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第10話

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真夜中、学園の敷地で一人の男がブツブツ何か言いながら歩いている。

「コロス・・・・コロスコロスコロス。ゼッタイニコロス」

我が兄弟を殺した学園の関係者。いや、生徒諸共全員殺してやる!? 兄弟を殺した罪を命で購あがなって貰おう!!?

荒い息をしながら剣を強く握りしめ、学生寮だけを見つめて歩く。

まだだ、まだ遠い・・・・この怒りを爆発させるのには距離がありすぎる! 後200メートル。

焦っているのか自分でも分かるぐらいに体内で魔力が渦巻き始める。

・・・・・・後・・・・150メートル!?

剣を握っている手から血が出て来て、グリップに染み込んでいく。

・・・・・・・後、100メートル。もう限界ぁぁぁあああ~~~~~~!!?

「ァ”ァ”ァ”ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ア”ア”ア”ッ」

怒りで顔を歪ませながら、右手に魔力を込め詠唱を始めた。

この距離でもあの大きさなら何処かしら当たる!!?

「我が炎よ! 全てを焼き飛ばす紅蓮の爆発となれ、【フレイムボム】!?」

ゆっくりと遅い速度で、学生寮に向かい飛んで行く様子を見た彼は確信めいた顔をしていた。

私の魔力全てを注ぎ込んだフレイムボム。魔力の過剰に注ぎ込みのせいで両手を焼いてしまったが、あれが学生寮の隅にでも当たれば大惨事は免れない!?

「ハッハッハッハッハッ! 死ね断罪者共!? そして我が兄弟と神に捧げる供物となれっ!!?」

フレイムボムが学生寮にぶつかり爆発した後に、すかさず自分が学生寮に入り学生を倒し回る。そして駆けつけてくる教師も生徒を盾にしながら殺せば良い。なんて完璧な作戦だ。

