98 / 150
5話 速水さんとバーベーキュー。
《16》
しおりを挟む
「す、すみません」
砕け散った破片を拾い集める。
「卯月ちゃん、手、怪我するわよ。これ使って」
ゆりさんから箒と塵取りを渡された。
「すみません」
箒を持つ指先が震える。
ゆりさんの質問に胸が壊れそうな程、ドキドキしている。
「図書館の話、びっくりした?」
「えっ」
「びっくりするよね。私も今日、速水くんから紹介されてびっくりしたのよ。卯月ちゃん、私の顔を見た時、図書館の人だと思わなかった?」
近くに来たゆりさんに見つめられ、後ろ目たくて視線を逸らした。
「は、はい」
「そう。卯月ちゃんは図書館を利用する方だから気づかなかったのね。でも、すごい偶然ね。卯月ちゃんのお家、うちの図書館の近くなの?」
「いえ。図書館の近くにバイト先の会社があって、それで、時間がある時に行くようになって」
さすがに速水さん目当てで図書館に通っている事は言えない。
「そうなんだ。何か他に目的があるのかと思った」
フフッとゆりさんが笑う。
まさか、ゆりさん、私が速水さん目的で通っている事を知っているの?
「卯月ちゃん、いい事教えてあげようか」
「いい事ですか?」
「速水くんはね、私の事が好きなのよ」
えっ……。
心臓がドクンドクンと嫌な音を立てる。
やっぱり速水さんはゆりさんを好きだったんだ……。だから図書館に通っていたんだ。
ゆりさんの口から聞きたくなかった。
「卯月ちゃん、顔が真っ青。そうよね、速水くんの事を好きだからショックよね」
ドキッとした。
私の気持ち、ゆりさんに気づかれてる。
「あ、あの……」
「速水君が好きなんでしょ? だから図書館でこっそり速水君を付け回していたんでしょ?」
笑っていたゆりさんの目が険しくなる。
……どうしよう。バレてる。
「あなたのしている事は犯罪よ」
は、犯罪!
「もう二度と速水くんに近づかないでちょうだい!」
ドンッと威嚇するようにゆりさんがダイニングテーブルを叩いた。
「速水くんには適当に言っておいてあげるから今すぐ帰りなさい」
「あの……」
言い返さなきゃ。今日は速水さんに図書館の事も打ち明けるつもりでいるんだって。
でも、喉が締め付けられて声が出ない。
ああ、泣きそう。
ゆりさんの前で泣きたくない。
「帰りなさい」
持っていた箒を放り投げてリビングから庭に飛び出た。ゆりさんに涙を見せるぐらいなら逃げた方がまし。
犯罪だなんて酷い……。
確かに私がした事は速水さんのプライバシーを侵害する事だったけど、なんでゆりさんにそこまで言われなきゃいけないの?
砕け散った破片を拾い集める。
「卯月ちゃん、手、怪我するわよ。これ使って」
ゆりさんから箒と塵取りを渡された。
「すみません」
箒を持つ指先が震える。
ゆりさんの質問に胸が壊れそうな程、ドキドキしている。
「図書館の話、びっくりした?」
「えっ」
「びっくりするよね。私も今日、速水くんから紹介されてびっくりしたのよ。卯月ちゃん、私の顔を見た時、図書館の人だと思わなかった?」
近くに来たゆりさんに見つめられ、後ろ目たくて視線を逸らした。
「は、はい」
「そう。卯月ちゃんは図書館を利用する方だから気づかなかったのね。でも、すごい偶然ね。卯月ちゃんのお家、うちの図書館の近くなの?」
「いえ。図書館の近くにバイト先の会社があって、それで、時間がある時に行くようになって」
さすがに速水さん目当てで図書館に通っている事は言えない。
「そうなんだ。何か他に目的があるのかと思った」
フフッとゆりさんが笑う。
まさか、ゆりさん、私が速水さん目的で通っている事を知っているの?
「卯月ちゃん、いい事教えてあげようか」
「いい事ですか?」
「速水くんはね、私の事が好きなのよ」
えっ……。
心臓がドクンドクンと嫌な音を立てる。
やっぱり速水さんはゆりさんを好きだったんだ……。だから図書館に通っていたんだ。
ゆりさんの口から聞きたくなかった。
「卯月ちゃん、顔が真っ青。そうよね、速水くんの事を好きだからショックよね」
ドキッとした。
私の気持ち、ゆりさんに気づかれてる。
「あ、あの……」
「速水君が好きなんでしょ? だから図書館でこっそり速水君を付け回していたんでしょ?」
笑っていたゆりさんの目が険しくなる。
……どうしよう。バレてる。
「あなたのしている事は犯罪よ」
は、犯罪!
「もう二度と速水くんに近づかないでちょうだい!」
ドンッと威嚇するようにゆりさんがダイニングテーブルを叩いた。
「速水くんには適当に言っておいてあげるから今すぐ帰りなさい」
「あの……」
言い返さなきゃ。今日は速水さんに図書館の事も打ち明けるつもりでいるんだって。
でも、喉が締め付けられて声が出ない。
ああ、泣きそう。
ゆりさんの前で泣きたくない。
「帰りなさい」
持っていた箒を放り投げてリビングから庭に飛び出た。ゆりさんに涙を見せるぐらいなら逃げた方がまし。
犯罪だなんて酷い……。
確かに私がした事は速水さんのプライバシーを侵害する事だったけど、なんでゆりさんにそこまで言われなきゃいけないの?
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる