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3話 推しの為にできる事
《17》
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週一で図書館に通っている私をゆりさんが認識していたらどうしよう。
図書館の人の印象に残らないように本を借りる時は無人の自動貸出機を利用しているけど、返却する時は人がいるカウンターを使う事になっている。ゆりさんがいる時にカウンターを使った事はないけど、泣いてる所を一度だけ声をかけられた。
私を覚えているかも……。
どうしよう。私の推し活が速水さんにバレる?
頭の中が真っ白になる。
どうしようどうしようどうしよう……。
とりあえず木の影に隠れ、2人の会話が聞こえる所まで移動し、耳を傾けた。
「ゆりさん、どうしてここに?」
「集学館に行ったら速水くんはここだって言われたの。来ちゃった」
ほっ。
ゆりさんは速水さんと約束していた訳ではないのか。
「ねえ、速水くん。公園の中を散歩しない?」
「これから人と会う約束があるから無理だよ」
「少しでいいからさ。速水くんの欲しい物、持って来たんだけどな」
速水さんが腕時計を見る。
私との待ち合わせ時間を気にしてくれているんだ。
「10分、いや、5分なら」
「決まり。行こう」
ゆりさんが速水さんの左腕に右腕を絡めて歩き出す。すごく慣れている感じ。私の知らない所で速水さんとゆりさんはいつも腕を組んで歩いているのかな。
やっぱり二人は不倫の関係……。
はあ。
ため息が零れた。
初めてゆりさんを憎く感じる。
この間はご主人らしき男の人とキスしていたくせに、速水さんと親し気に腕を組むなんて許せない。
速水さんにキスの事を言ってしまおうか……。
ダメだ。
ゆりさんと速水さんの関係を知っている理由を聞かれる。
こっそり図書館で2人を見ていたとは言えない。
見ているだけの私は、なんて無力なんだろう。
情けなくなってくる。
図書館の人の印象に残らないように本を借りる時は無人の自動貸出機を利用しているけど、返却する時は人がいるカウンターを使う事になっている。ゆりさんがいる時にカウンターを使った事はないけど、泣いてる所を一度だけ声をかけられた。
私を覚えているかも……。
どうしよう。私の推し活が速水さんにバレる?
頭の中が真っ白になる。
どうしようどうしようどうしよう……。
とりあえず木の影に隠れ、2人の会話が聞こえる所まで移動し、耳を傾けた。
「ゆりさん、どうしてここに?」
「集学館に行ったら速水くんはここだって言われたの。来ちゃった」
ほっ。
ゆりさんは速水さんと約束していた訳ではないのか。
「ねえ、速水くん。公園の中を散歩しない?」
「これから人と会う約束があるから無理だよ」
「少しでいいからさ。速水くんの欲しい物、持って来たんだけどな」
速水さんが腕時計を見る。
私との待ち合わせ時間を気にしてくれているんだ。
「10分、いや、5分なら」
「決まり。行こう」
ゆりさんが速水さんの左腕に右腕を絡めて歩き出す。すごく慣れている感じ。私の知らない所で速水さんとゆりさんはいつも腕を組んで歩いているのかな。
やっぱり二人は不倫の関係……。
はあ。
ため息が零れた。
初めてゆりさんを憎く感じる。
この間はご主人らしき男の人とキスしていたくせに、速水さんと親し気に腕を組むなんて許せない。
速水さんにキスの事を言ってしまおうか……。
ダメだ。
ゆりさんと速水さんの関係を知っている理由を聞かれる。
こっそり図書館で2人を見ていたとは言えない。
見ているだけの私は、なんて無力なんだろう。
情けなくなってくる。
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