推しの速水さん

コハラ

文字の大きさ
上 下
83 / 150
5話 速水さんとバーベーキュー。

《1》

しおりを挟む
速水さんからメールをもらった事をいくちゃんに伝えたかったけど、いくちゃんは大学に来なかった。

いくちゃんが休んだ分の講義のノートをコピーして、帰りにいくちゃんの所に届けに行った。

何度インターホンを押してもいくちゃんは出ない。
メッセージを送っても既読がつかない。

激しく言い合ったのが二日前。あれからいくちゃんは私のメッセージを見てくれない。

やっぱり避けられているのかな。

このままいくちゃんと離れちゃうのかな。

もう友達ではいられないのかな……。

胸が詰まって、目がうるうるしてくる。

いくちゃんの言う通り。私が意気地なしだったのがいけなかった。
その事に気づけたのはいくちゃんがハッキリと言ってくれたから。

いくちゃん、ごめんね。

私の為に言ってくれたのに、私、酷い事言ったよね。

『いくちゃん、明日速水さんに会ってくるよ。私、今度は逃げないからね』

そうメッセージを送って、いくちゃんのマンションを後にした。

速水さんと約束した日の朝。目覚めると一番にスマホをチェックした。速水さんから、今日はよろしくお願いいたしますとメールが届いていた。すぐによろしくお願いいたしますと返信する。

推しの速水さんとメッセージのやり取りが出来る事にいつもだったらこの上ない幸せを感じるけど、今朝は胸が重たい。

いくちゃんに送ったメッセージは既読もついていなかった。ここまでいくちゃんに無視されたのは初めてで、どうしたらいいかわからない。

せっかく速水さんに会える日なのに、元気が出ない。

「美樹、ぶっさいくな顔だな」

ダイニングでヨーグルトを食べていたら、よく見かける毛玉がついたスエット姿のお兄ちゃんが二階からおりて来た。

むっ。朝から余計な事を言わないで欲しい。
ただでさえ緊張したり、胸が苦しかったりして眠れなかったんだから。

「あのさ」と言って、お兄ちゃんがテーブルの傍で立ち止まる。

「いくちゃんとは仲直り出来たか?」

ポリポリと後頭部をかきながらお兄ちゃんがこっちを見る。

いくちゃんの名前を聞いて鳩尾の辺りが締め付けられる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》

小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です ◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ ◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます! ◆クレジット表記は任意です ※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください 【ご利用にあたっての注意事項】  ⭕️OK ・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用 ※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可 ✖️禁止事項 ・二次配布 ・自作発言 ・大幅なセリフ改変 ・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...