推しの速水さん

4話 速水さんとデート？

《13》

チュンチュンとどこかで雀が鳴く声がする。カーテンを開けるともう朝陽が出ている。

今日もいい天気だ。

いや、そうじゃない！

速水さんはどこに行ったのじゃ！

昨夜は確かに速水さんと一緒だった。

昨夜の記憶がおぼろげに蘇ってくる。

速水さんと公園で会って、試写会に行って、その後、イタリアンレストランでワインを飲んで……。

うわっ、その後の事が全く思い出せない。
昨夜、私、どうやって帰って来たの？　まさか、また速水さんに送って頂いたのでは……。

鳩尾の辺りが冷ッとして、バタバタと階段を駆け下りた。
キッチンに行くと、味噌汁の匂いがして、エプロン姿のお母さんが朝食の用意をしていた。

「お母さん！」
「美樹、おはよう。昨夜は酷かったわね」

振り向いたお母さんが私を見て苦笑いをする。

「もしかして、また速水さんにタクシーで送って頂いたとか？」
「タクシーで帰って来たけど、一人だったわよ」

一人でタクシーに乗ったの？
ダメだ。全然、覚えていない。

「タクシー代、建て替えといたから。ちゃんと払ってね」
「うん。ありがとう。あっ、痛っ……」

ズキッと頭が痛くなり、思わず頭を抱える。

「二日酔いね。ほら、頭痛薬」

お母さんが頭痛薬を出してくれた。
水で錠剤を二つ飲み込む。

「おはよう」

スーツ姿のお兄ちゃんもキッチンに入って来て、冷蔵庫から牛乳パックを取り出す。