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心中未遂?
《10》
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拓海さんと一緒に台所に立って調理した。
鯖の味噌煮を拓海さんは作ってくれるようだった。
まな板の上に鯖の切り身を置くと、包丁で拓海さんが鯖に切り込みを入れ始める。
「皮に井の字型に切り込みを入れる事で煮汁がしみやすくなって、皮が縮んで身が崩れるのを防げるんだよ」
包丁を動かしながら拓海さんが教えてくれた。
「そう言う効果があったんですか。なんとなくお母さんが鯖に切り込みを入れていたのは覚えているんですけど、意味があった事だとは思いませんでした」
クスッと拓海さんが笑う。
「奈々ちゃんは食べる専門だったんだな」
「はい。これから覚えようと思います。拓海さん、教えてくれますか?」
「もちろん。奈々ちゃんもやってみる?」
「はい」
まだ切り込みを入れていない鯖の切り身を任された。
拓海さんから包丁を受け取って慎重に切り込みを入れようとするけど、皮が弾力があって拓海さんみたくサッと切れない。
「奈々ちゃん、包丁はこうやって動かすといいよ」
拓海さんの手が包丁の柄を握る私の手を握ると、優しく誘導してくれる。
大きな手に包まれた瞬間、昨夜のベッドでの拓海さんを思い出した。
私に触れる拓海さんの手は丁寧でとても優しかった。
優しい声で、たくさん「好き」も言ってくれて……。
思い出しただけでドキドキしちゃう。
「奈々ちゃん、聞いてる?」
「えっ」
気づくと鯖の処理は終わっていて、鍋に調味料を入れる所だった。
「あっ、はい。お醤油とお砂糖ですね。ただいま」
「いや、調味料はもういれたよ。落し蓋ある?」
「落し蓋?」
ピンと来なくて首を傾げたら、拓海さんがぷっと笑う。
「アルミホイルでもいいよ」
「それならあります」
拓海さんがアルミホイルで作った即席の落し蓋を鯖の上に直接かけるように置いて煮込んだ。その状態を実家で見た事がある。これが落し蓋か。
「落し蓋を使うと煮汁が蒸発するのを防げるし、煮物に味が均等にしみるんだよ。煮物を作る時は落し蓋は必須だよ」
「なるほど。落し蓋は必須なんですね。覚えておきます」
首を上げて拓海さんを見ると眼鏡越しの目と合う。
拓君さんは何か言いたそうな表情。
「ところで奈々ちゃん、調味料入れている時、何考えていたの? ニヤニヤしていたけど」
表情に出ていたの! 恥ずかしい!
ベッドでの拓海さんを思い浮かべていたなんて、とても言えない。
「もしかしてエッチな事?」
「ち、違います」
「奈々ちゃん、ウソつく時耳が赤くなるんだよな」
思わず耳たぶに触れると、「やっぱりエッチな事を考えていたんだ」と拓海さんが笑う。
「拓海さんの意地悪! 引っかけたの!」
「うん。引っかけた」
拓海さんがぎゅって私を抱きしめる。
「僕の恋人はコロコロと表情が変わって本当に可愛い人だ」
額に拓海さんの唇が押し当てられて、胸がキュンとする。
私、物凄く幸せだ。
また顔がにやけそうになった。
鯖の味噌煮を拓海さんは作ってくれるようだった。
まな板の上に鯖の切り身を置くと、包丁で拓海さんが鯖に切り込みを入れ始める。
「皮に井の字型に切り込みを入れる事で煮汁がしみやすくなって、皮が縮んで身が崩れるのを防げるんだよ」
包丁を動かしながら拓海さんが教えてくれた。
「そう言う効果があったんですか。なんとなくお母さんが鯖に切り込みを入れていたのは覚えているんですけど、意味があった事だとは思いませんでした」
クスッと拓海さんが笑う。
「奈々ちゃんは食べる専門だったんだな」
「はい。これから覚えようと思います。拓海さん、教えてくれますか?」
「もちろん。奈々ちゃんもやってみる?」
「はい」
まだ切り込みを入れていない鯖の切り身を任された。
拓海さんから包丁を受け取って慎重に切り込みを入れようとするけど、皮が弾力があって拓海さんみたくサッと切れない。
「奈々ちゃん、包丁はこうやって動かすといいよ」
拓海さんの手が包丁の柄を握る私の手を握ると、優しく誘導してくれる。
大きな手に包まれた瞬間、昨夜のベッドでの拓海さんを思い出した。
私に触れる拓海さんの手は丁寧でとても優しかった。
優しい声で、たくさん「好き」も言ってくれて……。
思い出しただけでドキドキしちゃう。
「奈々ちゃん、聞いてる?」
「えっ」
気づくと鯖の処理は終わっていて、鍋に調味料を入れる所だった。
「あっ、はい。お醤油とお砂糖ですね。ただいま」
「いや、調味料はもういれたよ。落し蓋ある?」
「落し蓋?」
ピンと来なくて首を傾げたら、拓海さんがぷっと笑う。
「アルミホイルでもいいよ」
「それならあります」
拓海さんがアルミホイルで作った即席の落し蓋を鯖の上に直接かけるように置いて煮込んだ。その状態を実家で見た事がある。これが落し蓋か。
「落し蓋を使うと煮汁が蒸発するのを防げるし、煮物に味が均等にしみるんだよ。煮物を作る時は落し蓋は必須だよ」
「なるほど。落し蓋は必須なんですね。覚えておきます」
首を上げて拓海さんを見ると眼鏡越しの目と合う。
拓君さんは何か言いたそうな表情。
「ところで奈々ちゃん、調味料入れている時、何考えていたの? ニヤニヤしていたけど」
表情に出ていたの! 恥ずかしい!
ベッドでの拓海さんを思い浮かべていたなんて、とても言えない。
「もしかしてエッチな事?」
「ち、違います」
「奈々ちゃん、ウソつく時耳が赤くなるんだよな」
思わず耳たぶに触れると、「やっぱりエッチな事を考えていたんだ」と拓海さんが笑う。
「拓海さんの意地悪! 引っかけたの!」
「うん。引っかけた」
拓海さんがぎゅって私を抱きしめる。
「僕の恋人はコロコロと表情が変わって本当に可愛い人だ」
額に拓海さんの唇が押し当てられて、胸がキュンとする。
私、物凄く幸せだ。
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