雨宮課長に甘えたい

拓海さんの気持ち

《15》

「このホテル、当日宿泊でこんなにいい部屋が取れたんですか？」

夜景がよく見える30階のスィートルームは人気がある気がした。お風呂からも素敵な夜景を見下ろせたし、こういう部屋は簡単に取れないのではないだろうか。

拓海さんがよく気づいたねと言うようにニコッと微笑む。

「実は奈々ちゃんへのサプライズで、予約したのは一週間前だったんだ」
「え！　一週間前から！」
「うん」
「だから、私の予定を聞いたんですか？」

拓海さんに土曜日の予定を聞かれて、栗原さん家に行く事を話したんだった。

「まあね。奈々ちゃんを夕飯に誘ってその流れでこの部屋に連れて来ようと思っていたんだけど、思い描いたようにはいかなかった」

拓海さんが苦笑を浮かべる。

「昨日は栗原の家に泊まるって話になっていて、どうしようかと思ったよ。まあ、奈々ちゃんと過ごせるなら、栗原の所でも、ここでも良かったけどさ」

嬉しい。拓海さん、私の事、いろいろと考えてくれていたんだ。

「拓海さん、ありがとう」

ぎゅっと拓海さんに抱き着いた。

「とっても嬉しいです」
「本当？」
「うん」
「喜んでもらえて良かった」

拓海さんと視線が重なる。それを合図のように私からキスをすると、拓海さんが応えてくれる。

キスをする度に拓海さんに好きだと言われているみたいで、泣きそうになる。拓海さんのキスが好きなのは、気持ちを感じる事が出来るからなんだって、改めて気づいた。