雨宮課長に甘えたい

コハラ

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嵐のあと

《9》

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「すみません。言ったら拓海さんに止められる気がして内緒にしました。どうしてもパーティーで上映したかったんです」
「阿久津部長が奈々ちゃんが暴走するから困ると言っていたが、その意味がわかった気がする」
「怒っていますか?」
「怒っていないよ。これからベッドで満足させてくれるなら、許可しよう」
「えっ、ベッドでって……拓海さん、酔ってるのに、するの?」

拓海さんが可笑しそうに笑ってから、眼鏡を外して「奈々ちゃんが欲しいんだ」と唇を重ねた。アルコールの匂いがするキスが何だか甘く感じる。

「拓海さんっ……」

拓海さんの柔らかな舌が私の中に入って来て、キスが深くなる。下腹部が熱くなって拓海さんが欲しくなる。

「よし、しよう」

いきなり拓海さんが立ちあがって私を抱き上げた。
お姫様だっこで寝室に連れて行かれてベッドに寝かされる。

あっという間に私たちは全裸になって身体を重ねた。
狭いシングルベッドが壊れそうな程、揺れる。拓海さんは私が気持ちよくなる場所ばかりを突いて来て、何度もいってしまう。

恥ずかしい程、声が大きくなる。
隣の人に聞こえそう。でも、抑えられない。

私の上で揺れる拓海さんが愛しい。
抱かれる度に心が近づいて好きになる。

同時に果てた後、拓海さんが愛しそうに私を抱きしめ、沢山キスをくれる。
キスする度に愛しているよと言われているみたいで、胸が震えて涙腺が緩む。

「奈々ちゃん、また泣いているの?」
私の涙を拓海さんが親指で拭ってくれる。

「だって感動しちゃって。拓海さん、いっぱい愛してくれるから」
「奈々ちゃんをいっぱい愛しているからね」

大きな手が愛しそうに私の頬を撫でてくれる。

「ねえ、奈々ちゃんは昔から北山監督と顔見知りだったの?」

静かな声で拓海さんが聞いた。

「いえ。初めてお会いしたのはごく最近です。望月先生に紹介してもらって」
「北山監督と望月先生が知り合いだったのは驚いたよ」
「望月先生は北山監督から『フラワームーンの願い』を聞いたそうです。息子が書いた脚本だから観たいって言ってたらしいですよ」

拓海さんが照れくさそうな顔をする。

「そうなのか」
「北山監督、拓海さんの事をずっと気にかけていたみたいですよ。拓海さんは大人になってから息子として監督とはお会いになっていたんですか?」
「いや。映画業界にいるから、パーティーとか、イベントですれ違う事はあったけど、直接話す事はしなかったよ。監督とは他人だと思うようにしていたから避けていたんだ。今思うと避ける事で監督の気が引きたかったのかも。ガキだよな。俺は」

ナイトランプに照らされた拓海さんの顔が悲しそうに見えて切なくなる。
拓海さんは北山監督から近づいてもらいたかったんだ。

今日の事が監督と歩み寄る、いい切っ掛けになっているといいけど。
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