推しの速水さん

コハラ

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7話 速水さんとセクシー美女?

《6》

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坂本さんとは駅で別れた。
電車に揺られながら、ぼんやりとまた速水さんの事を考える。

――美樹ちゃんにとって俺ってさ、生身の男じゃない? ただ見ていたいだけの存在?

速水さんにそう聞かれて即答できなかった。前まではただ見ていたいだけの人だった。でも、速水さんと集学館で会ってから少しずつ変わっている。

速水さんの彼女になりたいとか、考えちゃいけないと思うのに、考えてしまう。多くを望めば身の破滅を招くのに。

はあ、と小さくため息が出た。

私の速水さんへの推し活を全部知った上で友達として受け入れてくれた速水さんは大人だと思った。そんな大人の速水さんと釣り合うんだろうか?

車窓に映る自分の姿が中学生みたい。色気の微塵もない。色気ってどうやったら出てくるんだろう。

せめて妄想の中のセクシー美女ぐらい私に魅力があったらなと真剣に悩んでしまう。

そう言えば、いくちゃん、最近、なんか色っぽくなったな。今日、大学でいくちゃんと話してて思ったんだ。

前と比べて女性らしくなったというか。でも、いくちゃんはメイクとか服とか元々お洒落だし。何が変わったんだろう?

電車に一時間近く揺られて自宅のある最寄駅で降りた。駅から自宅まで歩きながら、思わず公園の前で足が止まる。

この間、速水さんに降ろしてもらった場所。ここに速水さんが来たんだと思ったら胸の内側が熱くなる。

速水さんに会いたいな。今、電話したら迷惑かな?

またため息が出た。なんか最近、ため息をつく事が増えたな。

明日、会えるんだ。我慢しよう。

家に向かって歩こうとした時、公園の中にカップルがいた事に気づいた。気になったのは男女のどちらも見覚えのある服装だったから。

背の高い男性はお兄ちゃんがよく着ているコートを着ている。女性の方はいくちゃんが今日着ていた赤いコート姿で……えっ! あれって、お兄ちゃんといくちゃん!?

びっくりして二人を見ていると、シルエットが重なる。遠くだし、夜だからハッキリとは見えないけど、2人はキスをしているみたいで……。

えー! えー! お兄ちゃんといくちゃんがキス!!

頭の中がカアッと熱くなり、家に向かって走り出した。見てはいけない物を見た気がする。

びっくりし過ぎて心臓がバクバクする。

見間違いだよね? でも、あんなに顔を近くに寄せる? お兄ちゃん、いくちゃんを抱きしめていた。いくちゃんもお兄ちゃんの背中に腕を回してて、恋人みたいで……。

まさか、お兄ちゃんといくちゃん、付き合っているの?
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