上 下
39 / 101

新たな仲間が出来た瞬間!

しおりを挟む
 ルルの涎だらけだった妖精の身体をプル太郎が綺麗に拭き取ってくれた。しかし、涎を拭き取り終わっても全く起きる気配がないので、ちょっと困っている。

 「全く起きてくれませんねぇ……」

 「そうね。死んでいる訳じゃないのは分かっているけど、心配になってくるわね。鑑定をした時に状態異常は見当たらなかったのよね?」

 「はい、だから普通に気を失っているだけだと思う」

 俺の両手に乗っている20cmよりもちょっと低い妖精の女の子を心配した顔を見ていると、ルルが近付いて来た。

 「クゥ~ン……」

 プルンッ……

 ルルとプル太郎も妖精が心配そうに見つめている。

 「心配なのは分かるけど、ファニーが起きるのを待とう」

 「えっ⁉︎ ファニー? 何を言ってるの?」

 「この子の名前は、ファニーって言うんですよ。ステータスを見た時に名前がちゃんと載ってたから間違いない筈」

 「その子に名前があるのぉ⁉︎」

 イヤイヤイヤイヤッ⁉︎ 何よりも人間っぽいから、名前が付いているのは当たり前じゃないのか?

 「妖精に名前があるなんて……」

 あれ? サシャさんも同じ反応してる!

 「名前がある妖精って珍しいんですか?」

 「あ、いえ……妖精は妖精の国にいる妖精しか名前が付いてないのです」

 「妖精の国にいる妖精しか名前が付いてない?」

 どういうこと?

 「カイリ、妖精は精霊と魔物の間みたいな存在でね。特定の花から生まれるよ。その花が多く咲く場所に妖精達は自分の国を作っているのよ」

 「何か俺の中のイメージだと、国というよりも楽園みたいな感じがするんだけど」

 「半分は合ってる。それで話の続きなんだけど。その国で生まれた妖精はその国の女王から名前が与えらえる決まりになってるの」

 「へぇ~……」

 何か毎年生まれたフェアリーに名付けしていそうで大変そうかも。

 「妖精の国は外部との交流が全くと言っていいほどないので、場所も一部の人しか場所を知りません。
 なので彼女を元の場所へ返してあげるには、その知っている方々を探すしかないですね」

 ……何か答えを先読みされた気分。でもそう考えていたよ、俺はさぁ‼︎

 そんなことを思っていたら、手のひらに乗ってるファニーちゃんがモゾモゾ動き出した。

 「おっ⁉︎ 起きそう!」

 俺がそう言うとファニーちゃんは目を開き、周りを確認するように見回した後、俺達を見つめる。

 「よかった、起きてくれて」

 「~~~ッ⁉︎」

 ファニーちゃんは驚いた顔をさせ、カイリから逃げるように距離を取った。その行動にカイリはちょっと傷付いたのか、ションボリした顔になってしまう。

 「カイリ様、ファニー様があのような行動を取るのは致し方ありませんよ」

 「どうしてですか?」

 「妖精だけが作れるフェアリーベリーは貴重な果物で、とても美味しいから狙う商人が多いの。それに彼女の羽に付いてる鱗粉は、浮遊の効果があって身体に振り掛ければ宙に浮くことが出来るのよ。しかも錬金術の材料としても貴重価値はあるわ」

 「マジですか?」

  「マジな話よ。今では妖精の国と友好な関係を築く為に妖精狩りは禁止されているけど、密猟しようとする輩は少なくはないわ」

 ならあんな風に警戒されるのは、当たり前ってことだよなぁ。

 俺がそう思ってフィニーを見つめていたら、ルルがフィニーの側まで行ってしまった。

 「キャンッ⁉︎ キャンッ⁉︎」

 「~~~……?」

 「キャンッ⁉︎」

 あれ? 何か知らないけど、ルルとファニーちゃんが会話をしている気がする。

 「プル太郎……もしかしてファニーちゃんとルルは会話出来てるのか?」

 プルンッ⁉︎

 「うん!」と言いたそうな感じで震えていたので、カイリは驚いた表情でルルとファニーを交互に見つめる。

 フェンリルと妖精が会話出来るなんて、まるでポケモ……ファンタジー感で満載で感動的だ!

