雨宮課長に甘えたい

コハラ

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お料理教室

《10》

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拓海さんと二人きりでなんか気まずい。

「ピーマンの肉詰め途中だった」

半分に切って種を抜いたピーマンにひき肉で作ったタネを入れようとしたら、拓海さんに抱きしめられた。

ドキン!

鼓動が大きく脈打つ。

誰もいないとは言え、人様のお宅で抱きしめられているのは落ち着かない。

「あ、あの拓海さん……」

「奈々ちゃん、ごめん。今朝、佐伯さんが電話に出てびっくりしたよね。実は今朝、佐伯さんが交際中の男と会うから、カモフラージュの為に俺も呼ばれて彼女のマンションに行ってたんだ。それで男と二人だけで話したいから、席を外してくれと言われて席を立った時、スマホをリビングに置いて来てしまって。佐伯さんが俺のスマホに出たのは、俺が置きっぱなしにしたからで。奈々ちゃんが心配しているような事は何もないんだ。疑うなら佐伯さんのマネージャーの森さんに聞いて欲しい。彼女もその場にいたから」

拓海さんが一気にまくし立てる。
私の不安を全部、わかってくれていたんだ。

「奈々ちゃん、信じて欲しい」

拓海さんが真剣な表情でこっちを見る。

「それから昨夜は先に帰ってごめん。佐伯さんが具合悪くなってしまって、送って行く事になったんだ。タクシーの中でも佐伯さんの体調が悪くて。さすがに一人にしておく訳にはいかず、介抱していたら、奈々ちゃんに連絡するのが遅くなった」

拓海さんは優しい人……。
具合の悪くなった佐伯リカコをほっとけないのはわかる。

でも、妬ける。私って心狭いのかな。

佐伯リカコに優しくしないでって言いたいけど、呆れられそうだから言えない。

いいんだ。今、一緒に拓海さんといられるのなら。

「拓海さん大丈夫ですか? あんまり眠っていないんじゃないんですか?」
「奈々ちゃん、心配してくれるの?」
「当たり前じゃないですか」
「ありがとう。奈々ちゃんが心配してくれたから元気になったよ」

拓海さんがニコッと笑顔を浮かべた。

拓海さん大好き。
大好きな拓海さんに嫌われたくない。

「私こそ、いじけてスマホの電源切ってごめんなさい」
「焦ったよ。でも、栗原の所でお料理教室があるって話してくれていただろう? だから栗原に連絡できたんだ」

何気なく話した事だったのに、拓海さん、気に留めてくれていたんだ。

「私の話、覚えていてくれたんですか?」
「大事な人の話は忘れないよ」

大事な人……。
そんな風に思ってくれている事が嬉しい。
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