドし、駆け上がれる木を用意し、離れたくないばかりに王宮から一歩も出ないほどだった」
「はあ」
「ところが、その猫が突然死んでしまってね……そのときのオルセアの目と言ったら、この世の絶望全てを煮詰めたみたいにどんよりしていたよ。『どんなに愛していても、こうして死に別れてしまうのですね。とうさま、僕はもう、こんな別れには耐えられません』とか言って」
「は、はあ」
私は何を聞かされているんだ。
可愛い盛りの五歳児の思い出がこれとか、改めてオルセア王子がおかしすぎて震撼するしかない。
そんな私の心境はさておき、陛下は遠い目のままで続けた。
「それ以来、好きな相手ほど距離を置こうとするようになってね。特に親切だった侍女には嫁ぎ先を探して出て行かせるし、母親には一年に一回しか会わない。むしろ、苦手な相手ほど周囲に置くようになって、それはそれで、逆にいい結果となった。なにしろ、嫌いな相手からのおべっかに乗せられて高慢になる心配はないし、苦手な人材を上手く扱えてこその統治者だからね。だから、聖女様に会うまでは、冷静で公正な王子として名高かったんだが」
国王陛下が、ふうっと溜息をつく。
「一度、私にも相談に来たことがあってね。今、君が立っているその場所に立って、絶望のあまり真っ青な顔をしていたな。ええと、その日の記録があるはずだが」
私が見ていると、書物机の上に積み重なったノートをぺらぺらとめくり始めた。
そっと表紙を盗み見ると、「国王日記:vol.259」と書いてある。巻数が多いな。
「そうそう、これだ。聖女様が現れて、一月ばかり経った頃だ。あまりに発言が濃か……興味深かったので、書き留めておいたんだ。読んでいいかね」
訊ねておいて、私の返事を聞きもせず、王様はちょっと高めの声音を作って読み始める。
……いや、おかしい。オルセア王子の声はむしろ、かなり重たい低音だ。おかしいところは他にも沢山あるけど、状況は私に突っ込むことを許してくれない。
『父上。俺は正気を失いそうです。俺の評判全てを地に落としてもいい、いっそ命を引き換えにしてでも、と願っているのに、自分の口が発する言葉ひとつ、自由にすることが出来ないのです。あの天使のような姿を見るたび、跪いて、全てをお捧げすることをお許し下さい、と言おうと試みるのですが、なぜか俺の口から洩れるのは、つじつまも合わない憎まれ口ばかりで、』
「あー、国王陛下! 一度止めてもらってもいいでしょうか」
それ以上聞いていられず、私は全力で遮った。
「おや、ここは絆されるところでは?」
それ以前の問題だ。私は眉間に深く皺を刻んだ。
「濃すぎます。あまりに濃すぎて、ちょっと寒気がしました」
「だけど、聖女様に会って以来、オルセアはもうずっとこんな調子なんだよ」
三年間も?