 その後もキャンキャン吠える鳴き声と鈴のような音色の声で話し合った。その結果俺達から離れていたファニーちゃんが、俺の元へやって来た。

 「俺のところに来てどうしたんだ?」

 「~~~♪」

 ……ダメだ! 何が言いたいのかサッパリ分からないっ‼︎

 「キャンッ!」

 「えっ!? 何? テイムぅ? 一体どういうこと?」

 「~~~♪」

 プルンッ⁉︎

 プル太郎が驚いて様子を見せる中、ファニーちゃんが腰に手を当てて胸を張った。

 テイム……テイムって、まさか⁉︎

 「ファニーが従魔になってくれるのか?」

 「~~~♪」

 何て言っているのか分からないけど、笑顔で踊っている姿を見て容認していることを理解出来た。

 「分かっていると思うけど、平等な契約だから契約を辞めたいと思えば取り消せるよ」

 「~~~♪」

 ファニーも理解したような顔をさせる。

 「じゃあ……テイム‼︎」

 妖精ファニーのテイム完了。名前が付いているようですが変更しますか?

 変更はなしっと。

 目の前に浮かんでいるNOと書かれたボタンを押した。

 「……うん、これで契約完了だ。これからよろしくな、ファニーちゃん!」

 女の子だから、ちゃん付けで呼ぼう!

 「~~~♪」

 ファニーちゃんも「よろしくねぇ~!」と言いたそうな返事を返してくれた。

 「ところで、ファニー様はどうしてダンジョンにいたのですか? もしかしてこのダンジョンの中に妖精の国があるのでしょうか?」

 「~~~♪」

 サシャさんとサニーさんがこっちを向いている。通訳をしてくれってことですね、はい。

 「えっとぉ~……違うと否定してます」

 「じゃあ、どうしてここにいたの?」

 「~~~♪ ~~~~~~♪ ~~~♪」

 「知らない。友達。遊ぶ? それに故郷……もしかして自国で友達と遊んでいたら、何時の間にかこの場所にいた。それで合ってる?」

 「~~~♪」

 首を縦に振るってことは、合っていたみたいだ。

 「誰かに連れ去られて来た。って線は消えるわね」

 「先ほども話ましたが妖精の国の場所は一部の人にしか分からないので、密猟者が行こうと思っても行ける場所ではありません。
 もしかして妖精の国の外で遊んでいましたか?」

