雨宮課長に甘えたい

コハラ

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佐伯リカコの本心

《7》

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今すぐにでも拓海さんに抱きつきたい。

そんな想いを振り払うようにビールを飲んだ。グラスを空にすると今日子さんが注いでくれる。

望月先生に日本酒をつき合えと言われて、日本酒に切り替えた。

「中島さん、いいな。その表情。恋だな」

お銚子一本を空けると、望月先生がしみじみと言った。

「恋ですか?」

「あの男が好きで堪らないって表情をしているぞ。見ている方は切なくなる。『フラワームーンの願い』もそんな映画だったな。ヒロインを演じていた佐伯リカコの演技も素直な感じがして良かったしな。とにかく映画の中で好きで堪らないって顔をするんだよ。小説家としてつい想像してしまう。ヒロインが見ていたのは相手役ではなく、カメラを向ける相手。例えばカメラマンとか、監督とかに恋しているんじゃないかって」

カメラマン、監督……。
つまり制作スタッフに実際に恋をしていたと?

そう言えば、撮影現場に拓海さんも通ったと言っていた。

「脚本家とか」
「そうだな。脚本家も現場にいたかもな」
「あの脚本書いたの、雨宮課長なんですよ」
「えっ」と望月先生の左眉が上がる。

「雨宮拓海って、佐伯リカコの隣に座っている男か?」
「はい」
望月先生の問いかけに誇らしい気持ちで頷いた。
映画を褒めてくれた望月先生に拓海さんも才能がある人なんだって知って欲しかった。

「そうか」

望月先生が急に黙り込む。
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