「ハッハッハッハッ、ブァッ!?」

学生寮に向かっていた筈のフレイムボムが途中で爆発し、吹き飛ばされたのだ。

「ゴホッ!? ゴホッ!? 何故だ。何も触れてないのに爆発した・・・・あり得ない。こんな事はある筈がないんだ・・・・クソッ!!?」

地面を叩きつけるが、今はそんな事をしている場合ではないと気づき、立ち上がりまた学生寮に手をかざし魔力を込めるが。

「あんなのを威力の魔法を撃っといて、まだ撃とうとするとはな・・・・それだけ魔力があるって事か」

「ッ!? キ・・・・キサマは!」

「よう大将。ここに来ると思って張ってたら案の定来たな。因みにコイツでアンタの魔法を相殺さして貰った」

SIG GSRを見せながらファドムに言うと、体を震わせ怒りの表情を作りながら俺を見てくる。

「キサマはァァァアアアッ!?」

そう言いながら腰にある剣を引き抜き振りかざすと、俺に向かって突っ込んできた。

「死ねぇぇぇ~~~!?」

おいおい、分かりやすいなぁ~。

そう思いながら剣を躱した後に距離を取り、ファドムの顔を見ると腹の底から可笑しさが込み上げて来てしまう。

「プッ! アハハハハッ!?」

「キサマァ~! ・・・・何が可笑しいんだ!?」

「そりゃあだってな。酷いツラをしながら襲い掛かって来てるからな、可笑しいに決まってるだろ。ましてや、俺を親の仇のような目をしながら来るんだもん」

「キサマ、ふざけているのかっ! 現にキサマは我が兄弟を殺した。故に兄弟の仇であろう!?」

その言葉を聞いた俺は笑うのを止め、真顔でファドムの顔を見て言い始める。

「ふざけているのはお前の方だろ? 何言ってるんだ?」

「何だとぉ!?」

「現にお前は救済と言う形で、人を殺し続けてる。お前が殺して来た人達の顔を覚えているか?」

「・・・・」

黙だんまりか。覚えていないほど人を殺して来たと考えて良さそうだ。

「そして、その家族の顔を見た事あるのか?」

「・・・・見たぞ。それがどうした?」

「俺の予測では、お前を感謝している顔じゃなく、恨んだ顔しながら見ていたと思うが違うか?」

「ああ、見ていた。しかし・・・・」

胸に手を当て声を張り上げながら話し始めた。

「私は救済しただけだ! いずれ時が経てばその家族達も、私の行いを理解してくれるだろう!?」

「そうか・・・・じゃあこれは何だ!?」

俺はポケットから手配書を取り出して見せつける。

「これがお前らがやっていた行いの結果がこれだ。所詮お前らは自己満足だけで人を殺していたって事を気づくんだな」

「・・・・自己満足だと!?」

「ああ、そうだ。もう年貢を納め時が来たって事だ。周りを見てみろ」

俺の言葉を聞いたファドムは、周囲を見回すと驚いた顔をし始める。

「馬鹿な・・・・いつの間にこんなに集まっていたんだ?」

そう先生達が武器を手にしながらファドムを取り囲んでいて、逃げ場の無い状況になっていた。

「大人しく捕まれば死なずに済むぞ。どうする? 投降するか?」

ダリット先生がファドムに近づき、そう問い掛けるが、ファドム自身は体を震わせながら俺の方を見て来る。

「・・・・だけでも」

「ん?」

あの感じヤバそうだな。

「キサマだけでも道ずれにしてくれるわぁぁぁ~~~!!?」

そう言いながらまた突っ込んで来るので、振り下ろしてくる剣を躱し距離を取る。

「シュン! 下がれ!?」

「先生! ストップ!?」

ダリット先生は武器を持ち、俺を助ける為に走って来るが止める。

「どうして止めるんだ?」

「俺が決着ケリを付けますから手を出さないで欲しい」

「・・・・危ないぞ」

「勝算ならありますよ」

「・・・・分かった。お前に任せる」

「ありがとうございます」

ダリット先生にそう言った後にファドムに顔を向ける。

「待たせたな。正々堂々と始めようじゃないか」

「正々? 堂々と? ・・・・良いだろう受けてやろう。ただし勝つのは・・・・」

そう言いながら焼け焦げた右手をかざすが、その手には火の魔石が見えた。

撃ってくる気だコイツ。

「神の加護を私に決まっているっ!? 【ファイアボール】!?」

飛んで来る火の玉を避けるのと同時に、懐からナイフを一本取り出してファドムに投げつけ腹部に深々と刺さる。

「アガッ!? 生意気、グアッ!!?」

その後も右太ももに一本、左肩に一本突き刺すとファドムは怒りの形相で俺を見てくる。

「キサマ卑怯ひきょうだぞ! 正々堂々と戦え!?」

「卑怯? おいおい何をおかしな言ってるんだ? 正面からナイフを投げているだけだ。卑怯はやってないっだろう? それに今の今まで卑怯をやってたのはお前の方だろう?」

「平和に暮らしていた人を片っ端から殺してた挙句、それを救済だとか言う言葉で殺してしまったと言う罪から逃げているだけだろう・・・・違うか?」

ナイフを手で回して遊びながら言う俺に、憎々しいと言いたそうな顔をしながら見つめてくる。

「逃げてるだと・・・・違うっ!? 我々は悪しき肉体から魂を解放しているだけだ! 何が悪いと言うのかっ!!?」

「悪いね。自国だけでやってる狂った思想を他国に持ち込んでやってるんだからな・・・・人ん家ちの畳みの上を、泥まみれの靴で歩いているぐらい邪道だよ・・・・よっと!?」

回して遊んでたナイフをまた投げ、今後は左足に突き刺す。

「ウグッ!? アギャァァァ~~~~~~!?」

激痛を感じてるのか、踞うずくまり悶え苦しむファドムをSIG GSRを構え、見下ろしながら言う。

「お前が殺して来た連中も、その痛みと苦しみを味わっていたんだぞ。それに殺した時に、助けて頂いてありがとうございます。って顔をしていたか?」

「~~~ッ!? 黙れ小僧っ!!?」

自分の腹部に刺さっているナイフを右手で引き抜き、そして構えたところをトリガーを引き右手をぶち抜いていく。

「ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ア”ア”ア”ッ!?」

右手を抑えながら地面にのたうち回り苦しむファドム。恐らく、何も知らない人がこの光景を見たら止めに掛かるか、非人道的だ。とか言うだろう。しかし俺はコイツに慈悲なんて言葉は全く感じなかった。何故ならコイツは、非人道的に人を殺し続けてきた人間だからだ。

「・・・・降参するかい?」

俺はファドムを見下ろしながら言うと、ファドムは怯えた顔をして体を震わせる。

「ヒッ! ・・・・バ、バケ・・・・・・バケモノッ!? うわあああぁぁぁ~~~!!?」

そう叫びながら逃げて行く姿を見て、俺は怒りを感じてしまう。

ここまで来て逃げるのかよ。情けないヤツだな・・・・ここでお前を逃すつもりは全く無い!?

