推しの速水さん

コハラ

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6話 速水さんの気持ち

《20》

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部屋に入るといくちゃんが私に向かって頭を下げた。

「美樹、ごめん! 本当にごめん! この間、私、美樹に酷い事を言ったよね。もう私の事、嫌いになったよね。私ってハッキリと言っちゃう所があるから、それで人を傷つける事もあって……」

小学生の頃から一緒にいるからよく知っている。でも、いくちゃんはいつだって間違った事は言っていない。相手の事を想っての言葉だ。いくちゃんの指摘に泣き出す子もいるけど、それでいくちゃんが先生に叱られたのを何度も見て来たけど、私は堂々と自分の意見を言えるいくちゃんを尊敬している。

「美樹からのメッセージ見るの怖かったの。美樹も私から離れていく気がして」

それで既読がつかなかったんだ。

「いくちゃんは一生の友達だよ。離れるわけないじゃん」
「美樹、ありがとう」

頭を上げたいくちゃんの目がうるうるしている。私もそれを見て、うるうるする。

「あ、美樹、泣いてる!」

いくちゃんが私を指差す。

「いくちゃんだって泣いてるじゃん」

私もいくちゃんを指差した。
2人であははと笑って涙を拭った。

「これで仲直りだね」
いくちゃんに言われて「うん」って頷いた。

いくちゃんと仲直り出来て本当に良かった。

「で、速水さんとはどうなったの?」

涙を拭ったいくちゃんがいつもの好奇心旺盛な表情を浮かべる。変わり身の早さが可笑しい。

「今日、会ったんでしょ?」
「うん。会ったよ。全部話した」
「全部って?」
「書店で速水さんに助けてもらった事とか、図書館でずっと速水さんを見ていた事」

いくちゃんが目を丸くする。

「それで、どうなったの?」
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