推しの速水さん

4話 速水さんとデート？

《21》

自分の部屋のベッドに横なり、目を閉じるけど目が冴えて眠れない。

いくちゃんに言われて、速水さんと関わりを持ちたいと思っていた事に気づいた。推しって言葉で自分の気持ちを誤魔化して、傷つかない所から速水さんを見ていた。

1年前、図書館に入って行く速水さんを見つけた時、私はどうするべきだったんだろう？　声を掛けるべきだったんだろうか。

そう言えば、最初は声を掛けようとしていたんだ。
図書館で速水さんを見かけて、足を一歩踏みだすけど、速水さんの反応が怖くて、踏み出した足を戻していた。

ゆりさんと話す速水さんが楽しそうに見えた事も自信をなくした。私が声をかけた時、速水さんは絶対にそんな親し気な表情はしてくれないって思った。むしろ迷惑そうな顔をされると思った。

中学の時、サッカー部の佐藤くんが好きだった。練習を頑張っている佐藤くんを見ていると元気になれた。だから、こっそり佐藤くんを見ていた。そんなある日、佐藤くんからどうして俺を見ているのって聞かれて、何も答えられなかった。それで佐藤君にキモイって言われて……。

速水さんにもそんな風に言われるかもしれないって思って……。

あの時から私は全然変わっていない。傷つく事を恐れていつも逃げてばかり。

もうこんな私嫌だ。

自分を変えたい。

速水さんに会おう。メールの返信を待っていた事を伝えて、それから全部打ち明けよう。

速水さんに気持ち悪いって思われてもいい。それで速水さんの想いに区切りをつけて、速水さんから卒業しよう。

そう思った時、速水さんからのメールがスマホに届いた。