推しの速水さん

コハラ

文字の大きさ
上 下
57 / 150
3話 推しの為にできる事

《17》

しおりを挟む
週一で図書館に通っている私をゆりさんが認識していたらどうしよう。

図書館の人の印象に残らないように本を借りる時は無人の自動貸出機を利用しているけど、返却する時は人がいるカウンターを使う事になっている。ゆりさんがいる時にカウンターを使った事はないけど、泣いてる所を一度だけ声をかけられた。

私を覚えているかも……。

どうしよう。私の推し活が速水さんにバレる?

頭の中が真っ白になる。

どうしようどうしようどうしよう……。

とりあえず木の影に隠れ、2人の会話が聞こえる所まで移動し、耳を傾けた。

「ゆりさん、どうしてここに?」
「集学館に行ったら速水くんはここだって言われたの。来ちゃった」

ほっ。

ゆりさんは速水さんと約束していた訳ではないのか。

「ねえ、速水くん。公園の中を散歩しない?」
「これから人と会う約束があるから無理だよ」
「少しでいいからさ。速水くんの欲しい物、持って来たんだけどな」

速水さんが腕時計を見る。
私との待ち合わせ時間を気にしてくれているんだ。

「10分、いや、5分なら」
「決まり。行こう」

ゆりさんが速水さんの左腕に右腕を絡めて歩き出す。すごく慣れている感じ。私の知らない所で速水さんとゆりさんはいつも腕を組んで歩いているのかな。

やっぱり二人は不倫の関係……。

はあ。

ため息が零れた。

初めてゆりさんを憎く感じる。

この間はご主人らしき男の人とキスしていたくせに、速水さんと親し気に腕を組むなんて許せない。

速水さんにキスの事を言ってしまおうか……。

ダメだ。

ゆりさんと速水さんの関係を知っている理由を聞かれる。
こっそり図書館で2人を見ていたとは言えない。

見ているだけの私は、なんて無力なんだろう。
情けなくなってくる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さくらの花はおわりとはじまりをつげる花

かぜかおる
ライト文芸
年が明けてしばらくしてから学校に行かなくなった私 春休みが終わっても学校に通わない私は祖父母の家に向かうバスに乗っていた。 窓から見える景色の中に気になるものを見つけた私はとっさにバスを降りてその場所に向かった。 その場所で出会ったのは一人の女の子 その子と過ごす時間は・・・ 第3回ライト文芸大賞エントリーしています。 もしよろしければ投票お願いいたします。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

意味がわかるとえろい話

山本みんみ
ホラー
意味が分かれば下ネタに感じるかもしれない話です(意味深)

声を失くした女性〜素敵cafeでアルバイト始めました〜

MIroku
ライト文芸
 とある街中にある一軒のカフェ。  入り口には  “水面<みなも>カフェへようこそ。のんびりとした空間と、時間をお楽しみ下さい”    と、店長の手書きであろう、若干丸目を帯びていたが、どこか温かい雰囲気を持つ文字で書いてあった。  その文字を見て、「フフフ」と笑う、優しい笑顔の女性。その後ろには無言で俯く少女が1人、スカートを握りしめて立っていた。  「そんなに緊張しないで。大丈夫、あなたなら大丈夫だから」  そう言って女性は少女の肩を優しく撫でた。少女は無言のまま、頭をコクコクと下げ、握りめていた手を開く。  女性はその様子を笑顔で見ていた。  ドアをそっと開ける。  “チリンチリン”  ドアベルが鳴る。  女性と少女は手を繋ぎながら、中へと入って行った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  失声症の少女と、その少女を保護した精神科医。その教え子であるカフェの店長、周りの人達を巻き込んで繰り広げられるサクセスストーリー。

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

蛍地獄奇譚

玉楼二千佳
ライト文芸
地獄の門番が何者かに襲われ、妖怪達が人間界に解き放たれた。閻魔大王は、我が次男蛍を人間界に下界させ、蛍は三吉をお供に調査を開始する。蛍は絢詩野学園の生徒として、潜伏する。そこで、人間の少女なずなと出逢う。 蛍となずな。決して出逢うことのなかった二人が出逢った時、運命の歯車は動き始める…。 *表紙のイラストは鯛飯好様から頂きました。 著作権は鯛飯好様にあります。無断転載厳禁

Feel emotion ー恋なんていらない、はずなのに。年下イケメン教え子の甘い誘いにとろけて溺れる…【完結】 

remo
ライト文芸
「もう。あきらめて俺に落ちてこい」 大学付属機関で助手として働く深森ゆの。29歳。 訳あって、恋愛を遠ざけていたけれど、超絶優しい准教授 榊 創太郎に心惹かれ、教生時代の教え子 一ノ瀬 黎に振り回されて、…この春。何かが始まりそうな予感。 ⁑恋に臆病なアラサー女子×年下イケメン男子×大人エリート紳士⁂ 【完結】ありがとうございました‼

そのバンギャ、2度目の推し活を満喫する

碧井ウタ
ライト文芸
40代のおひとり様女性である優花には、青春を捧げた推しがいた。 2001年に解散した、Blue RoseというV系バンドのボーカル、璃桜だ。 そんな彼女は転落事故で死んだはずだったのだが、目を覚ますとなぜか20歳の春に戻っていた。  1998年? Blue Roseは、解散どころかデビュー前だ。 それならば……「追うしかないだろう!」 バンギャ魂に火がついた優花は、過去の後悔もやり直しつつ、2度目の推し活に手を伸ばす。  スマホが無い時代?……な、なんとかなる!  ご当地グルメ……もぐもぐ。  行けなかったライブ……行くしかないでしょ!  これは、過去に戻ったバンギャが、もう一度、自分の推しに命を燃やす物語。 <V系=ヴィジュアル系=派手な髪や化粧や衣装など、ヴィジュアルでも音楽の世界観を表現するバンド> <バンギャ=V系バンドが好きな女性(ギャ、バンギャルともいう) ※男性はギャ男(ぎゃお)> ※R15は念のため設定

処理中です...