極道オメガと魂の番~抗えない発情~

那野ユーリ

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 電話に出た相手が和泉だと分かると、電話越しにも関わらず雪成の身体が少し熱くなる。
「一時間後にそっちへ飲みに行こうと思うが──」
『待て、お前が来たら俺らは発情してしまうだろ』
 店の電話ということもあり、和泉の声が少し小さくなる。
「だから、身体に変化が表れたら五、六分、外か何処かで時間を潰せ」
 雪成の横暴とも取れる発言に、和泉は気を悪くするかと思いきや、電話越しで笑い声を聞かせてきた。
『随分と勝手言ってくれるな』
「ちゃんとこうやって事前に連絡してやってんだから、感謝して欲しいくらいだけどな」
 お互いが軽口を叩く。まだ和泉のことを何も知らないのに、雪成にはこの気楽さが心地よかった。
『そもそも、その発情している時間が五、六分とか信憑性があるのか?』
「百パーセントかと言われたら俺にも分からん。こんな事初めてなんだ、知りようがないだろ。でもこの三度会って、俺らの発情時間は数分だったし、今回もそうなのか、確かめるのにはいい機会だろ」
『そうだな。分かった。今から一時間後だな、準備しておくよ』
 通話を切ると、雪成はソファの背もたれに背中を預けた。
「はぁ……俺は何やってんだ? 関わらないじゃなかったのか? 関わってもろくな事がないのは目に見えてんのに。クソ……」
 関わらなければ発情しなくて済む確率が大きいし、会うことによって自分へのリスクが上がってしまう。なら今日は大人しくマンションへ帰るだけだ。
 それなのに雪成はいま、中西の運転する車でhopeに向っていた。
「どうしたんですか? ずっとだんまりとなさって」
 ルームミラー越しから中西が心配そうに、何度も視線を送ってくる。
 すっかり日も暮れて、東京の街並みは夜の顔を新たに見せている。昼と全く違うところは、人間のあらゆる欲が解放されるというところだ。ある意味都心の活動は、今から始まると言っても過言ではないのかもしれない。
「んー? なんか自己嫌悪と反省と、何か分かんねぇ感情と、色々混じって訳が分からん状態」
「それは何とも……。今夜はまっすぐお帰りなっては?」
「そう思ったんだけどな。とりあえず、アイツの正体が何なのか、あれはどういう意味なのか、どれも明確にしないと気持ち悪いんだよな」
 中西には全て打ち明けてある。和泉と雪成が今どういう状況なのか。医師の谷原から聞いた魂の番に関しても伝えた。
 もちろん魂の番など初めて聞く中西にとっては驚き困惑したが、雪成らの状況を目の前で見ていることもあり、興味深いと言っていた。
「和泉龍成は、hopeが営業している日はちゃんと出勤しているとお伝えしましたが、どうやら勤務時間に決まりはなく、好きな時間に入って好きな時間に退社しているようです」
「ふぅん……」
 どうでもいい報告に聞こえるが、こうした細かい情報でも後で有益なものになる事が多い。だから些細なことでも、雪成へと報告される。

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