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ピンチ
《2》
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救急受付をしてくれる総合病院が車で20分の所にあった。
雨宮課長が運転をし、私が後ろの席で藤原さんの意識がなくならないように話しかけ続けた。
藤原さんは青白い顔でずっと私に「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続ける。それはもう何かの祈りのように聞こえて胸が苦しくなる。
成瀬君にフィルムを渡した藤原さんを責める気にはならない。きっとやむを得ない事情があったのだろう。むしろ、こうして心労をかけてしまった事が申し訳ない。
「藤原さん、大丈夫ですから。心配しないで下さい。大丈夫ですから」
藤原さんの祈りのような謝罪に私も祈りのように同じ言葉を繰り返した。
総合病院に到着すると、雨宮課長が藤原さんを抱き上げて、救急処置室に連れて行く。電話で病状を伝えてあったので、藤原さんはすぐに医師に診てもらえた。
とりあえず一安心。
藤原さんが処置を受けている間、私たちは看護師さんに処置室前の長いすに案内してもらった。
看護師さんが立ち去ると、雨宮課長が心配そうにこっちを見る。
「藤原さんには俺がついているから。中島さんはすぐにフィルムを追いかけなさいと言いたいが、もう間に合わんな。彼の行く先に心当たりはある?」
昨夜の成瀬君との会話を思い出す。
どんな仕事をしているのか、聞いた気がする。確か大手の芸能事務所にいると言っていた。
それで人気女優佐伯リカコが所属している所だって自慢気に話していた。
佐伯リカコ……。
そういえば佐伯リカコは映画にいい思い出がないと言っていた。
もしかして、「フラワームーンの願い」が人目に触れるのが嫌なのでは……?
「中島さん、どうした?」
「あの、課長、成瀬君は佐伯リカコさんに頼まれて映画のフィルムを持って行ったかもしれません」
課長がハッとしたように息を飲む。
雨宮課長が運転をし、私が後ろの席で藤原さんの意識がなくならないように話しかけ続けた。
藤原さんは青白い顔でずっと私に「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続ける。それはもう何かの祈りのように聞こえて胸が苦しくなる。
成瀬君にフィルムを渡した藤原さんを責める気にはならない。きっとやむを得ない事情があったのだろう。むしろ、こうして心労をかけてしまった事が申し訳ない。
「藤原さん、大丈夫ですから。心配しないで下さい。大丈夫ですから」
藤原さんの祈りのような謝罪に私も祈りのように同じ言葉を繰り返した。
総合病院に到着すると、雨宮課長が藤原さんを抱き上げて、救急処置室に連れて行く。電話で病状を伝えてあったので、藤原さんはすぐに医師に診てもらえた。
とりあえず一安心。
藤原さんが処置を受けている間、私たちは看護師さんに処置室前の長いすに案内してもらった。
看護師さんが立ち去ると、雨宮課長が心配そうにこっちを見る。
「藤原さんには俺がついているから。中島さんはすぐにフィルムを追いかけなさいと言いたいが、もう間に合わんな。彼の行く先に心当たりはある?」
昨夜の成瀬君との会話を思い出す。
どんな仕事をしているのか、聞いた気がする。確か大手の芸能事務所にいると言っていた。
それで人気女優佐伯リカコが所属している所だって自慢気に話していた。
佐伯リカコ……。
そういえば佐伯リカコは映画にいい思い出がないと言っていた。
もしかして、「フラワームーンの願い」が人目に触れるのが嫌なのでは……?
「中島さん、どうした?」
「あの、課長、成瀬君は佐伯リカコさんに頼まれて映画のフィルムを持って行ったかもしれません」
課長がハッとしたように息を飲む。
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