雨宮課長に甘えたい

コハラ

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雨宮課長と仙台出張

《1》

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「中島さん、仙台は日帰り出張のつもりだったが、台風の影響で新幹線が動かないようだ。今夜はどこかに泊まらないと」

雨宮課長が困ったようにこちらに視線を向ける。
なんですかその嬉しい展開。

「何! ビジネスホテルの部屋がツインルームの一つしか空いていないだと!」

ホテルのフロントで雨宮課長がさらに困ったような顔をする。

それってつまり、課長と同室って事? 
なんて都合が良過ぎる展開なの。

「課長、あの、私大丈夫です。雨宮課長が嫌じゃなければ」

ぽっと赤面しながら答えると雨宮課長が「嫌な訳ないだろ。だけど俺も男だ。どうなっても知らんぞ」と言った。

きゃー。課長。襲ってくれるの!

「はい。私もどうなってもいいです」
「中島さん……」
「雨宮課長……」

課長と見つめ合い、そして唇が重なって……。

「中島さん! 中島さん! 仙台に着いたよ」

その声で現実に戻された。

「やっと起きた」

スーツ姿の雨宮課長が苦笑いを浮かべる。
ここは新幹線の車内のよう。

窓の外に仙台駅が見える。

『フラワームーンの願い』の映画フィルムを求めて、雨宮課長と仙台に来たんだった。それで今朝、東京駅から6:32発の新幹線に乗って……。

大宮駅を過ぎた辺りから記憶がない。
もしかして私、仙台に着くまで寝ていたの?

じゃあ、台風で帰りの新幹線がなくなって、雨宮課長とビジネスホテルに泊まる事になったのは夢!

なんて夢を見たの……。

きっと願望がそのまま夢に出たんだ。

雨宮課長の隣でそんな夢を見て恥ずかしい。

しかも、せっかく雨宮課長と二人きりで新幹線だったのに、ずっと寝ていたなんて、もったいない。こんな機会、滅多にないのに。

昨夜あまり眠れなかったせいだ。雨宮課長と日帰りとはいえ出張だと思ったら、緊張して眠れなかったから。
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