雨宮課長に甘えたい

コハラ

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雨宮課長と温泉旅館

《2》

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「中島さんは本当、美味しそうに食べるね」

レストハウスで名物のみそ団子を頬張っていたら雨宮課長がクスッと笑った。

「昨日、親子丼を食べた時も、この世にこれ以上の幸せはないんじゃないかって顔していた」

雨宮課長にそんな風に思われていたなんて恥ずかしい。

「そんな中島さんを見ているのが好きだな」

えっ!

今、課長、私の事好きって言ったの?

驚いて課長を見ていると、「ソフトクリームも買ってあげる」と言われた。

なんか子ども扱い?

「大自然を見ながら食べるソフトクリームうまいよ」

おうどんを頂いて、みそ団子も頂いて、お腹いっぱいになりかけていたけど、そう言われては食べたくなる。

雨宮課長は誘惑上手だ。出張から帰って来たら太っていそう。

本当に雨宮課長はソフトクリームを買ってくれた。外の展望デッキで鳴子峡の景色を眺めながら食べるソフトクリームは確かに美味しい。

だけど、スーツ姿の私たちが浮いている気がする。
私も今日はグレーのパンツスーツ。課長もグレーのスーツ。

スーツの色が偶然同じなのは、ちょっとだけ嬉しいけど、グレーの私たちの周りには色とりどりの私服姿の人たちがいる。

今日は土曜日だし、みんな遊びに来たんだろうな。

すぐ隣で同じように景色を眺めるカップルが少し羨ましい。
彼氏が彼女の肩を抱いて、彼女は甘えるように彼の肩に頭を乗せている。

あんな風に雨宮課長に甘えてみたいと思うけど、私と課長の間には30㎝ぐらいの距離がある。

恋人だったら0㎝なのかな。

思わずため息が出た。

「中島さん、ソフトクリームもう一本欲しいの?」

雨宮課長がからかうように言った。

「違います!」

もう、人を食いしん坊キャラみたいに……。

ちょっといじけて頬をぷっと膨らませたら、雨宮課長がクスクス笑った。会社にいる時よりも、課長が親し気な感じがする。

なんか一緒にいるだけで楽しい。

仕事だけど、ちょっとデートみたい。
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