「重すぎる……」
溜息をつく私を、面白そうに見やると、国王陛下は首を傾げた。
「それで、どうかな、聖女様? オルセアに救いはあるのかな?」
「今の気持ちを、正直に申し上げて宜しいですか?」
「ああ」
「拾った犬の犬種を間違えていたような気分です」
一国の王子を形容するような言葉ではないけれど、このぐらい言ってしまっても許されるだろう。
「拾った場所に戻してきたいけど、迂闊に捨てるのもまずい、というか……」
「捨てるも拾うも、聖女様のお心次第で構わないよ。オルセアが腑抜けて帰ってきたら、城中で散々笑いものにしてやろう」
酷い。何という容赦の無さなんだ。
私も、オルセア王子が例えば泥沼に嵌って抜けられなくなっていたとしたら、指差して笑ってやりたいぐらいの悪意は持ち合わせているが、その後は何だかんだ言って助けてしまいそうな気がする。見捨てるのは気が咎める。それに、完全に叩きのめすのは良くない。今後、王子が再び失敗したときに、私が真っ先に笑ってやるだけの余地は残しておきたいのである。
「うーん、これもある意味、情というやつなんですかねえ」
「なんだか不穏な空気を感じるけれど、オルセアの冥福を祈っておくとするかね」
「だから、殺ったりしませんて」
つっついて笑ったりはするつもりだけれど。
「お久しぶりです、国王陛下。未だ、聖女と呼んで下さって、有難うございます」
書物机で書き物をしていた国王陛下は、わざわざ立ち上がって、私を書斎に迎え入れてくれた。
いつもにこにこと、笑みを絶やさない王様だ。優しげではあるが、突然、私に王子二人を選ばせたりしてくるし、考えていることがあまり読めない。
嫌味を言いながらつきまとってくるオルセア様の考えも読めないし、婚約者だった第一王子はそもそも何も考えてなさそうにぼんやりしていたし、私の周りには、何を考えているか分からない連中ばかりだ。
そんな連中に囲まれて生きた三年間で、私は一つのことを学んでいた。
どうせ他人の考えなど読めない。だから、読もうなどと空回りせず、何はともあれ自分の言いたいことを言っておくべきなのである。
「今日は、オルセア様について、陛下にお尋ねしたいことがありまして」
「オルセアか。そういえば、今日は一緒に登城しなかったのかね? 今では聖女様の従者なのだから、付き従ってくるかと思ったが」
「家に置いてきました。今日は足腰立たないと思いますので」
「……聖女様、オルセアに一体何を?」
「回復魔法をかけただけです」
「回復魔法をかけたら、足腰立たなくなったのか?」
「そうなんです」
国王陛下が首をひねっているが、私にも分からない。理由が分かるなら、誰か教えて欲しいものだ。
「それはそれとして。陛下、私はなぜ、オルセア様が私につきまとい……いえ、従者として仕えることになったのか、その理由が知りたいのです」
「理由? もちろん、オルセアが望んだからに決まっている」
やっぱりそうなのか。私は内心、溜息をつく。
「王子が望めば、一介の庶民の従者になってもいいのでしょうか? そんなに簡単なものだとは思えないのですが」
「当然、普通はありえないことなんだけどもね。オルセアはいろいろ拗らせすぎていて、聖女様が手の届かないところに行ってしまったら自害しそうだったから」
「そこまで……だったんですか」
「嬉しくなさそうだね」
「好きな子にかえって悪戯する、周りがそれを微笑ましく見守る、とかいう構図が大嫌いなんです。嫌がらせは嫌がらせです。しかも、オルセア様は、私より七歳も年上じゃないですか。大の大人がそんなことを」
「あれは病気のようなものでね。五歳のときから罹患していたんだが、聖女様に会って、いきなり悪化したんだよ」
「……五歳児のころから、好きな相手に嫌がらせを?」
完全にどん引きした目で尋ねると、「違う違う」と王様が手を振った。
「オルセアが五歳のとき、可愛がっていた猫がいてね。あまりに好き過ぎて、毎日餌を手ずからブレンドし、駆け上がれる木を用意し、離れたくないばかりに王宮から一歩も出ないほどだった」
「はあ」
「ところが、その猫が突然死んでしまってね……そのときのオルセアの目と言ったら、この世の絶望全てを煮詰めたみたいにどんよりしていたよ。『どんなに愛していても、こうして死に別れてしまうのですね。とうさま、僕はもう、こんな別れには耐えられません』とか言って」
「は、はあ」
私は何を聞かされているんだ。
可愛い盛りの五歳児の思い出がこれとか、改めてオルセア王子がおかしすぎて震撼するしかない。
そんな私の心境はさておき、陛下は遠い目のままで続けた。
