雨宮課長に甘えたい

コハラ

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庶務係

《3》

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防災訓練は日比谷公園で行われた。周辺の会社との合同での訓練だった。参加者は1000人になると聞いて、思っていたよりも大規模で驚いた。しかもマスコミも取材に来る程で、意外と注目を浴びているイベントだった。

知らなかったのが公園にある防災機能の数々。

まさか普段、何気なく座っていたベンチが、座面を外して、かまどとして使える機能があるとは。

それにマンホールトイレ。
マンホールの上にトイレを設置して使うと聞いて驚いた。

それから公園には大きな貯水槽もあって水道が止まってしまった時に使うらしい。他にもソーラー発電の機能があったり、防災用品を収納したベンチがあったりで、驚く事ばかりだった。

あとは実際に消火器を使った消火訓練や、心臓マッサージなどを学ぶ救命訓練も受けられて、とても有意義な時間を過ごせた。

防災訓練なんてと、少しバカにしていたけど、いざとなった時にどうしたらいいかという事を知る事は大事な事だと思った。

それに庶務係のみんなとずっと行動していたので、自然と馴染めたのも良かった。

昨年は雨宮課長も参加していたと聞いて、少しだけ心臓が敏感になった。

オフィスに戻ったら雨宮課長に防災訓練の話をしてみようか。

朝は異動の挨拶に行けなかったし。

雨宮課長、いるかな。



日比谷公園での半日がかりの防災訓練のあとは、今年の防災訓練についての報告書を任された。社内報に載ると聞いて気合いが入る。

パソコンに向かっていると、「風見係長、雨宮課長、いつ戻ってくるんですか?」というまりえちゃんの緩い声が響いた。

耳が敏感になる。私も知りたい。

「専務に同行して出張って聞いたから、出社するのは明日だな」

 雨宮課長、今日出張だったんだ。どうりで見かけないはず。

「そうですか。雨宮課長がいないとつまんないですね。はあ、総務の癒しなのに」
「なんだ癒しって?」

風見係長がつっこむ。

「風見係長知らないんですか? 雨宮課長って女性社員の癒しになっているんですよ。イケメンですから。イケメンはみんなの宝です」

まりえちゃんの言い方が可笑しい。
ぷっ。思わず笑ってしまう。

「あっ、中島ちゃんがツボった」
栗原さんに言われた。
みんなの視線が集まり、可笑しさがさらに込み上がる。気づけば目に涙を浮かべて笑っていた。
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