上 下
2 / 111

第2話 それが理由なのかよ・・・・・・。

しおりを挟む
 「では、アナタが異世界へ・・・・・・」

 「ちょっと待って!!」

 サラッと話を進めようとするな! サラッと!!

 「何でしょうかぁ~?」

 「今の書類、なかったことにして下さいっ!!」

 「無理でぇ~す。もう受理しましたからぁ~」

 そういえば、自称女神様の手元あった書類がなくなっている。もしかしたらカバンの。って、この人最初っからカバンを持っていなかったなぁ。

 「いやいやいや! 自称女神様が書類を渡して来たときに、魔法を掛けたでしょ!!」

 「何を仰っているのですかぁ~? 証拠がないのに、疑うのはよくないですよぉ~。あと、私は自称女神じゃなくて、ちゃんとした女神ですよぉ~」

 うわぁ~・・・・・・やっている人がよく言うセリフだ。

 「異世界に留学するのは決定されたので、諦めて下さいねぇ~」

 ここで諦めたらダメだ! もしここで諦めたら、勇者になって魔王を倒す旅に出て、血生臭い戦いに身を投じなきゃ行けなくなって自分の家に帰れずに一生を過ごす羽目になる!
 事と場合によっては俺を召喚した国が強くなった力を恐れて、殺しに来るかもしれない。

 「あの・・・・・・行くのは構わないんですけど、俺から条件を出してもいいですか?」

 「条件ですか? いいですよ。出来る限り叶えてあげますよぉ~」

 「この世界に帰れるようにして下さい!」

 そう、自分の世界に転移出来るようになれば、ピンチになったら、すぐに逃げ帰れるからね!

 「なるほどぉ~。寮に入るのではなく、自宅通い希望ですねぇ~。それぐらいでしたら、全然大丈夫ですよぉ~」

 「・・・・・・え?」

「え?」

 寮? 自宅通い? 何を言っているのこの女神は?

 「洸夜さん、話を聞いてなかったんですかぁ~? 私は、異世界の学校へ留学して貰いたいだけですよぉ~」

 「異世界の学校へ留学ですか?」

 「はいそうでぇ~す。剣と魔法の世界の学校への留学でぇ~す!」

 「剣と魔法の世界へと、留学・・・・・・勇者として戦うのではなく?」

 「はい、アナタに魔王とか邪神を倒すことを求めてませんよぉ~。異世界で学業に励んでいただくだけですぅ~」

 ・・・・・・うん、どういうことなのかサッパリわからん。

 「詳しく訳話していただけますか?」

 「わかりましたぁ~。資料を見ながらの方が、わかりやすいですからねぇ~。少し待ってて下さぁ~い」

 女神様の話をわかりやすく説明をすると、その世界はこの世界と違って魔法が主体の世界。しかし、近年では魔法に対しての、固定概念が出てきたせいかどうかなのはわからないけど、発展が停滞気味になってしまった。
 そのままほっといてしまったら人類が滅亡してしまうので、別の世界の住人を呼んで頑張って貰おうと思ったのだが、 そんなことしたら世界のパワーバランスが崩れるじゃないのか? 悪用する人間が出るんじゃないのか? 逆に滅ぼしかねない! とか色々と意見が出て来て話合いになった。
 その話合いの末、留学という形が一番いいと結論が出た。女神様が留学をしてくれそうな人を探していたら、退学を言い渡されてグロッキーになっていた俺とぶつかったらしい。

 「留学生ということにすれば、バレてしまい狙われたときは、自分の世界へ送還すればことが済みますからねぇ~」

 「ああ~なるほど」

 本人の素性がバレて追われることになれば、元の世界に帰せばことが済むからな。

 「それに、洸夜さんにはセンスがありますからねぇ~」

 「センス、ですか?」

 まさかチートレベルの魔力を保有しているとか?

 「普通の魔力とは違ったものを感じる。おそらく、ユニーク魔法の使えるかもしれぬ」

 「えっ!?」

 髭を長く生やしたお爺さんが、俺の後ろに立っていた。

 「いらしたのですか、創世主様ぁ~」

 「まぁの、彼の話しに興味・・・・・・というよりも、ワシもあの校長のことが気になったから調べてみたら、驚くことが出てきたのじゃ」

 「あの・・・・・・どちら様でしょうか?」

 神様なのはわかるんだけど。この世界の神様じゃないよね?

 「おお、名乗ってなかったのぉ~、天空神のゼウスじゃよ」

 「ゼ、ゼウスッ!? 」

 うわぁっ!? あの有名な、ギリシャ神話の神様だ!

