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佐伯リカコの本心
《6》
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「そう言えば、中島さん、映画良かったよ」
ふぐのから揚げが出てくると望月先生が思い出したように言った。
「映画? 『今日子』の?」
「いや、『フラワームーンの願い』」
「先生、見たんですね」
「中島さんは見たの?」
「私は見てません」
「そうか。もったいないな。あの映画が世に出ないなんて」
「そんなにいい映画だったんですか?」
「うん。味わい深い映画だった。それに」と先生が声を潜める。
耳を寄せると先生が「整形していると言っていたが、佐伯リカコの印象はあまり変わってなかったぞ」と教えてくれた。
意外だった。
人目に触れたくないと思う程だったから、かなり違う印象なのかと思っていたけど。
「言わなきゃわからないレベルだな」
望月先生が佐伯リカコの方に視線を向ける。
佐伯リカコは拓海さんの方を見て幸せそうに笑っていた。
遠くから見る二人は美男美女のベストカップルに見える。
「雨宮君、どうやったらこんなに綺麗な人とつき合えるの?」
機嫌の良さそうな阿久津部長の声がした。
「結婚の予定は?」
誰かが冷やかすように二人に言った。
そんな光景を目にすると胸が締め付けられる。
ため息をつくと、望月先生に頭を撫でられた。
「な、何してるんですか?」
驚いて先生の方を見るとニッと口の端を上げた。
「あっちにも妬かせてやれ。あの上司、今、俺を睨んだぞ」
「えっ」
拓海さんを見ると、心配するような目でこっちを見ている。
隣の佐伯リカコが話しかけても拓海さんの視線は私の方を向いたまま……。
熱い拓海さんの視線を感じて胸が締め付けられる。
同じ空間にいるのに、離れている事が苦しい。
ふぐのから揚げが出てくると望月先生が思い出したように言った。
「映画? 『今日子』の?」
「いや、『フラワームーンの願い』」
「先生、見たんですね」
「中島さんは見たの?」
「私は見てません」
「そうか。もったいないな。あの映画が世に出ないなんて」
「そんなにいい映画だったんですか?」
「うん。味わい深い映画だった。それに」と先生が声を潜める。
耳を寄せると先生が「整形していると言っていたが、佐伯リカコの印象はあまり変わってなかったぞ」と教えてくれた。
意外だった。
人目に触れたくないと思う程だったから、かなり違う印象なのかと思っていたけど。
「言わなきゃわからないレベルだな」
望月先生が佐伯リカコの方に視線を向ける。
佐伯リカコは拓海さんの方を見て幸せそうに笑っていた。
遠くから見る二人は美男美女のベストカップルに見える。
「雨宮君、どうやったらこんなに綺麗な人とつき合えるの?」
機嫌の良さそうな阿久津部長の声がした。
「結婚の予定は?」
誰かが冷やかすように二人に言った。
そんな光景を目にすると胸が締め付けられる。
ため息をつくと、望月先生に頭を撫でられた。
「な、何してるんですか?」
驚いて先生の方を見るとニッと口の端を上げた。
「あっちにも妬かせてやれ。あの上司、今、俺を睨んだぞ」
「えっ」
拓海さんを見ると、心配するような目でこっちを見ている。
隣の佐伯リカコが話しかけても拓海さんの視線は私の方を向いたまま……。
熱い拓海さんの視線を感じて胸が締め付けられる。
同じ空間にいるのに、離れている事が苦しい。
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