推しの速水さん

7話 速水さんとセクシー美女？

《3》

講義が終わると一目散に教室を出て、スマホを見た。速水さんから留守電は残っていない。メッセージもない。着信が残っているだけ。

電話があったのは15分前。今かけ直せば出てくれるかな？

思い切って速水さんの名前をタップする。

コール音が何度か鳴った後、「もしもし」という少し慌てたような速水さんの声がした。

やった！　速水さんだ！

「あ、あの、美樹です。先ほどはお電話ありがとうございました。講義中だったので、出られなくてすみませんでした」

絶対に言おうと思っていた言葉を噛みそうになりながらも、何とか口にした。

ふぅ。言えて良かった。

「いえ。こちらこそすみませんでした。用件だけ伝えさせて頂きます。明日の件ですが、午後6時はどうでしょうか？」

午後6時って……図書館の時間だ！

「はい。全然大丈夫です！」
「良かった。では、明日」

そう言って速水さんが電話を切ろうとした時、「まだ？」という女性の甘えるような声がした。

びっくりしていると、さらにスマホ越しに「早くしようよ」という女性の声が続いた。聞いてはいけない物を聞いた気がして、速水さんが何かを言う前に電話をブチッと切った。

心臓がバクバクする。

今の女性は誰？　早くしようよって何を？