 「い、今お茶を入れますねっ!!」

 「まぁまぁまぁ、気持ちはありがたいが、話をしたいから座って貰えるかのぉ」

 ゼウス様の言う通りにイスに座り直す。

 「さっきの話の続きじゃが、手短に説明すると自分の息子が赤点じゃった。このままだと自分の名誉も傷つくどころか他の不正もバレかねない。
 考えて思い付いたのが、お前さんの答案と息子の答案をすり替えることを考えたのじゃ」

 「テストのすり替え」

 思い当たる節はあった。答案用紙に書かれていた名前が、俺の書いた字の癖じゃなかった。

 「自分の手で名前を書き直したところで、字の癖でバレると気付たので、急遽お主に冤罪を掛けてから再テストさせて、息子のテスト用紙をねつ造しようと考えておる、何ともまぁ浅はかな考えじゃ」

 そんなバカバカしい事の為に、俺は利用されたのか。他の不正ってどんなことをやってたんだよ。

 もはや怒りを通り越してしまい、深くため息を吐きながら呆れている。

 「因みにその息子のテスト結果は、平気19点じゃぞ」

 ウチの高校の赤点は30点の優しい点数なのに、何をやってんだよ。

 「ん?」

 ポケットに入れているスマホが震えるので取り出して見てみると、何と母親から電話が来た。なので、女神様達に口に人差し指を当てて静かにして貰う。

 「もしもし、母さん?」

 『聞いたわよ洸夜! アナタが退学になったって!』

 「えっ! 早くない? 誰から聞いたの?」

 『真吾しんごくんから聞いたのよ!』

 母さんが語る真吾くんとは、中学時代からの友達で学年内で1~2を争うほど頭のいいヤツで、こういった報告も早いのだ。

 『アナタが他人のテストすり替えたって事も聞いたわ』

 真吾が俺よりも先に連絡するのだから、話を通しているのは当たり前か。

 「その、さ・・・・・・卒直に言うと、俺はやってない。無実だ」

 『わかってる。真吾にも、 すり替え生徒と同じ列だけれども洸夜は前から3番目の場所だから、すり替え暇なんてあるわけがない。それ以前に状況的に出来るわけがない。 って言われた。だから私もお父さんも洸夜の事を信じているわ』

 その言葉にグッと来るものがあったので、ちょっと泣きそうになった。

 「その・・・・・・母さんにお願いがあるんだけどさ」

 『今日の事を教育委員会に訴えて欲しいんでしょ。わかっているわ』

 「話が早くてありがたい」

 『アナタよりも先に連絡をくれた真吾くんに感謝しなさい』

 「ああ、うん。後で連絡しておくよ」

 『じゃあ教育委員会に訴えるから、電話を切るわよ。それじゃあ』

 「うん、じゃあね」

 母さん達も動き出したのか・・・・・・。

 「どうやら洸夜さんのご両親も、動き出したみたいですねぇ~」

 「そうらしいですね」

 てかあの校長、生徒にそのまま話したのか。

 「おっと、忘れるところじゃったわい。おぬしが留学するに当たって渡したいものがあるんじゃ。じゃからワシのこの手を握って貰えんかのう?」

 「あ、はい」

 ゼウス様の手を握った瞬間、ビリッと静電気のような痛みを手に感じた。

 「ほい終わり。これでおぬしは魔法が使えるようになった上に、向こうの世界の言葉と読み書きに、苦労しなくなったぞ」

 なんと、今の握手で俺はチート化した!

 「洸夜さん、勘違いしないでくださいよぉ~。アナタはゼウス様からチート能力を受け取ってませんよぉ~」

 「え?」

 「洸夜さんはただ向こうの世界で話したり、文字を書いたり読んだり出来るようになっただけですよぉ~。もちろん魔法も使えるようにもなりましたが、人並みの魔力量ですよ」

 「え、そうなんですか?」

 「そうですよぉ~。試しに魔法を使ってみましょうかぁ~。私の手を握ってみて下さい~」

 女神様の手を握ると、何かが握っている手を伝って流れて来るのがわかる。

 「残った左手で魔力を具現化してみましょうかぁ~。手のひらに光の玉が乗っかっているのを、イメージしてみて下さい~」

 女神様の言われた通りに目をつぶり、イメージをしてみる。すると、左手のひらに何かが乗っかったのを感じた。

 「おお~」

 「これは・・・・・・」

 え、何? 何を驚いているんだ、この人達は。

 目を見開き、恐る恐る自分の手のひらを見てみると、小さな水晶が乗っかっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで

一本橋
恋愛
 ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。  その犯人は俺だったらしい。  見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。  罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。  噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。  その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。  慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──

処理中です...