上 下
98 / 101

エルフ至上主義者達

しおりを挟む
 錬金術ギルド長であるサニーさんと謎のエルフ2人が睨み合いが続く中、サニーさんが呆れた顔になって2人のエルフに話し掛ける。

 「いい加減帰ってくれないかしら? 周りが迷惑してるのわからないのかしら?」

 「周り迷惑など、我々エルフの問題に比べればぬるいものだ」

 「そうだ! サニー、もう一度聞く。妖精様を連れた女子は何処にいるんだ?」

 「それを知ってどうするの?」

 「無論、妖精女王様の下へお届けするのだ!」

 その言葉を聞いたサニーさんが額に手を置いてから、怒り気味に話し出す。

 「あのね。何度も言ってるようだけど、面会は明日にセッティングしているでしょ。
 だからその時にファニーを妖精女王様の下へ帰らせるかどうか決めるって聞いたのだけど?」

 「妖精様を呼び捨てだとぉ!」

 「無礼な! それでもお前はエルフ族なのか?」

 「あのね。アナタ達と違って私はその妖精と友達になったの。だから呼び捨てにするのは当たり前なのよ。
 ……と言っても堅物の根暗のアナタ達には一生わからない話だと思うけど」

 「「なんだとぉ⁉︎」」

 「そんなことよりも、早く帰らないと営業妨害で訴えるわよ」

 「呼べるものなら呼んでみろ!」

 「下等種族などが我々に敵うと思えんがな!」

 勝つ負ける以前に周りが迷惑そうにしていると思わないのか?

 そんなことを思っていたら、サニーさんが俺がいることに気が付いて手を振って来た。

 「カイリ、今日もポーションを売りに来てくれたのね!」

 「あ……はい」

 どうしよう。何だか関わりずらい状況なんだけどぉ……って言うか、あのエルフ達が俺を睨んで来て困る!

 「早くこっちに来て!」

 「早くこっちに来なさい!」って、圧を掛けられている気がするのは気のせいだろうか?

 「~~~♪」

 ファニーちゃんが俺の前に来て「行った方がいいんじゃない?」と言いたそうな声を出した。

 え? これって逃げ場がないって感じなの?

 「おい! あれって……」

 「ああ、あの女がそうだ!」

 エルフの男達が顔を見合わせて頷くと、こっちの方に歩いて来る。

 しかもヤバイ感じになってるんですけどぉ⁉︎

 「アナタ達、錬金術ギルド内で揉めごと起こそうとしているの?」

 「あの女から……」

 「彼女は錬金術師とテイマーの二職を持っているから、妖精を使役しているって、話を聞いてなかったのかしら?
 あの子に手を出そうとするのなら、錬金術ギルドのギルドマスターである私は対処しますよ」

 サニーさんがそう言った瞬間、彼女の身体からもの凄い魔力の圧が肌で感じる。

 「……クゥ」

 プルンッ⁉︎

 「~~~♪」

 ルル達もサニーさんの圧をまとも受けてしまったせいか、怯えて俺の後ろに隠れてしまった。

 止めて止めて! 俺だって隠れたいんだよ‼︎ ……でも、やっぱりギルドマスターだけあって凄い魔力を持ってんだなぁ。

 「お、おいサニー! 俺達にそんなことをしたら、お前は村に帰れなくなるぞ!」

 「そうだ! お前は一生下種と共に生活をしたいのか?」

 「私は別に帰れなくなっても困ることはないわよ」

 「なぁ⁉︎」

 「バカな⁉︎ エルフの里を捨てると言うのか?」

 驚く2人に対してサニーさんは、淡々とした声で話し始める。

 「元々私はエルフのそういう固定概念が正しいのか知るために里を出たの。それでその考えが間違っているってことがわかったし、何よりもこの街で生活基盤を築いているから帰れなくても困らないわ。
 それに、アナタ達の考えが時代遅れになって来てるのがわからないの?」

 「そ、そんなことは……」

 「そうだ! 評議会に話せば……」

 「その評議会の人達はキミ達の味方をしてくれるとは思えないよ。それにカイリの後ろにいる人もね」

 後ろ?

