極道オメガと魂の番~抗えない発情~

那野ユーリ

文字の大きさ
上 下
11 / 51

青天の霹靂 2

しおりを挟む
 本来若頭とは激務だ。他組織との外交や組織の統括、若中らをまとめてと、決して暇とは言えない役職となっている。組織によっては、組長よりも力を持っていることもある。
 それなのに中西は雪成がオメガということもあり、いつ発情を起こすか分からない雪成に、本人以上に神経過敏になっている。だからか、ベータ相手であろうとも、雪成の身体に触れる者を許さないのだ。そう言った経緯もあり、誰に頼まれなくとも中西は雪成の世話は率先して行なう。
 なかなか出来ない事だ。口では素っ気ない口振りをしているが、心底から雪成のことを思ってくれている事が分かる。だからこそ、雪成も安心して全てを委ねることが出来るのだ。
「では、俺は車を止めてきますね」
 運転手を務める麻野を置いて、雪成らは松山の案内でBARへと向かう。だが、何故かBARに近づけば近づく程に雪成の〝中〟は、何かが騒ぎ立てるように落ち着きがなかった。熱もどんどん上がっていく。
「会長、やはり気分が優れないのでは? 無理はなさらないで下さい」
 中西の声に、少し前を歩いていた松山が驚いたように振り返り、足を止めた。
「大丈夫だ……」
 中西に触れられる前に雪成は身を引いて、心配そうに見つめる松山の肩を抱いた。
「ほら、中に早く入るぞ」
「……う、うす」
 松山は困惑し、中西へと窺いながらも雪成の言うことには逆らえない。イエスとしか返事が出来ない松山に申し訳ないと雪成も思うが、これが何であるのかを確かめたい思いがあった。このBARが原因なのか、それとも本当に体調を崩してしまっているのか。中へ入れば何か分かるような気がすると、雪成は漠然とだがそう感じていた。
 雑居ビルの地下に店はあるようで、雪成は松山を支えにするようにして階段を降りて行った。
 黒い扉に、ゴールドの取っ手が付いているというシンプルな扉ながらも、上品さを感じられる店構えとなっている。
「……っ」
 扉の前に立つが、雪成の身体はますます熱くなっている。更に拍動が耳の奥で聞こえる程に、バクバクと心臓が早鐘を打ち出した。
「新堂さん、なんか呼吸が荒いですけど……本当に大丈夫なんですか?」
 そう松山が口にした時、中でも何かあったのか騒がしい気配がした。
 すると突然店の扉が開く。雪成と松山が驚き一歩下がったとき、中から出てきた男と雪成の目が合った。
「っ……!!」
 その瞬間、雪成の全身にいかずちが落ちたかのような痺れが走った。それはあまりにも強い催淫にも感じた。
 雪成と男がお互いに目を見開くなか、男の方も雪成と同じ状況なのか、呼吸が荒く、目にも獰猛な熱が込められていた。
「お前……?」
「あっ……」
 男が雪成の腕に触れた途端、雪成は何とも言い難い恍惚とした快感で身を震わせた。膝から崩れ落ちそうになる。
「会長! おい、この方に触るな!」
 中西が雪成を守るために男から引きはがそうとしたが、雪成はそれを強く拒んだ。
「会長!?」
 中西と松山、そして遅れてやってきた麻野が困惑の表情を浮かべた。雪成と男が、互いしか目に入っていないような有り様だからだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます

天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。 広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。 「は?」 「嫁に行って来い」 そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。 現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる! ……って、言ったら大袈裟かな? ※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら
BL
 俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!  実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。  一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!  前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。 !注意! 初のオメガバース作品。 ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。 バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。 !ごめんなさい! 幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に 復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

処理中です...