雨宮課長に甘えたい

コハラ

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お料理教室

《1》

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佐伯リカコと拓海さんがキスをしている夢を見た。

最悪な気分で目が覚める。
ベッドの上の時計を見ると、まだ朝の5時。

起きるには早い。今日は土曜日だし、もう少しゆっくり寝ていたい。

でも、夢が気になって寝付けなかった。

スマホを見ると拓海さんからメッセージが来ている。

拓海さんから連絡が来るのを待っていて、そのまま眠ってしまったんだ。

メッセージはふぐ料理のお店から帰宅しましたという私への返信で、拓海さんは深夜2時頃、帰宅したとあった。

着信もあった。
電話くれてたんだ。

なんで眠っちゃったんだろう。
拓海さんと話したかった。

9時ぐらいだったら拓海さん起きてるかな。

9時になるのを待って電話をした。

「はい」と電話に出た女性の声に頭の中が真っ白になる。

「もしもし」

黙ったままでいると、女性が言った。

「拓海に用事?」

拓海……。

この声は佐伯リカコ……。

さあーっと血の気が引く。

「勝手に出るな」

電話の奥で焦ったような拓海さんの声がする。

「もしもし」

拓海さんの声だ。

「奈々ちゃん?」

あ、ディスプレイに私の名前が出ているから。

「奈々ちゃん?」

さっきよりも心配そうな声で呼ばれた。

喉の奥が締め付けられ、心臓がドクドクと嫌な音を立てている。

まさか昨夜から佐伯リカコと一緒にいたの?
どうして一緒にいるの?

そう聞きたいけど、聞いてしまったら怒りを抑えられなくなりそうで、言葉を飲み込んだ。

「お休みの所すみません。特に用事はありません。失礼します」
「待って、奈々ちゃん」

拓海さんの声がしたけど、プツリと切った。
すぐにスマホが鳴った。
拓海さんの名前が表示されていたけど、出なかった。

今は話したくない。
きっと声を聞いたら怒って責めてしまう。

そんな感情的な所見せたくない。
嫉妬深くて嫌な私を見せて、拓海さんの気持ちが離れていくような事はしたくない。

とにかく今は心を落ち着けよう。
冷静になるまでは電話に出ない。

スマホの電源を切った。
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