 そんなことを思いながら振り返ってみると、立派な髭を蓄えたナイスガイなエルフの男性が真後ろにいた。

 「ロ、ロガ⁉︎ 来ていたのですか?」

 「ああ、今回は重要な護衛任務だからな。ワシが出ることになったんだ。…そんなことよりも」

 ロガと呼ばれたエルフはサニーさんの近くにいるエルフ2人を見つめる。

 「お前らは何でここにいるんだ?」

 「わ、我々はその女を探しに来ただけだ」

 「……探しに来た?」

 ロガさんが一言語った瞬間、エルフ2人の肩がすくみ上がった。

 「お前達の仕事は行方不明になった妖精を探すのではなく、妖精女王様の護衛だろう。護衛任務を放り出して何をしているんだ?」

 「うっ…それは……」

 「その女を見つけたから、妖精のことについて話をしようとしていただけだ」

 「ロガさん、この2人はカイリからファニーちゃんを無理矢理返して貰おうとしていましたよ!」

 「おまっ⁉︎」

 「無理矢理だと?」

 ロガさんはそう言うと2人に歩み寄る。

 「お前達! 明日彼女と面談する予定なのを忘れていないだろうな?」

 「知ってるが…あの女がすっぽかして逃げる可能性があるんじゃないか⁉︎」

 「そうだ! アイツは人間だ! 信用ならん‼︎」

 「信用するも何も冒険者ギルドと錬金術ギルドに登録をしているのだから、ギルド命令が出れば従うのは義務と思うが……違うかサニー?」

 「はい。妖精を保護してくれたカイリがちょうど来たので、その話をしようとしていましたよ」

 「……だそうだ。お前ら妖精女王様から離れて何をしているんだぁ⁉︎ 妖精女王様に何かあったら、どうする?」

 「それはロガ隊長とて同じことを言えるのでは?」

 「俺は妖精女王様にちゃんと話をして来ている! 全く、妖精女王様と近衛兵達がお前達の行動を聞いて呆れていたぞ」

 「なっ⁉︎」

 「あ、呆れてる⁉︎」

 ロガさんの言葉を聞いた2人は、「マズイ⁉︎」と言いたそうな顔をしている。

 「あらら2人共大変ねぇ~……。カイリに構ってる暇があるのなら、今すぐ妖精女王様のところに行って謝った方が身の為じゃないのかしら?」

 サニーさんの言葉に「そんなこと言われなくてもわかってる!」と言いたそうな顔をすると、そそくさと錬金術ギルドを出て行ってしまった。

 「……全く。これだからエルフ至上主義の連中は嫌いなのよ」

 「まぁアイツらにとってもこれが最後のチャンスみたいなものだから、必死になってるんだ」

 「あ、やっぱりそうなのね」

 「そんなことよりも。久しぶりだなサニー」

 「そうね、久しぶり。ロガ。30年ぶりかしら?」

 結構長い間会ってなかったんですね⁉︎

 「いや……確か26年前ぐらいだった気がするが……まぁどちらにしろ会えて嬉しいぞ」

 26年でもなっが⁉︎ あ、でも長寿のエルフだから人間に例えると感覚的に3年ぐらい会ってなかった的な感じになるのか?

 「色々話したいことがあるけど、先ずはカイリに挨拶をした方がいいんじゃないのかしら?」

 「おっとそうだったな。初めまして、ワシの名前はロガ・アスタール。エルフの里で近衛騎士の副団長をしているんだ。よろしく」

 「あ、初めまして! カイリと申します! この子がルルでこっちがプル太郎。それと妖精のファニーちゃんです」

 「キャンッ⁉︎」

 プルンッ⁉︎

 「~~~♪」

 ルル達がロガさんに挨拶をすると、興味を持っているのかロガさんの側へと駆け寄った。

 「おお、よろしくな!」

 ロガがそう言ってルル達と触れ合う姿を、カイリはほっこりした顔で見ている。

 「カイリの従魔に好かれてるわねぇ~」

 「ハハハ、この子達人懐っこいんだな」

 「そうですね。でもさっきの人達には懐かないと思いますよ」

 俺のこと悪く言ってたから、ルル達怒ってたし。

 「なるほど。……これなら妖精女王様も…………」

 「どうかしました?」

 「いや、何でもない。サニー、俺は戻ってアイツらを叱らなきゃいけないから、彼女に明日の予定を伝えてくれ」

 「わかったわ。明日会いましょう」

 ロガさんはサニーさんに手を軽く振ると、錬金術ギルドを後にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ
ファンタジー
高校一年生となったばかりの「霧崎レア」は学校の授業中、自分の前の席に座るクラスメイトの男子が机から1冊の書物を取り出す。表紙は真っ黒でタイトルさえも刻まれていない書物をクラスメイトの男子が開いた瞬間、表紙に魔法陣が浮き上がり、教室は閃光に包まれた。 次にレアは目を覚ますと、自分の他に3人のクラスメイトが床に魔法陣が刻まれた煉瓦製の建物の中に存在する事を知り、さらにローブを纏った老人の集団に囲まれている事を知る。彼等が言うにはここは異世界の「ヒトノ帝国」という国家らしく、レアを含めた4人の高校生たちは世界を救う勇者として召喚されたという。 勇者として召喚された4人は「ステータス」という魔法を扱えるようになり、この魔法は自分の現在の能力を数値化した「能力値」最も肉体に適している「職業」最後に強さを表す「レベル」を表示する画面を視界に生み出せるようになった。だが、レア以外の人間達は希少な職業に高い能力値を誇っていたが、彼の場合は一般人と大して変わらない能力値である事が判明する。他の人間は「剣の加護」「魔法の加護」といった特別な恩恵を受けているのに対し、レアだけは「文字の加護」と呼ばれる書き記された文字を変換するという謎の能力だった。 勇者として召喚された他のクラスメイトが活躍する中、レアだけは帝国の人間から無能と判断されて冷遇される。しかし、様々な実験を経てレアは自分の能力の隠された本当の力に気付く。文字変換の能力はステータスにも有効であり、彼は自分の能力を改竄して馬鹿にされていた人間達から逆に見上げられる立場となる―― ※文字変換シリーズの最初の作品のリメイクです。世界観はこれまでのシリーズとは異なります。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。 本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。 俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。 どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。 だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。 ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。 かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。 当然のようにパーティは壊滅状態。 戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。 俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ! === 【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

処理中です...