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『ごはん屋―ニッコリー』という看板が出たお店に香織ちゃんと入ると、おばさんがニコニコ顔で僕をカウンター席に座らせてくれた。
「久しぶりね、直君」
「あの」
僕はおばさんを見た。
「何?」
「『心ごはん』いくらですか?僕、五百円しかなくて」
心ごはんを食べてみたかった。
「五百円で大丈夫よ」
おばさんが笑う。
「じゃあ、『心ごはん』下さい」
「はい」とおばさんが料理を始めた。
土鍋にお米を入れて、火にかけるのを見ながら、心が元気になるご飯って何だろうと考えた。
ハンバーグかな、カレーかな、ステーキかな。それとも、お寿司かな。
「はい、お待たせ」
目の前に土鍋と、お味噌汁と、沢庵が置かれた。
「これだけ?」
僕が想像したおかずは何も入ってない。
「食べてみない内から失礼ね」
隣の香織ちゃんがちょっと怒った顔をする。
「直君、炊き立てのご飯食べてみて」
おばさんが土鍋の蓋をとってくれた。
「わあ!」
ピカピカに白く輝くごはん粒が美味しそうに並んでいた。
「いただきます」
土鍋のごはんを一口食べた。
「うん!美味しい!」
もっちもっちのご飯で噛めば噛む程甘くて優しい味がした。
「これ、すごくおいしい!」
僕は夢中でご飯とお味噌汁と沢庵を全部食べた。
「美味しかった」
本当に心から思った時、僕の胸の辺りから、何かが飛び出した。
そいつは小指ぐらいの大きさの茶碗に乗ったご飯で手足も付いてて、カウンターの上で踊っていた。
「何だこいつ?」
「心ごはんだよ」
香織ちゃんが教えてくれる。
「心ごはん?」
「直君の心が幸せになったから出て来たのよ」
おばさんが優しい笑顔を浮かべた。
「僕、幸せなの?」
そんな訳ない。僕は誰からも必要とされない人間なんだから。
「あっ、心ごはんが……」
元気に踊っていた心ごはんが急に苦しそうに倒れ込んだ。
「久しぶりね、直君」
「あの」
僕はおばさんを見た。
「何?」
「『心ごはん』いくらですか?僕、五百円しかなくて」
心ごはんを食べてみたかった。
「五百円で大丈夫よ」
おばさんが笑う。
「じゃあ、『心ごはん』下さい」
「はい」とおばさんが料理を始めた。
土鍋にお米を入れて、火にかけるのを見ながら、心が元気になるご飯って何だろうと考えた。
ハンバーグかな、カレーかな、ステーキかな。それとも、お寿司かな。
「はい、お待たせ」
目の前に土鍋と、お味噌汁と、沢庵が置かれた。
「これだけ?」
僕が想像したおかずは何も入ってない。
「食べてみない内から失礼ね」
隣の香織ちゃんがちょっと怒った顔をする。
「直君、炊き立てのご飯食べてみて」
おばさんが土鍋の蓋をとってくれた。
「わあ!」
ピカピカに白く輝くごはん粒が美味しそうに並んでいた。
「いただきます」
土鍋のごはんを一口食べた。
「うん!美味しい!」
もっちもっちのご飯で噛めば噛む程甘くて優しい味がした。
「これ、すごくおいしい!」
僕は夢中でご飯とお味噌汁と沢庵を全部食べた。
「美味しかった」
本当に心から思った時、僕の胸の辺りから、何かが飛び出した。
そいつは小指ぐらいの大きさの茶碗に乗ったご飯で手足も付いてて、カウンターの上で踊っていた。
「何だこいつ?」
「心ごはんだよ」
香織ちゃんが教えてくれる。
「心ごはん?」
「直君の心が幸せになったから出て来たのよ」
おばさんが優しい笑顔を浮かべた。
「僕、幸せなの?」
そんな訳ない。僕は誰からも必要とされない人間なんだから。
「あっ、心ごはんが……」
元気に踊っていた心ごはんが急に苦しそうに倒れ込んだ。
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