雨宮課長に甘えたい

コハラ

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雨宮課長と温泉旅館

《6》

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「お待たせしました」

着替えの入ったお風呂セットを持って、雨宮課長の所に行った。

雨宮課長は黙ったままじっとこちらを見つめ、それから困ったような顔をする。

「中島さん、何か羽織った方が、ええーと、これ」

浴衣の所にあった紺色の羽織りを取ると、課長が私の肩にかけ、袖を通すとしっかりと前も結んでくれた。

「中島さん」
「はい」
「これから行動は一緒にしようか」
「えっ」
 首を傾げると、雨宮課長が気まずそうに人差し指で鼻の頭をかく。

「つまり、その、心配なんだ」
「心配?」

何が?

全然わからない。
浴衣に着がえてから雨宮課長の様子が少しおかしい。

どうしたのだろう?

大浴場は地下にあって、男湯、女湯、貸切風呂と案内が出ていた。

貸切風呂か。恋人だったら一緒に入るのかな。と思っていたら、腕を組んだ浴衣姿の若い男女が貸切風呂の方に迷う事なく進んでいった。

これからあのカップルは貸切風呂でイチャイチャするのか。
私も雨宮課長とイチャイチャしてみたい。

「中島さん、貸切風呂に行きたいの?」

じっと看板を見ていたら雨宮課長に言われた。

「フロントで手続きして来ようか。一組60分で予約制らしいから」

まさかの雨宮課長の言葉に驚いた。

「雨宮課長、一緒に入ってくれるんですか?」
「えっ?」

眼鏡の奥の瞳がこれ以上ない程、見開かれ、みるみるうちに課長の頬が赤く染まっていく。

「俺はその、中島さんが一人で入りたいのかと」

しまった。とんだ勘違い。

「すみません。今のは冗談です」
「だよな。あー、びっくりした」

ははと笑う雨宮課長は急に目を合わせてくれなくなった。

もしかして私に襲われると思った?
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