推しの速水さん

コハラ

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6話 速水さんの気持ち

《13》

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ところで、タクヤ君はどこに行ったのだろう?

タクヤ君がいない事に気づいて、キョロキョロしていると、「美樹ちゃん、どうしたの?」と、聞かれて心臓が口から飛び出そうになった。

……み、美樹ちゃん!

速水さんに初めて呼ばれた。
あまりの衝撃にわーっと声を上げて部屋中を走り回りたくなる。推しの速水さんにちゃん付けで呼んで頂けるなんて! 今日は美樹ちゃん記念日に制定しなければ!

頭の中で国会が浮かび、内閣総理大臣が「今日は美樹ちゃん記念日に制定する」と宣言する映像まで浮かぶ。

「おーい、美樹ちゃん、聞いてる?」

私の顔の前でひらひらと速水さんが手を振る。

ハッ! また現実を離れて自分の世界に入っていた!

「は、はい。います! 今、妄想の世界から戻って来ました!」

速水さんがぶっと笑い出した。

「美樹ちゃん、何の妄想?」

また美樹ちゃんて呼ばれた。
胸がキュンキュンする。

「えーと内閣総理大臣が記念日を宣言する所です」

素直に答えると、お腹を抱えて速水さんが笑う。こんなに笑う速水さんを初めて見る。速水さんって実はよく笑う人なの?

「美樹ちゃんのそういう所、好きだよ」

一頻り笑うと速水さんが言った。

す、す、す、好き――!

さらなる破壊兵器が心臓めがけて飛んでくる。それから速水さんが私の頭をよしよしって撫でた。

嬉しい! 今度は嬉し涙が浮かぶ。

で、タクヤ君は? そう誰かに突っ込まれた気がしたので、速水さんに聞くと、ゆりさんに呼ばれて出て行ったらしい。

つまり今、速水さんと2人きりだ。なんかドキドキする。
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