推しの速水さん

コハラ

文字の大きさ
上 下
92 / 150
5話 速水さんとバーベーキュー。

《10》

しおりを挟む
車が高台にある二階建ての白いお家の前に停車した。見るからに広そうな佇まいで、セレブが感ある。作家さんって凄いな。

「ここですか?」
「はい」

速水さんが運転席から降りる。
私も助手席のドアを開けて外に出た。

波の音が聞こえ、潮の香りを感じる。

1キロも離れていない場所に白い浜辺と海が見えた。

わっ、贅沢。こんなに近かったら海に行き放題だ。

それに炭の香りと混じって感じる美味しそうなお肉の焼ける匂い!

これはバーベキューの匂いだ!

「行きましょう」

速水さんの後に続いて、立派な門を通る。
速水さんはお家の中には入らないで、そのまま裏庭の方へと進んだ。

芝生が敷き詰められた広い裏庭に人が沢山いる。十人以上はいそう。

「速水くん、おそーい!」

紺色のエプロン姿の女性が速水さんの方に駆けて来た。女性の顔を見た瞬間、驚きで心臓が止まりそうになる。

ゆ、ゆりさん!

なんでゆりさんがいるの!?

「ゆりさん、連れて来たよ。こちらが卯月先生」
「あの、卯月という名前でネットで小説書いてます!」

ペコッと頭を下げる。

沈黙が流れて、顔を上げると、ゆりさんと目が合った。

ゆりさん、私に気づいた?

ゆりさんがニコッと微笑む。

「初めてまして。後輩の速水くんがいつもお世話になってます」

後輩の速水くん?
え? どういう事?

「卯月先生、こちらが別荘のあるじの平山ゆりさん。僕の高校の先輩で『月村蜜柑つきむらみかん』というペンネームで小説を書いている作家さんです」

えっ、月村蜜柑先生!
100万部のベストセラーとなった『恋涙』シリーズを始め、数々の名作を世に送り出したあの作家さん!

私にとっては雲の上のような存在。

ゆりさんがそんな凄い人だったなんて……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

映画を見に行く悪い女 〜束縛を乗り越えて私は推しに会いにいく〜

りりぃこ
ライト文芸
美香の夫は、束縛が激しい。男と話すことはもちろん、芸能人、二次元にすら嫉妬する。 それでも美香は夫を愛し、この生活に満足していた。 そんなある日、昔好きだった漫画が実写映画化すると知った。 それも、昔好きだったアイドルが出演するという。 どうにかして見たい!!でも決して夫は許可してくれないだろう。 美香は、自分を慕ってくれる会社の後輩の雪華、知り合ったばかりの腐女子の鈴川と共に、映画を見に行くだけの、一大プロジェクトを決心する……!!

そのバンギャ、2度目の推し活を満喫する

碧井ウタ
ライト文芸
40代のおひとり様女性である優花には、青春を捧げた推しがいた。 2001年に解散した、Blue RoseというV系バンドのボーカル、璃桜だ。 そんな彼女は転落事故で死んだはずだったのだが、目を覚ますとなぜか20歳の春に戻っていた。  1998年? Blue Roseは、解散どころかデビュー前だ。 それならば……「追うしかないだろう!」 バンギャ魂に火がついた優花は、過去の後悔もやり直しつつ、2度目の推し活に手を伸ばす。  スマホが無い時代?……な、なんとかなる!  ご当地グルメ……もぐもぐ。  行けなかったライブ……行くしかないでしょ!  これは、過去に戻ったバンギャが、もう一度、自分の推しに命を燃やす物語。 <V系=ヴィジュアル系=派手な髪や化粧や衣装など、ヴィジュアルでも音楽の世界観を表現するバンド> <バンギャ=V系バンドが好きな女性(ギャ、バンギャルともいう) ※男性はギャ男(ぎゃお)> ※R15は念のため設定

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

【ガチ恋プリンセス】これがVtuberのおしごと~後輩はガチで陰キャでコミュ障。。。『ましのん』コンビでトップVtuberを目指します!

夕姫
ライト文芸
Vtuber事務所『Fmすたーらいぶ』の1期生として活動する、清楚担当Vtuber『姫宮ましろ』。そんな彼女にはある秘密がある。それは中の人が男ということ……。 そんな『姫宮ましろ』の中の人こと、主人公の神崎颯太は『Fmすたーらいぶ』のマネージャーである姉の神崎桃を助けるためにVtuberとして活動していた。 同じ事務所のライバーとはほとんど絡まない、連絡も必要最低限。そんな生活を2年続けていたある日。事務所の不手際で半年前にデビューした3期生のVtuber『双葉かのん』こと鈴町彩芽に正体が知られて…… この物語は正体を隠しながら『姫宮ましろ』として活動する主人公とガチで陰キャでコミュ障な後輩ちゃんのVtuberお仕事ラブコメディ ※2人の恋愛模様は中学生並みにゆっくりです。温かく見守ってください ※配信パートは在籍ライバーが織り成す感動あり、涙あり、笑いありw箱推しリスナーの気分で読んでください AIイラストで作ったFA(ファンアート) ⬇️ https://www.alphapolis.co.jp/novel/187178688/738771100 も不定期更新中。こちらも応援よろしくです

声を失くした女性〜素敵cafeでアルバイト始めました〜

MIroku
ライト文芸
 とある街中にある一軒のカフェ。  入り口には  “水面<みなも>カフェへようこそ。のんびりとした空間と、時間をお楽しみ下さい”    と、店長の手書きであろう、若干丸目を帯びていたが、どこか温かい雰囲気を持つ文字で書いてあった。  その文字を見て、「フフフ」と笑う、優しい笑顔の女性。その後ろには無言で俯く少女が1人、スカートを握りしめて立っていた。  「そんなに緊張しないで。大丈夫、あなたなら大丈夫だから」  そう言って女性は少女の肩を優しく撫でた。少女は無言のまま、頭をコクコクと下げ、握りめていた手を開く。  女性はその様子を笑顔で見ていた。  ドアをそっと開ける。  “チリンチリン”  ドアベルが鳴る。  女性と少女は手を繋ぎながら、中へと入って行った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  失声症の少女と、その少女を保護した精神科医。その教え子であるカフェの店長、周りの人達を巻き込んで繰り広げられるサクセスストーリー。

さくらの花はおわりとはじまりをつげる花

かぜかおる
ライト文芸
年が明けてしばらくしてから学校に行かなくなった私 春休みが終わっても学校に通わない私は祖父母の家に向かうバスに乗っていた。 窓から見える景色の中に気になるものを見つけた私はとっさにバスを降りてその場所に向かった。 その場所で出会ったのは一人の女の子 その子と過ごす時間は・・・ 第3回ライト文芸大賞エントリーしています。 もしよろしければ投票お願いいたします。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

処理中です...