俺は左手を思いっきり手前に引くと、ドーゼムは地面に転がり倒れてしまう。

「アッ! ・・・・ガッ!?」

転んだ拍子に更に深く刺さってしまったナイフを抜こうとしているのか触っていたのだが、その手が止まる。

「・・・・糸?」

「今更気がついたのか。そうだ0.05mmの細いワイヤーをナイフに結びつけていたんだよ」

しかもそのワイヤーはアリスの魔法で強化してもらっているから、ちょっとやそっとで切れない最強の細いワイヤーだ。

「アンタがまた逃げると思っていたからな。予想通りだったよ」

ましてや相手の手の内が分かっていれば対処なんて簡単だ。

「・・・・さて、ファドム。決着ケリを着けようじゃないか」

俺はそこで言葉を区切りSIG GSR構えながら歩み寄って行くと、ファドムは目に涙を浮かべてこう言い始めた。

「頼む! 私が悪かった!? 助けてくれぇ~~~!!?」

「・・・・お前は今何を言ってるのか分かってるのか?」

「分かっている!? だから頼む! もう人を殺すような事はしない!? 私は神に誓う!? 絶対にもうしないと!!?」

あ~あ、お漏らしまでして怒りを通り越して呆れを感じるよ・・・・これはね。

「・・・・ハァ~、分かったよ。俺はお前を殺さない」

その言葉を聞いたファドムは、安堵した顔をして俺を見てくる。

「ありがとう! これも神の導きのお陰だぁ~! オォ~、かブィッ!!?」

祈りを捧げているところに、顔を目掛けて蹴りをブチかまして意識ごとぶっ飛ばす。

「・・・・今朝の仕返しだ。と言っても気絶してるコイツには聞こえてないか」

それに気絶していた方が捕まえるの楽だしな。

「・・・・ダリット先生」

「・・・・あ!」

倒れているファドムを立ち尽くしながら見ていたダリット先生が、気がついたよう声を出した後にこっちを見てくる。

「ああ、何だ?」

「後の処理は頼みます」

「シュ、シュン! 一つだけ聞いて良いか?」

「ん? どうぞ」

「今の酷いと思わなっかたのか?」

ん? 何を野暮な事を言ってるんだ?

「・・・・ああ、酷かった」

「そ、そう思うだろう? お前は祈っているヤツを無慈悲に蹴り飛ばした。酷いと思わなかったのか?」

「え! そっちの話? なら俺は酷いとは思ってない。何故ならコイツは、チャンスを見てこの場から逃げようとしていたからな。先生は気が付かなかったのか?」

「ッ!?」

ダリット先生は、信じられない。と言う顔をした後に俺に話し掛けてくる。

「・・・・・・そうか。なら、お前が言う酷いとは何なんだ?」

「人を山ほど殺しておいて実力があれとはな・・・・もっと奇策きさくで強いと思っていたが俺の思い過ごしだった。勇敢に戦うのかと思っていたんだが、怒りに身を任せながら戦うし、最終的に命乞いをして助けて下さいなんて言う酷いヤツだった。コイツをペテン師と言っても良いな」

「そ、そうか」

「後、アイツは始める前に、私には神様の加護がある。とか何とか言ってたけど・・・・」

「けど、何だ?」

「俺が勝つって事は、アイツは神に見放されたか・・・・あるいは元々そんなのは始めっから無かった。のかの二つだな。まぁ、俺は後者だと思うけどな」

「・・・・そうか」

ダリット先生はそう言いながら、何処か納得した顔をしてる。

「それじゃあ俺は家に帰りますね。おやすみ、ダリット先生」

「ああ、気をつけて帰れよ」

ダリット先生に見送られながら家に向かい歩き始める。

「ダリット先生! 彼とのお話が済んだのなら、手伝って下さいよ!? ・・・・ダリット先生?」

ダリット先生は自分の生徒であるシュンと言う子の背中を見つめてながら、こう言い始めた。

「アイツは・・・・」

「アイツ? シュンって言う生徒の事ですか?」

「俺の手には負えねえよ・・・・何者なんだアイツは?」

ダリット先生の手を見ると、微かに震えていたのだった。
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