 「~~~♪ ~~~~~~♪」

 ちょっと怒り気味に答えるファニーちゃんの表情を見ながら、俺は通訳をする。

 「えっとぉ~……そんなことしないよっ! やったらすぐにバレる‼︎ って言いたいんだと思います。もしかして女王は自分の国の妖精を把握出来るのか?」

 「~~~~~~♪」

 「……妖精女王は俺が言ったように、国にいる妖精達がどうしているのか、ちょっとだけ把握出来るみたい?」

 ファニーちゃんが否定しないってことは、合ってることだよな。

 「まぁ完全に把握はしてないと思うけど、妖精女王となればそれぐらいのスキルを有していそうね。
 その女王様がアナタのことを心配していると思うわ」

 「~~~……♪」

 ファニーちゃんは「うん……」と言いたそうな声をだしながら、ションボリしてしまった。

 「ちょっ、サニーさん! ファニーちゃんが気落ちしちゃったじゃん!」

 「でも安心して。妖精の国と交流がある人を知っているから、その人に話をしてみましょう」

 「ッ⁉︎ ~~~♪」

 ファニーちゃんは「お願いします!」と言いたそうな声を出してサニーさんに近付いた。

 「その人は遠いところにいるから伝わるにの時間が掛かると思うけど、その間カイリの側でサポートしてあげてね」

 「そうですね。カイリ様はレベルは疎かステータスが結構低いですからね」

 「~~~♪」

 プルンッ⁉︎

 「そうなの?」と聞きたそうな声を出すファニーちゃんに対して、プル太郎が「そうだよ!」と答えるように身体を震わせた。

 「うん……俺生産職だから攻撃面じゃ弱いよ」

 「~~~? ~~~♪」

 「そうなの? 私がサポートしてあげる!」と言いたそうな声を出しながら、はしゃぐファニーちゃん。

 ファニーちゃんもいい子そうでよかったぁ~。

 「何となく言いたいことが分かりました。カイリ様はレベル上げの途中です。手伝って下さいますか?」

 「~~~♪」

 「もちろん!」と言いたそうな声を出したファニーちゃん。

 「ファニー様の了承を得ましたし、レベル上げの再開を致しましょう」

 「そうね。みんな、頑張ましょう!」

 「キャンッ!」

 プルンッ!

 「~~~♪」

 「オ……オオ~…………」

 ウチの従魔達はサニーさんの掛け声に合わせるように、「オオ~ッ⁉︎」と掛け声を上げて付いて行くのであった。てかウチの子達ノリがよかったんだなぁ~。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

解析の勇者、文字変換の能力でステータスを改竄して生き抜きます

カタナヅキ
ファンタジー
高校一年生となったばかりの「霧崎レア」は学校の授業中、自分の前の席に座るクラスメイトの男子が机から1冊の書物を取り出す。表紙は真っ黒でタイトルさえも刻まれていない書物をクラスメイトの男子が開いた瞬間、表紙に魔法陣が浮き上がり、教室は閃光に包まれた。 次にレアは目を覚ますと、自分の他に3人のクラスメイトが床に魔法陣が刻まれた煉瓦製の建物の中に存在する事を知り、さらにローブを纏った老人の集団に囲まれている事を知る。彼等が言うにはここは異世界の「ヒトノ帝国」という国家らしく、レアを含めた4人の高校生たちは世界を救う勇者として召喚されたという。 勇者として召喚された4人は「ステータス」という魔法を扱えるようになり、この魔法は自分の現在の能力を数値化した「能力値」最も肉体に適している「職業」最後に強さを表す「レベル」を表示する画面を視界に生み出せるようになった。だが、レア以外の人間達は希少な職業に高い能力値を誇っていたが、彼の場合は一般人と大して変わらない能力値である事が判明する。他の人間は「剣の加護」「魔法の加護」といった特別な恩恵を受けているのに対し、レアだけは「文字の加護」と呼ばれる書き記された文字を変換するという謎の能力だった。 勇者として召喚された他のクラスメイトが活躍する中、レアだけは帝国の人間から無能と判断されて冷遇される。しかし、様々な実験を経てレアは自分の能力の隠された本当の力に気付く。文字変換の能力はステータスにも有効であり、彼は自分の能力を改竄して馬鹿にされていた人間達から逆に見上げられる立場となる―― ※文字変換シリーズの最初の作品のリメイクです。世界観はこれまでのシリーズとは異なります。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

魔王のジョブを持っているVRMMOのアバターで異世界へ転移してしまった件

Crosis
ファンタジー
借金まみれになり自殺した滝沢祐介は、目覚めると自分がプレイしていたVRMMOのアバター、クロ・フリートの身体とチート能力を持ち異世界に転生してしまう。 しかしいくら強力な力があってもお腹は満たせない為転生してすぐ、空腹により気を失うのであった。 そんな彼のハーレム異世界奮闘記である。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。 本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。 俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。 どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。 だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。 ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。 かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。 当然のようにパーティは壊滅状態。 戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。 俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ! === 【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました

処理中です...