「それ以来、好きな相手ほど距離を置こうとするようになってね。特に親切だった侍女には嫁ぎ先を探して出て行かせるし、母親には一年に一回しか会わない。むしろ、苦手な相手ほど周囲に置くようになって、それはそれで、逆にいい結果となった。なにしろ、嫌いな相手からのおべっかに乗せられて高慢になる心配はないし、苦手な人材を上手く扱えてこその統治者だからね。だから、聖女様に会うまでは、冷静で公正な王子として名高かったんだが」
国王陛下が、ふうっと溜息をつく。
「一度、私にも相談に来たことがあってね。今、君が立っているその場所に立って、絶望のあまり真っ青な顔をしていたな。ええと、その日の記録があるはずだが」
私が見ていると、書物机の上に積み重なったノートをぺらぺらとめくり始めた。
そっと表紙を盗み見ると、「国王日記:vol.259」と書いてある。巻数が多いな。
「そうそう、これだ。聖女様が現れて、一月ばかり経った頃だ。あまりに発言が濃か……興味深かったので、書き留めておいたんだ。読んでいいかね」
訊ねておいて、私の返事を聞きもせず、王様はちょっと高めの声音を作って読み始める。
……いや、おかしい。オルセア王子の声はむしろ、かなり重たい低音だ。おかしいところは他にも沢山あるけど、状況は私に突っ込むことを許してくれない。
『父上。俺は正気を失いそうです。俺の評判全てを地に落としてもいい、いっそ命を引き換えにしてでも、と願っているのに、自分の口が発する言葉ひとつ、自由にすることが出来ないのです。あの天使のような姿を見るたび、跪いて、全てをお捧げすることをお許し下さい、と言おうと試みるのですが、なぜか俺の口から洩れるのは、つじつまも合わない憎まれ口ばかりで、』
「あー、国王陛下! 一度止めてもらってもいいでしょうか」
それ以上聞いていられず、私は全力で遮った。
「おや、ここは絆されるところでは?」
それ以前の問題だ。私は眉間に深く皺を刻んだ。
「濃すぎます。あまりに濃すぎて、ちょっと寒気がしました」
「だけど、聖女様に会って以来、オルセアはもうずっとこんな調子なんだよ」
三年間も?
「重すぎる……」
溜息をつく私を、面白そうに見やると、国王陛下は首を傾げた。
「それで、どうかな、聖女様? オルセアに救いはあるのかな?」
「今の気持ちを、正直に申し上げて宜しいですか?」
「ああ」
「拾った犬の犬種を間違えていたような気分です」
一国の王子を形容するような言葉ではないけれど、このぐらい言ってしまっても許されるだろう。
「拾った場所に戻してきたいけど、迂闊に捨てるのもまずい、というか……」
「捨てるも拾うも、聖女様のお心次第で構わないよ。オルセアが腑抜けて帰ってきたら、城中で散々笑いものにしてやろう」
酷い。何という容赦の無さなんだ。
私も、オルセア王子が例えば泥沼に嵌って抜けられなくなっていたとしたら、指差して笑ってやりたいぐらいの悪意は持ち合わせているが、その後は何だかんだ言って助けてしまいそうな気がする。見捨てるのは気が咎める。それに、完全に叩きのめすのは良くない。今後、王子が再び失敗したときに、私が真っ先に笑ってやるだけの余地は残しておきたいのである。
「うーん、これもある意味、情というやつなんですかねえ」
「なんだか不穏な空気を感じるけれど、オルセアの冥福を祈っておくとするかね」
「だから、殺ったりしませんて」
つっついて笑ったりはするつもりだけれど。
25
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
醜い私を救ってくれたのはモフモフでした ~聖女の結界が消えたと、婚約破棄した公爵が後悔してももう遅い。私は他国で王子から溺愛されます~
上下左右
恋愛
聖女クレアは泣きボクロのせいで、婚約者の公爵から醜女扱いされていた。だが彼女には唯一の心の支えがいた。愛犬のハクである。
だがある日、ハクが公爵に殺されてしまう。そんな彼女に追い打ちをかけるように、「醜い貴様との婚約を破棄する」と宣言され、新しい婚約者としてサーシャを紹介される。
サーシャはクレアと同じく異世界からの転生者で、この世界が乙女ゲームだと知っていた。ゲームの知識を利用して、悪役令嬢となるはずだったクレアから聖女の立場を奪いに来たのである。
絶望するクレアだったが、彼女の前にハクの生まれ変わりを名乗る他国の王子が現れる。そこからハクに溺愛される日々を過ごすのだった。
一方、クレアを失った王国は結界の力を失い、魔物の被害にあう。その責任を追求され、公爵はクレアを失ったことを後悔するのだった。
本物語は、不幸な聖女が、前世の知識で逆転劇を果たし、モフモフ王子から溺愛されながらハッピーエンドを迎えるまでの物語である。
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
身代わりで生贄となりましたが、なぜか聖女になってしまいました。美味しく食べられることが最終目標なので、聖女認定は謹んでお断りします!
