雨宮課長に甘えたい

コハラ

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トラブル

《7》

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会社に戻って来たのは夜9時過ぎ。
総務課のオフィスも、庶務係のデスクも誰もいない。

誰もいないオフィスを見てむなしくなる。

私は一体何をやっているんだろう。
もう宣伝部の人間じゃないのに、頭を下げて回って……。

奥様は久保田がいなくなったあとに、私に久保田に「からかわれた」と言っただけで、それ以上の事はどんなに聞いても教えてくれなかった。菓子折りも受け取ってもらえなかった。

久保田にめちゃくちゃ腹が立った。公開間近の宣伝の一番大事な時期に何をやってくれるのか。
石川町の駅で待っていた久保田ののん気な顔を見たら怒りが爆発して、「久保田なんか札幌に飛ばされてしまえばいい!」と叫んでしまった。久保田は真っ青になり、貝になったように何も喋らなくなった。だから久保田が奥様に何をしたのか未だにわからない。
 
はあっと息をついた時、デスクの上の付箋が目に入る。

付箋は4枚貼られていた。メモの中身は「中島さん、お疲れ様。雨宮課長から話は聞いた。庶務係の心配はいらないからな。 風見」「お疲れ。中島ちゃんの仕事はこっちでやるから、今は宣伝の仕事がんばってね。 栗原」「中島さん、お疲れ様です。庶務係のお仕事はいつでも教えるので心配しないで下さいね♡ まりえ」「中島さん、お疲れ様です 後藤」というみんなからのメッセージだった。

メモを読んでいたらうるっと来た。
異動して来たばかりの私をこんなに気遣ってくれるとは思わなかった。みんなの優しさが胸に沁みる。

宣伝部にいた頃、お疲れ様なんてメモ、もらった事なかった。それに書いた事も。

今思うと、チーフの自分一人だけが頑張っている気でいた。自分以外の人間は全然頑張っていないように見えた。だから、なんでそんな簡単な事も出来ないのって、よく言っていた。

私も阿久津みたいに宣伝部のみんなに圧力を与える存在だったかもしれない。久保田にも追い詰める事言ってた。

今日も追い詰めてしまったかも。私を頼ってくれたのに。ああ、自分が嫌になる。とりあえず久保田に謝ろう。
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