推しの速水さん

コハラ

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2話 速水さんからのオファー

《24》

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速水さんは改札を出て、西口から外に出た。私が通っているバイト先のオフィスビルと、図書館があるのは東口だった。西口は住宅街が広がる。

もしかして、西口に速水さんのご自宅があるの?
このまま尾行したら速水さんのお家を知る事ができるの?

でも、家まで尾行するのはさすがにプライバシーの侵害。だけど、速水さんがどんなお家に住んでいるのか知りたい。

湧きあがってくる好奇心を抑える事ができず、速水さんの尾行を続ける。速水さんは一度も振り返る事はせず、駅前の通りを歩いていく。何だか急いでいるよう。

賑やかな駅前の通りを抜け、住宅街に入った。新しそうなマンションの前まで来ると、速水さんが足を止める。

私はギリギリ速水さんの後ろ姿が見える位置の電柱に隠れた。

速水さんがスマホを取り出し、操作しているよう。すぐにマンションから女性が出て来た。ロングカーディガンにジーパン姿の髪の長い女性が速水さんに向かって走ってくる。

「速水くん!」

女性の声を聞いてハッとした。
この声は図書館で働くゆりさんだ。

「ゆりさん、もう大丈夫だから」

速水さんの前まで来たゆりさんがいきなり速水さんに抱き着く。速水さんの背中に回るゆりさんの両腕が見える。速水さんもゆりさんに応えるように腕を回したように見える。

青白い外灯の下で抱き合う男女の姿は恋人のよう。

まさか、速水さんとゆりさんは恋人なの?

でも、ゆりさんは結婚していて……。
ゆりさんのご主人の事は時々、速水さんとの話題に出ていたのを聞いた事がある。

じゃあ、2人は不倫関係? 

いや、絶対に違う!

誠実な速水さんは人妻と付き合ったりはしない。そう思うけど、目の前の2人はまだ抱き合ったまま……。

これ以上、見ているのが辛くて、その場から逃げ出した。
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