推しの速水さん

コハラ

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5話 速水さんとバーベーキュー。

《3》

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電車に揺られて二時間。目的の駅で降りる直前、海が見えてテンションが上がる。今日は天気もよくて海が綺麗。

電車が速度を落としてホームに停車する。

速水さんにお会いするのは一ヶ月と十日ぶり。

電車を降りて、改札に向かいながら、会える嬉しさと緊張感で鳩尾の辺りが締め付けられる。

やっぱ、トイレ行ってこよう。

女子トイレに駆け込んで気持ちを落ち着かせようとするけど、ドキドキが止まらない。顔だって熱い。

鏡に映る自分を見ながらピンクのアイシャドウが濃い気がする。普段あまりメイクしないけど、今日はいくちゃんに教えてもらった方法でメイクもした。

ちゃんと出来たつもりだったけど、なんか気に入らない。

あーもう、やり直そう。

ポーチを出して、眼鏡を外してアイメイクを直す。

「超カッコイイ人立ってたよね」

女子トイレに入って来た二人組の女性が興奮気味に話していたのが聞こえ、メイクを直す手が止まる。

「うん。背が高くて顔が小さくて、イケメンだったよね」

女性たちの話を聞いて、胸が高鳴った。

きっと速水さんだ!

もう速水さん改札前で待っているんだ。これ以上、お待たせしてはいけない。

慌ててメイクをし、ポーチを仕舞って女子トイレを出た。

改札を出て、キョロキョロと速水さんを探す。

あれ? いない?

速水さん、どこ?

速水さんから連絡が来てるかもしれないと思い、スマホを取り出そうとした手が滑る。

スマホが勢いよくタイル張りの床に落ちた。

うわっ。今のは不味かったかも。

恐る恐る、スマホを拾いディスプレイを見るとヒビが入っている。

しかも画面は真っ黒なままで操作できない。

え、え、え、え。

壊れた? 速水さんと連絡取れない?

もう泣きそう。

スマホが壊れる事がこんなに心細い事になるなんて。

ドジな自分が嫌になる。
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