石河 翠
恋愛
領主の娘の身代わりとして、生贄になることが決まった主人公。彼女は生贄としてして捧げられるまでの期日を、想いを寄せる教会の神父の元で暮らすことになる。
好きなひとのために役立ちたいと考えたことが修行と判断され、うっかり聖女の力に目覚める主人公。聖女の認定を受ければ、生贄から逃れられるだけでなく、王族との結婚も夢でないと言われるが、神父の隣にいられないならどうでもいいと彼女は聖女の力に目覚めたことをふたりだけの秘密にしてほしいとお願いする。
そして、儀式の当日。降臨した神さまは、彼女に思わぬことを申し出て……。
不幸な生い立ちのせいで初恋をこじらせた主人公と、呪いのせいでいろいろと大事なことを伝えられない執着心たっぷりな神父さまのお話。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
【完結】元強面騎士団長様は可愛いものがお好き〜虐げられた元聖女は、お腹と心が満たされて幸せになる〜
水都 ミナト
恋愛
女神の祝福を受けた聖女が尊ばれるサミュリア王国で、癒しの力を失った『元』聖女のミラベル。
『現』聖女である実妹のトロメアをはじめとして、家族から冷遇されて生きてきた。
すっかり痩せ細り、空腹が常となったミラベルは、ある日とうとう国外追放されてしまう。
隣国で力尽き果て倒れた時、助けてくれたのは――フリルとハートがたくさんついたラブリーピンクなエプロンをつけた筋骨隆々の男性!?
そんな元強面騎士団長のアインスロッドは、魔物の呪い蝕まれ余命一年だという。残りの人生を大好きな可愛いものと甘いものに捧げるのだと言うアインスロッドに救われたミラベルは、彼の夢の手伝いをすることとなる。
認めとくれる人、温かい居場所を見つけたミラベルは、お腹も心も幸せに満ちていく。
そんなミラベルが飾り付けをしたお菓子を食べた常連客たちが、こぞってとあることを口にするようになる。
「『アインスロッド洋菓子店』のお菓子を食べるようになってから、すこぶる体調がいい」と。
一方その頃、ミラベルを追いやった実妹のトロメアからは、女神の力が失われつつあった。
◇全15話、5万字弱のお話です
◇他サイトにも掲載予定です
その断罪、三ヶ月後じゃダメですか?
荒瀬ヤヒロ
恋愛
ダメですか。
突然覚えのない罪をなすりつけられたアレクサンドルは兄と弟ともに深い溜め息を吐く。
「あと、三ヶ月だったのに…」
*「小説家になろう」にも掲載しています。
おいしいご飯をいただいたので~虐げられて育ったわたしですが魔法使いの番に選ばれ大切にされています~
通木遼平
恋愛
この国には魔法使いと呼ばれる種族がいる。この世界にある魔力を糧に生きる彼らは魔力と魔法以外には基本的に無関心だが、特別な魔力を持つ人間が傍にいるとより強い力を得ることができるため、特に相性のいい相手を番として迎え共に暮らしていた。
家族から虐げられて育ったシルファはそんな魔法使いの番に選ばれたことで魔法使いルガディアークと穏やかでしあわせな日々を送っていた。ところがある日、二人の元に魔法使いと番の交流を目的とした夜会の招待状が届き……。
※他のサイトにも掲載しています
聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?
水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。
理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。
本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。
無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。
そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。
セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。
幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。
こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。
そして、ある日突然セレナからこう言われた。
「あー、あんた、もうクビにするから」
「え?」
「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」
「いえ、全くわかりませんけど……」
「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」
「いえ、してないんですけど……」
「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」
「……わかりました」
オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。
その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。
「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」
セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。
しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。
(馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる