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5話 速水さんとバーベーキュー。
《7》
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「お腹すきましたね」
お店を出ると速水さんが言った。
もう十二時半だ。
「すみません。余計な事に付き合わせてしまって」
「いいんですよ。バーベキューが待ってますよ。行きましょうか」
「はい」
コクンと頷くと、速水さんが手を差し出した。
「あの?」
「卯月先生、迷子になりそうだから」
速水さんがまた私の手を握ってくれた。
うそ……。
さすがにこれは夢?
キュッと頬をつねると痛みがあった。
夢じゃない。
速水さんの大きな手がまた私の左手をつないでいる!
なんか速水さんとの距離が前回よりも近くなっているような……。
夢見心地で駅前の通りを進むと、速水さんがコインパーキングに入って行く。そこには美しい青に包まれたセダンが停まっている。
スポーティーさと優雅さを感じさせるカッコいい車だと思って見ていたら、速水さんがガチャと助手席側のドアを開けたから驚いた。
この美しい車は速水さんの車……!
「卯月先生、どうぞ」
「は、はい」
恐縮しながら乗車させて頂くと車内はお洒落な感じの甘い匂いがする。
お兄ちゃんの車もセダンだけど、雰囲気が全然違う。速水さんの車はときめきが沢山詰まっている!
生きていて良かった。
神様、ありがとう。
静かな感動に胸を震わせていると、「シートベルト閉めて下さい」と、
運転席に座りエンジンをかけた速水さんに言われた。
「はい。すぐに」
ショルダーベルトを掴んで、腰元のバックルにはめ込もうとするけど、緊張で指先が震えて上手く出来ない。
ガチャガチャと音を立てれば立てる程、焦る。
なんで、こんな時に限ってハマってくれないの……。
この、この。
バックルと格闘していると、運転席から速水さんの手が伸びてシートベルトを締めてくれた。
一瞬、抱きしめられたみたいな恰好になり、心臓が止まりそうになった。
「これでOK」
とどめを刺すようにニコッと速水さんが微笑んだ。
うわー!
速水さん、素敵すぎる!
一生速水さんについて行きます!
思わずそう口走りそうになり、慌てて言葉を飲み込んだ。
変な事を言って、速水さんに引かれたら困る。
少し落ち着こう。
速水さんに気づかれないように深呼吸をし、前を見ると、車はゆっくりとコインパーキングを出た。
速水さんとのドライブの始まりだと思ったらまたドキドキしてくる。
お店を出ると速水さんが言った。
もう十二時半だ。
「すみません。余計な事に付き合わせてしまって」
「いいんですよ。バーベキューが待ってますよ。行きましょうか」
「はい」
コクンと頷くと、速水さんが手を差し出した。
「あの?」
「卯月先生、迷子になりそうだから」
速水さんがまた私の手を握ってくれた。
うそ……。
さすがにこれは夢?
キュッと頬をつねると痛みがあった。
夢じゃない。
速水さんの大きな手がまた私の左手をつないでいる!
なんか速水さんとの距離が前回よりも近くなっているような……。
夢見心地で駅前の通りを進むと、速水さんがコインパーキングに入って行く。そこには美しい青に包まれたセダンが停まっている。
スポーティーさと優雅さを感じさせるカッコいい車だと思って見ていたら、速水さんがガチャと助手席側のドアを開けたから驚いた。
この美しい車は速水さんの車……!
「卯月先生、どうぞ」
「は、はい」
恐縮しながら乗車させて頂くと車内はお洒落な感じの甘い匂いがする。
お兄ちゃんの車もセダンだけど、雰囲気が全然違う。速水さんの車はときめきが沢山詰まっている!
生きていて良かった。
神様、ありがとう。
静かな感動に胸を震わせていると、「シートベルト閉めて下さい」と、
運転席に座りエンジンをかけた速水さんに言われた。
「はい。すぐに」
ショルダーベルトを掴んで、腰元のバックルにはめ込もうとするけど、緊張で指先が震えて上手く出来ない。
ガチャガチャと音を立てれば立てる程、焦る。
なんで、こんな時に限ってハマってくれないの……。
この、この。
バックルと格闘していると、運転席から速水さんの手が伸びてシートベルトを締めてくれた。
一瞬、抱きしめられたみたいな恰好になり、心臓が止まりそうになった。
「これでOK」
とどめを刺すようにニコッと速水さんが微笑んだ。
うわー!
速水さん、素敵すぎる!
一生速水さんについて行きます!
思わずそう口走りそうになり、慌てて言葉を飲み込んだ。
変な事を言って、速水さんに引かれたら困る。
少し落ち着こう。
速水さんに気づかれないように深呼吸をし、前を見ると、車はゆっくりとコインパーキングを出た。
速水さんとのドライブの始まりだと思ったらまたドキドキしてくる。
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