サバゲーマーズ!

青空鰹

文字の大きさ
上 下
54 / 63

14.ドロップキック

しおりを挟む
 「イブニングムーン社ぁ……え? もしかしてあそこにいる子が! ほほほ、本物のユーミン⁉︎」

 「そうなるわね」

 「うおおおおおおおおおおおおッ‼︎⁉︎ 生のユーミンだああああああああああああッ‼︎‼︎⁉︎」

 勝平はそう言うと天に向かって両手を掲げて涙を流すが、翔也がすぐ側まで行き頭を叩いた。

 「こんなところでそんなことしたら、周りの迷惑だろうが」

 「で、でも生ユーミンが目の前にいて……」

 「気持ちは分かるが落ち着け。向こうだってお前の行動にドン引きしているぞ」

 翔也がユーミン達を指さしながらそう言うと、勝平は自分が引かれていることに気が付いたようで「コホンッ⁉︎」と咳払いをした。

 「サバゲーフィールドに入れなくて困っていると、会話が聞こえて来たんだが本当か?」

 「え、ええ…詳しく話をすると、今日早めに出てフィールドに入る予定だったのですがぁ……」

 志田さんはそう言いながらイブニングムーンの社長夕月さんを睨み付けたら、夕月さんは額に汗を浮かべながら話し始める。

 「私が、前日に居酒屋の梯子酒をしてて寝坊したせいでぇ…………遅れることになっちゃったんだ。ハ…ハハ…………」

 「それで社長を起こしに自宅まで行って用意させて、出発したらこの状況になってしまいました」

 ユーミンの話に翔也達は呆れた様子になってしまう。

 「何やってるんですかぁ……」

 莉央さんの言葉に夕月社長はムッとした顔になって反論する。

 「だ、だって仕方なかったんだよお嬢ちゃん! 私だって会社同士のお付き合いが……」

 ガシッ⁉︎

 「そのような予定は組んでませんでしたよぉ~……スケジュール管理は何処の何方がやっているのか、知ってて言ってますかぁ~?」

 「ハ、ハヒッ⁉︎ アナタのお母様のおかげでひゅ⁉︎」

 お、おう……アイアンクローでものを言わせてる!

 「そんなことよりも志田さん。このままじゃマズイです」

 「そうね。主役が遅れて来るなんてことは問題ですね」

 アイアンクローをしている手をパッと離すと、夕月社長は手跡が付いた顔でホッとしている。

 「……それならいい方法があるぞ」

 「えっ⁉︎ 一体どんな方法ですか?」

 「あそこにいる交通整備をしている警察官に訳を言って通して貰えばいい」

 祐二の言葉に全員が「ハッ⁉︎」と気が付いた顔になる。

 「あっ⁉︎ そっか! 俺が話したように警察に相談すれば、フィールドオーナとも連絡が付くからすぐに対応してくれる!」

 「念の為、名刺を渡しながら話した方がいいかもしれないわね」

 「マネージャーさん、今すぐ言って聞いて来た方がいいですよ!」

 「わ、分かりました! あ…ユーミンちゃん。社長と一緒にここで待っててね」

 「分かりました!」

 志田さんはユーミンの返事を聞くと、交通整理をしている警察官の下へと駆け寄り、名刺を渡してから話を始めた。

 「これで上手くいけばいいんですけどぉ……」

 「いや…お前は今回の主役だから優先してくれる筈だ。しかし、朝からとんでもないことを仕出かす社長だな」

 「……はい」

 恥ずかしながらといった感じで言うユーミンの姿に、翔也達は同情してしまう。
 そんな中夕月社長は彩と莉央をジロジロ見つめる。

 「お、おい翔也。コイツ彩さん達をジロジロ見てる。もしかして変態じゃないか?」

 「そうか? 何か品定めしている顔に見えるが」

 ……いや、やっぱ変質者の目をしてるかも。

 「う~ん……やはりいい」

 「何がですか?」

 「お二人共、アイドルとか女優に興味ありますか? 私、イブニングムーンの社長を勤めさせて頂いている夕月ゆうづき 徳馬とくまと申します」

 そう言って名刺を差し出す夕月に、彩さんと莉央さんは名刺を受け取る。

 「知ってます」

 「さっきマネージャーさんが名前言ってましたしね」

 「アハハハ、そうですか。いやぁ~、私も夕雛さんに迷惑を掛けてしまい、申し訳ないと思っております」

 何だろう。世間話から始まる感じ、彩さん達を自分のところへ引き込みたいのか?

 「因みになのですが、私は彼の妻なのでアイドルとか無理です」

 「私もアイドルよりもやりたいことがあるので、アイドルやりません!」

 「そうだそうだ! 彩さんがアイドルになったら、人妻アイドルって危ないワードが出来るかもしれないんだぞ‼︎」

 「お前ちょっと黙ってようか!」

 勝平の頭を押さえて黙らせてやった。

 「なるほど、しかしアイドルは出来なくても女優は出来そうですよね? そしてそちらのお嬢さんも、やりたいことを並行してアイドルをやるという選択肢もあると思います。
 大丈夫。スケジュール管理はこちらの方でしっかりやるので、考えないして頂けないでしょうか?」

 「あの、夕月社長。志田さんから独断での勧誘は止めるように言われた筈ですよね?」

 「夕雛ちゃん! 私の目の前にはダイヤモンドの原石があるんですよ! それを光り輝くように手入れしてあげるのが我々の仕事じゃないですか!」

 「しつこい勧誘はしないってこの間約束したばっかりじゃないですか!」

 「しつこくしてないから全然OK! 我々の事務所に入って……」

 「な・に・し・て・る・ん・じゃ・このボケエエエエエエエエエエエエッッッ‼︎‼︎⁉︎」

 走って戻って来た志田さんのドロップキックが、夕月社長に突き刺さり、夕月社長はすっ飛んで行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】知られてはいけない

ひなこ
ホラー
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。 他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。 登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。 勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。 一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか? 心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。 (第二回きずな文学賞で奨励賞受賞)

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...