推しの速水さん

7話 速水さんとセクシー美女？

《8》

大学でいくちゃんと会ったのは3限のゼミだった。いくちゃんと同じゼミを取っていて、今日はいくちゃんの発表の日。

私たちが取ったゼミはアメリカ政治のゼミで、今、アメリカでは行き過ぎたポリコレが問題になっている。ポリコレとはポリティカル・コレクトネスの略で、日本語に訳すと「政治的に正しい」とか、「政治的妥当性」という意味になる。

例えば、アメリカではクリスマスの日にメリークリスマスと言わなくなった。これはポリコレの影響で、キリスト教徒の祝祭を非キリスト教徒に強要する事になるかららしい。それで今は「ハッピーホリデー」と言うらしい。

言われてみれば、クリスマスってキリスト教徒のお祭りだったんだよねと気づくけど、メリークリスマスで子どもの頃から馴染んで来たからちょっと寂しい気もする。

ポリコレとは、人種差別や、男女差別を防ごうという考え方からなっていて、弱者の権利を守ろうという所から来ているらしい。それだけ聞くと素晴らしい考え方だな。みんなが平等な世界っていいよねって思うけど、このゼミを取ったら、それはちょっと違うんじゃないのかなと思う所も出て来た。

今日のいくちゃんの発表はトランスジェンダー女性が女子のスポーツ競技に出て優勝した話だった。

そのトランス女性は10代から選手として活躍していて、30代で性自認をトランス女性だと自認した。つまり、それまでは男性として競技に出ていた。そのトランス女性は性適合手術は受けていたらしいけど、過去に男性として鍛えて来た骨格や筋力は維持されるからスポーツパフォーマンスは女性より有利になるのは当たり前で、ちょっとこれは女性選手にとっては不平等な気がする。

ポリコレ的にはトランス女性にも女性の権利を与えるべきだと言うけれど、じゃあ、普通の女性の権利は守られなくてもいいの？　男女で能力の差が大きく出るスポーツで男性の骨格と筋力を持つトランス女性が優勝する事は不平等ではないの？

いくちゃんの発表を聞きながらそう思ってしまった。
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参考文献「ポリコレの正体」福田ますみ著