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青天の霹靂 2
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本来若頭とは激務だ。他組織との外交や組織の統括、若中らをまとめてと、決して暇とは言えない役職となっている。組織によっては、組長よりも力を持っていることもある。
それなのに中西は雪成がオメガということもあり、いつ発情を起こすか分からない雪成に、本人以上に神経過敏になっている。だからか、ベータ相手であろうとも、雪成の身体に触れる者を許さないのだ。そう言った経緯もあり、誰に頼まれなくとも中西は雪成の世話は率先して行なう。
なかなか出来ない事だ。口では素っ気ない口振りをしているが、心底から雪成のことを思ってくれている事が分かる。だからこそ、雪成も安心して全てを委ねることが出来るのだ。
「では、俺は車を止めてきますね」
運転手を務める麻野を置いて、雪成らは松山の案内でBARへと向かう。だが、何故かBARに近づけば近づく程に雪成の〝中〟は、何かが騒ぎ立てるように落ち着きがなかった。熱もどんどん上がっていく。
「会長、やはり気分が優れないのでは? 無理はなさらないで下さい」
中西の声に、少し前を歩いていた松山が驚いたように振り返り、足を止めた。
「大丈夫だ……」
中西に触れられる前に雪成は身を引いて、心配そうに見つめる松山の肩を抱いた。
「ほら、中に早く入るぞ」
「……う、うす」
松山は困惑し、中西へと窺いながらも雪成の言うことには逆らえない。イエスとしか返事が出来ない松山に申し訳ないと雪成も思うが、これが何であるのかを確かめたい思いがあった。このBARが原因なのか、それとも本当に体調を崩してしまっているのか。中へ入れば何か分かるような気がすると、雪成は漠然とだがそう感じていた。
雑居ビルの地下に店はあるようで、雪成は松山を支えにするようにして階段を降りて行った。
黒い扉に、ゴールドの取っ手が付いているというシンプルな扉ながらも、上品さを感じられる店構えとなっている。
「……っ」
扉の前に立つが、雪成の身体はますます熱くなっている。更に拍動が耳の奥で聞こえる程に、バクバクと心臓が早鐘を打ち出した。
「新堂さん、なんか呼吸が荒いですけど……本当に大丈夫なんですか?」
そう松山が口にした時、中でも何かあったのか騒がしい気配がした。
すると突然店の扉が開く。雪成と松山が驚き一歩下がったとき、中から出てきた男と雪成の目が合った。
「っ……!!」
その瞬間、雪成の全身に雷が落ちたかのような痺れが走った。それはあまりにも強い催淫にも感じた。
雪成と男がお互いに目を見開くなか、男の方も雪成と同じ状況なのか、呼吸が荒く、目にも獰猛な熱が込められていた。
「お前……?」
「あっ……」
男が雪成の腕に触れた途端、雪成は何とも言い難い恍惚とした快感で身を震わせた。膝から崩れ落ちそうになる。
「会長! おい、この方に触るな!」
中西が雪成を守るために男から引きはがそうとしたが、雪成はそれを強く拒んだ。
「会長!?」
中西と松山、そして遅れてやってきた麻野が困惑の表情を浮かべた。雪成と男が、互いしか目に入っていないような有り様だからだ。
それなのに中西は雪成がオメガということもあり、いつ発情を起こすか分からない雪成に、本人以上に神経過敏になっている。だからか、ベータ相手であろうとも、雪成の身体に触れる者を許さないのだ。そう言った経緯もあり、誰に頼まれなくとも中西は雪成の世話は率先して行なう。
なかなか出来ない事だ。口では素っ気ない口振りをしているが、心底から雪成のことを思ってくれている事が分かる。だからこそ、雪成も安心して全てを委ねることが出来るのだ。
「では、俺は車を止めてきますね」
運転手を務める麻野を置いて、雪成らは松山の案内でBARへと向かう。だが、何故かBARに近づけば近づく程に雪成の〝中〟は、何かが騒ぎ立てるように落ち着きがなかった。熱もどんどん上がっていく。
「会長、やはり気分が優れないのでは? 無理はなさらないで下さい」
中西の声に、少し前を歩いていた松山が驚いたように振り返り、足を止めた。
「大丈夫だ……」
中西に触れられる前に雪成は身を引いて、心配そうに見つめる松山の肩を抱いた。
「ほら、中に早く入るぞ」
「……う、うす」
松山は困惑し、中西へと窺いながらも雪成の言うことには逆らえない。イエスとしか返事が出来ない松山に申し訳ないと雪成も思うが、これが何であるのかを確かめたい思いがあった。このBARが原因なのか、それとも本当に体調を崩してしまっているのか。中へ入れば何か分かるような気がすると、雪成は漠然とだがそう感じていた。
雑居ビルの地下に店はあるようで、雪成は松山を支えにするようにして階段を降りて行った。
黒い扉に、ゴールドの取っ手が付いているというシンプルな扉ながらも、上品さを感じられる店構えとなっている。
「……っ」
扉の前に立つが、雪成の身体はますます熱くなっている。更に拍動が耳の奥で聞こえる程に、バクバクと心臓が早鐘を打ち出した。
「新堂さん、なんか呼吸が荒いですけど……本当に大丈夫なんですか?」
そう松山が口にした時、中でも何かあったのか騒がしい気配がした。
すると突然店の扉が開く。雪成と松山が驚き一歩下がったとき、中から出てきた男と雪成の目が合った。
「っ……!!」
その瞬間、雪成の全身に雷が落ちたかのような痺れが走った。それはあまりにも強い催淫にも感じた。
雪成と男がお互いに目を見開くなか、男の方も雪成と同じ状況なのか、呼吸が荒く、目にも獰猛な熱が込められていた。
「お前……?」
「あっ……」
男が雪成の腕に触れた途端、雪成は何とも言い難い恍惚とした快感で身を震わせた。膝から崩れ落ちそうになる。
「会長! おい、この方に触るな!」
中西が雪成を守るために男から引きはがそうとしたが、雪成はそれを強く拒んだ。
「会長!?」
中西と松山、そして遅れてやってきた麻野が困惑の表情を浮かべた。雪成と男が、互いしか目に入っていないような有り様だからだ。
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