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乱される 21
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ミネラルウォーターを和泉に手渡すと「サンキュ」と直ぐに口をつけた。
少し離れて雪成がベッドへ腰を掛けると、それを目敏く和泉は気づいて不満そうな顔をする。
「なんで離れて座るんだ」
そう言って雪成の腰に手を回した和泉は、自ら寄ってきた。
「いや、逆になんでそんなにくっ付くんだよ。おかしいだろうが」
「お前に触れてると、触れているところが熱くなるのに、なんか妙に落ち着くんだよ」
「……ガキかよ」
「雪は落ち着かないのか?」
こんなにいい男が、実は大きな体をした甘えん坊なのかと思うと、無性に笑えてきた。
「俺は落ち着かねぇよ。それより、話の続きだ。実行する人間は、龍ではないんだろ?」
「あぁ、俺ではない。俺だったら、雪にはこっそりと近づくことも出来ないからな」
「まぁ、確かにそうだな。発情してしまうからな」
そうだろうと思っていたが、いまリアルで見せている和泉の目も、真剣そのもので嘘をついているようには見えなかった。
「という事は、龍は単独で動くわけじゃなくて、組織の人間ということか?」
「組織と言うほどのものではないが、一応仲間がいる」
「ふぅん。でもそれなら尚更、俺と行動を共にしてたら、まずいんじゃねぇの?」
ターゲットである男とコソコソ会っているなど、仲間に知られると普通は制裁か、消されてしまう。そう考えると、和泉は雪成を懐柔させるために近づいたが妥当か。
(いや……龍は忠告をわざわざしてきたし、一度離れようとしているんだよな)
和泉の言動は、やはり雪成をとても困惑させるものだった。
「雪と行動するにも、雪自身が気をつけてることもあるし、俺もつけられるような真似は絶対にないから、そこは大丈夫だ。まぁ、これからは今夜のように連絡くれると助かるが」
まるでこれからも会うことが普通だと言わんばかりのセリフに、和泉の立ち位置がよく分からなくなる。
「なんで話してくれた?」
雪成がそう問うと、和泉は少し口元を緩めた。
「なんで……か。そうだな、俺の心境の変化も大きいが、理不尽っていうのが俺はどうも嫌いでな。だから俺は雪を決して死なせはしない」
「え……?」
雪成の綺麗なアーモンドアイが大きく見開かれる。琥珀の瞳が映す和泉の表情は、やはり真摯なものだった。
「なんでだ……?」
「今度は雪が質問ばっかりだな。さっき言った通りだ。それに、分かる時は早いんじゃないか? 雪の情報網も相当広いだろうしな」
確かにもっと情報網を、特に警察の方まで広げると何かしら情報は得られるのだろうが。そう簡単に得られるのか、疑問は残る。
「……でも、なんかちょっとスッキリしたかもな」
雪成はそのまま背中からベッドへと倒れ込んだ。 全く何の解決にも、明確にもなっていないが、モヤモヤしていた原因の僅かなものが、消えてくれたお陰で少し軽くなったような気がしたのだ。
「雪は、こんな男の言うことを信じるのか?」
雪成の顔のサイドに手を突く形で、和泉が見下ろしてくる。
雪成は和泉の綺麗な顔を見つめて、口角をゆっくりと上げた。
少し離れて雪成がベッドへ腰を掛けると、それを目敏く和泉は気づいて不満そうな顔をする。
「なんで離れて座るんだ」
そう言って雪成の腰に手を回した和泉は、自ら寄ってきた。
「いや、逆になんでそんなにくっ付くんだよ。おかしいだろうが」
「お前に触れてると、触れているところが熱くなるのに、なんか妙に落ち着くんだよ」
「……ガキかよ」
「雪は落ち着かないのか?」
こんなにいい男が、実は大きな体をした甘えん坊なのかと思うと、無性に笑えてきた。
「俺は落ち着かねぇよ。それより、話の続きだ。実行する人間は、龍ではないんだろ?」
「あぁ、俺ではない。俺だったら、雪にはこっそりと近づくことも出来ないからな」
「まぁ、確かにそうだな。発情してしまうからな」
そうだろうと思っていたが、いまリアルで見せている和泉の目も、真剣そのもので嘘をついているようには見えなかった。
「という事は、龍は単独で動くわけじゃなくて、組織の人間ということか?」
「組織と言うほどのものではないが、一応仲間がいる」
「ふぅん。でもそれなら尚更、俺と行動を共にしてたら、まずいんじゃねぇの?」
ターゲットである男とコソコソ会っているなど、仲間に知られると普通は制裁か、消されてしまう。そう考えると、和泉は雪成を懐柔させるために近づいたが妥当か。
(いや……龍は忠告をわざわざしてきたし、一度離れようとしているんだよな)
和泉の言動は、やはり雪成をとても困惑させるものだった。
「雪と行動するにも、雪自身が気をつけてることもあるし、俺もつけられるような真似は絶対にないから、そこは大丈夫だ。まぁ、これからは今夜のように連絡くれると助かるが」
まるでこれからも会うことが普通だと言わんばかりのセリフに、和泉の立ち位置がよく分からなくなる。
「なんで話してくれた?」
雪成がそう問うと、和泉は少し口元を緩めた。
「なんで……か。そうだな、俺の心境の変化も大きいが、理不尽っていうのが俺はどうも嫌いでな。だから俺は雪を決して死なせはしない」
「え……?」
雪成の綺麗なアーモンドアイが大きく見開かれる。琥珀の瞳が映す和泉の表情は、やはり真摯なものだった。
「なんでだ……?」
「今度は雪が質問ばっかりだな。さっき言った通りだ。それに、分かる時は早いんじゃないか? 雪の情報網も相当広いだろうしな」
確かにもっと情報網を、特に警察の方まで広げると何かしら情報は得られるのだろうが。そう簡単に得られるのか、疑問は残る。
「……でも、なんかちょっとスッキリしたかもな」
雪成はそのまま背中からベッドへと倒れ込んだ。 全く何の解決にも、明確にもなっていないが、モヤモヤしていた原因の僅かなものが、消えてくれたお陰で少し軽くなったような気がしたのだ。
「雪は、こんな男の言うことを信じるのか?」
雪成の顔のサイドに手を突く形で、和泉が見下ろしてくる。
雪成は和泉の綺麗な顔を見つめて、口角をゆっくりと上げた。
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